第38話
ここ数日早く帰っていたがそれだとやっぱり柚がついてきてしまってまた柚が絡まれるので部室に行く事にした。
「柚、なんでそんなに後ろなんだ?」
「え? 隣にいていいの?」
「いや、そんな後ろからついて来られると気になってしょうがないだろ?」
そう言うと柚は俺の隣に並んだ。
「まったく前は頼んでなくても来たくせに 」
「面倒? だよね……」
「柚のそれは今に始まった事じゃないけどな」
部室に入ると先輩がいた。 なんか久し振りに会ったな。 夏休み挟んでたから当然だけど。
「あら? 久し振り。 もう来ないかと思ったわ」
「こちらの都合で来たり来なかったりすいません」
「いいのよ、気にしてないから。 あら? でも朝日奈さんは雰囲気変わったわね、前は騒がしい感じだったのに。 夏休みの間にイメチェンでもしたの?」
「私の印象ってそんなんですか?」
「そうねぇ、新村君に構ってもらいたくてしょうがないみたいな感じだったから今は落ち着いてていいんじゃない? ねぇ、新村君」
「まぁ柚もいろいろあるんで」
「啓ちゃん……」
「……啓ちゃんに柚。 そう、2人とも距離がもっと近くなったのかしら?」
「えッ?」
「いや、そんな事ありませんって」
「あら、新村君即答。 でも朝日奈さん落ち込んでるよ?」
チラッと見ると下を向いて表情を見えなくしている。
「おい、柚?」
「やっぱりそんな事ないんだよね……?」
あれ? なんかヤバいか……?
「香里ちゃんみたいな子が好きなんだ!?」
「あらら、突然怒るとこは変わってないのね、フフッ」
フフッて先輩楽しんでんじゃねぇぞ……
柚は先輩をキッと睨んで部室から飛び出していった。
「おい! どこ行くんだよ!?」
俺が追いかけると香里が廊下に倒れていた。
「いたた…… あれ? 啓何してんの? 今啓の事探してたら朝日奈さんと会って物凄い勢いで突き飛ばされたんだけど喧嘩でもした?」
「お前は大丈夫なのかよ?」
「ん〜、はい?」
香里が手を出してきた、起こしてって事か。 香里を立ち上がらせ柚を一緒に探してくれないかと頼んだら快く引き受けてくれた。
「悪いな、柚に突き飛ばされてその上探させるなんて」
「いいって! 啓と私は友達でしょ?」
「ああ、お前がいて良かったよ」
「でも相変わらず朝日奈さんの心配してるんだね?」
確かにな。 でも関わっちゃいけないと思ったけど優しくしないとも思った。 でも結局は俺にはそんなことできないなってわかったんだ。
「ん〜、まぁあいつは少し特別かな」
「特別ねぇ…… 私もそんな風になりたいな」
「ん?」
「なんでもないよ! 早く探そう? またどこかで絡まれてるかもわかんないし」
俺と香里は手分けして学校の中を探していると曲がり角から柚が勢いよく出てきてぶつかってしまった。
「いってぇ…… 前にもあったろこれ」
すると柚の後方から「朝日奈てめぇ逃げんな!」という怒声が聞こえてきた。 どんだけ短期間で喧嘩売られてんだこいつ……
てか今の怒声は男子だった。 さすがにマズいので隠れる場所を探す。
急がないと…… ここしかない!
俺は柚を引っ張り用具入れの中に入った。 程なくして走ってくる足音が聞こえた。
通り過ぎてったか……
「ねぇ、抱きしめてるよ?」
柚の声で気付いた。ホントだ、でもここ狭いからしょうがない。
「しばらくじっとしてろ。 てか何したんだよ?」
「ついカッとなってどけよって言っちゃった」
「それであれか…… 男子なんだから気を付けろよ? また会ったらなんかされるかもしれないからお前明日学校休んだ方いいぞ?」
「嫌」
「なんでだよ?」
「なんでも。 嫌ったら嫌…… でも啓ちゃんも休んでくれたら休む。 それと今日私の家に来て」
「はぁ〜、わかった。 なんか久し振りにお前のワガママ聞いた気がする」
柚にそう言うととても嬉しそうな顔をしていた。
だけどこの状況で見つかったらヤバい。
俺はそっと扉を開け周囲を見渡す。
「ほら、行くぞ!」
柚の手を取りそそくさと学校を出る事にした。 香里にも事情を話しておこう。
香里にメッセージを入れ俺たちは校舎を出た。
そして何事もなく柚の家に着いた。
「啓ちゃん!」
柚が家に入った途端俺に抱きついてきた。帰る途中ずっと黙っているからどうしたもんかと思ったら……
「ワガママ言ってごめんなさい!」
「おい! 離れろよ柚」
パッと柚は離れた。 しばらくぶりにこの家に来たけど一段と物が減ったな。
てか鈴菜もいないし。
「鈴菜は?」
「例のストーカーいなくなったからもう出て行ったよ、だから私らだけ」
そうか、そうだよな。 いつまでもいるわけないか……
「鈴菜がいないと私と2人きりじゃ嫌?」
「嫌じゃないけど……」
「啓ちゃんもうひとつワガママ言っていい?」
「なんだよ?」
「今日泊まっていってほしいの」
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