え?詐欺師?世界がデスゲームになったけど適性ジョブがどう見ても不遇職な件について

灰灰灰(カイケ・ハイ)※旧ザキ、ユウ

一章 世界は誰が為に廻る?

第1話 この世界はあーるぴーじーとやらになりました

 1

 世の中ほんと糞なんだよなぁ。


 それが今をときめく高校生である僕、北原ムンクが出した結論だ。変な名前だと思うじゃん? 

 僕もそう思う。つけた親には小一時間は説教したいぐらい。ノリでつけたとか言われた日には殺意が沸いたね。頭沸いてんのかよ。


 それはさておき、本日は晴天なり本日は晴天なり。

 お日柄も大変よく、こんなアナウンスが流れても疑問にも思うこともない。

 学校の屋上から見える景色は、そんな清廉潔白というか染みひとつない心を示すような見事な青空なわけである。


「この糞陰キャが! 死ね! 死ね! 死んじまえ!! てめーみてえな根暗に生きてる価値なんかねーんだよ!! 一生負け組がぁ!!」



 まぁそんな有難ーい青空だろうが、絶賛不良崩れに囲まれてフルボッコにされているんですけどね。

 そんな僕からしたらバカヤローって感じなんですけど。もちろんこの思考中も絶賛殴られている。


「ぎゃはははは!! こいつ吐きやがった! きったねー!」


 不良達は僕の無様な姿が大変お気に召したのか、大袈裟に腹を抱えて嗤う。

 苦しい痛い苦しい、くそが。

 くっそ、こいつら何が楽しくてこんなこと毎日やるんだよ。

 あぁ、糞。ほんと、世の中糞。


 不良崩れの憂さ晴らしにサンドバッグになる日々。しかも、あれだよ? 

 周りは見ぬふりで傍観しかしないし、一部はニヤニヤして見世物のごとく楽しんでるし。


 教師に至っては知らぬ存ぜぬを貫いているという糞さ。マスコミにリークされちまえ。

 で、記者会見ではまるで自分に非はないと訴えんばかりの大粒の涙を流すんでしょ。お前らに泣く権利とかないからね?


 ていうか、身体中痣だらけでクッソ痛いんですけど。これ高校生だけど労災的なのおりる?

 はい、おりないですね。 ほんと、バカヤロー。


 何が楽しくてそんな晴れ晴れとしてんだ。いっそ隕石でも降っちまえ。

 そんなことを陰々に思っていたら、隕石の変わりに電波な放送が流れた。


 『あーテステス。聞こえていますかーきーこーえーてーいーまーすーかー? よし! 二回も確認したし聞こえてますね、そうですね!』


 耳の調子が少し変だな。なんというか耳というよりは頭になり響くように感じる不思議な声だ。10代後半だろうか。声的には年齢が近めに思える。


 『皆さんには今からあーるぴーじーをしてもらいます。選択権は特にないです。頑張ってください』


「はあ? なんだこれ」

「おい、こんな巫山戯た放送垂れ流してる馬鹿は何処のどいつだよ」

「はぁ? RPG? ゲームかよ」


 少なくとも不良崩れ達にも聞こえているようなので、僕の頭がイカレたわけじゃなさそうだ。良かった……いじめられ過ぎてとうとうおかしくなったと思った。

 その後、この頭の可笑しな放送は流れることは無かった。


 流れることはなかったが––––


 轟音とともに蜥蜴とかげの超絶強化版というか進化版というか、ドラゴンとしか形容する他ない巨大な生物が空を横切った。生まれてこのかたあんなのは見たことがない。


 目の前に広がる景色は現実のものとは思えず、言葉にしようものならなんとも陳腐になってしまう。少なくとも僕が知る限り現代社会においてこんな現象はありえないし、どこぞの生物学者が歴史的な発見をしてノーベル賞を受賞したようなことは聞いていない。



 ま、まじかよ……ははは……。


 それは何の配慮もなく、もう乱暴に常識を叩き壊されるようなものだ。どうやろうとも否定のしようもない。

 まるで先程の電波放送の真偽を裏づけするような出来事で。


「ホントに世界がRPGになった……?」


 そう言わざる得なかった。




 ◆




 世界は変わる。

 電波な放送と共に。

 そして、きっと始まりの鐘が鳴り響くいたのだ。

 それが何の終わりで、何の始まりなのかは分からない。

 それでもそんなことを柄にもなく思った。

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