第6話血臭に塗れた覚醒と懊悩の選択~あるいは寝起きのあれこれについて~

―――…よー…しっか…縛れ…!


んー…うるさい…。


―――吊るし…じゃぁ…切る……ぞ。


なんだよぅ、まだ眠いのに…・。


耳に否応なく入り込んで来る声に、ゆるやかに意識が浮上していきます。

背中に湿った落ち葉の感触。

後頭部には心なしか骨ばった、でも十分に柔らかくて心地いい感触。

腹部には暖かな重みと少しばかりのひにゃりした感触。

それから…


―――ぶしゃぁっ…どぼどぼっ…


ぷぅ~~ん。


辺りに漂う血の臭い。



………血生臭ぁあぁっ!





ぐっいぶにんぐ、ボクです。


死闘の果てに気を失い、名誉の気絶から濃厚な血臭で目覚めさせられた、ボクです。


ボクが気絶してからの流れですが、まずライカ嬢が大人を呼びに行ってくれた模様。

で、やってきた大人ーずは気絶しているボクを確認。

大きなけがもなく、命に別状はなし、と判断。


ボクを放置して牙猪を吊るして血抜きを始めやがったと。←イマココ。


うん、まぁお肉は血抜きが遅れると臭くなるし、低温焼けを防ぐためにとっとと冷やさないといけませんよね。

それはわかる。


うん、お肉大事。


でもいくらほぼ無傷とは言え、気絶してる8歳児放置って?

そこんとこどうよ、3軒隣のマイケルおじさん(さんじゅっさい、嫁さん募集中)。


「いやー、だってリド坊だし?」


どう言う意味だコラ、場合によっては訴訟も辞さない所存ですが?

ほほぅ、日ごろの行いだとぅ?


…今回に限り訴訟は取り下げようと思いましたまる。

でも寝てる幼児の傍で血抜きはすんな?


あ、ライカ嬢、ひざまくらアザっす。

妹、ボクの腹枕は寝心地良かったかー?


でも涎をボクの服で拭くのは止めてくれる…?


腹肉に顔を埋めてぐりぐりしてくる妹をなんとか引っぺがし、上体を起こします。


「や、やるじゃん…、ち、ちょっとはかいしょーがあるみたいだし、ご、合格あげてもイイってゆぅか…ごにょごにょ。」


ライカ嬢、お褒めにあずかり光栄…でもなんの試験やってたの?


「にぃに、かいちょー!」


甲斐性?いや快勝?…怪鳥?…快調?


くそぅ、選択肢が多すぎて突っ込みにくい…!


妹、恐ろしい子…!!


「しっかしまぁ、良く一人でこんなヤツ、仕留めたもんだなぁ…!牙猪っつったらDランクの魔物だべ?」


あー、らしいですねー。


因みに魔物のランクですが、F~SSまであって冒険者のランクと連動してます。

Dランクの魔物はDランクの冒険者がギリギリソロ討伐できるレベルってことらしいです。

安全確保して狩れるのは自分のより1~2ランク下くらいが目安ってことですかね。


余談ですが一般的な町人がFランク、村人がEランク相当って話です。

村人強いって?

野生動物やら低級魔物やらのさばってる所で生活してる労働系マッチョ共舐めたらアカン。


「なんか骨がグズグズになっとるけど、何やったらこんなことになるんだべか…。」


そこは企業秘密ってことで一つ。


…栄養学のえの字もない世界の人に説明とか……めんどい(ボソっ)。


とりあえず落ち着いたところでお肉の分け前についての激しい交渉。


―――妹、強かった。子を守る母のようにお肉の前に立ちはだかってた。何あの執着…!


半身を確保したところでようやく帰路につきます。

あ、お肉はロース辺りの良い所を一部だけ切り取ってもらって、残りは処置が終わったら後日届けてもらうことにしました。


ふっふーん、何つくろっかなー♪

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