美少女に抱きしめられて＋

第37話

私は新村君…… いや、啓ちゃんと少し話せるようになった。 香里ちゃんがそうさせてくれているような気がした。

そしてある日香里ちゃんが私がまた他の女子たちに意地悪されそうになった時私を強引に連れ出して逃げた……

「ハァ、ハァッ！ ふぅ、ここまでくればひと安心！ 陰険な奴らよねぇ」

「香里ちゃん、どうして？」

「私ああいうの嫌い！ 朝日奈さんってなんであんな事されて黙ってるの？ ドMなの？」

「そんな事ないけど……」

「それにさ、前に啓と朝日奈さん話してたの見た事あるけどもっと朝日奈さん明るかったよね？」

「そうだったかなぁ？」

「ほら！ そうやってはぐらかす」

「このまま私に啓をとられていいの？ 私も啓の事前から好きだったのよ？」

「うん、見てるとわかるよ……」

「ほら！ 啓の事となると朝日奈さん目の色変わってるし。 そんな恨めしい目で私を見ても啓を好きな気持ちは私も同じなんだし譲る気はないよ」

嘘？ 私そんな目してた？ 無意識で啓ちゃんに反応しちゃってるのかな……

「今の朝日奈さんじゃあ簡単に啓と私上手くいきそうって自信はあるけど啓の中にも朝日奈さんがいるの！ だから私は啓の心の中を私でいっぱいにしてあげたいって思ってる」

「だ、ダメ……」

「はい？」

「…………」

「朝日奈さんって前に啓と付き合ってたって噂あったじゃん？」

「うん」

「あれって本当に付き合ってたでしょ？ 少なくとも朝日奈さんは」

「私は啓ちゃんと付き合ってる振りって事にしてたの」

「あー、もう！ そんなの建前でしょ！ じゃあわかった。 私今から啓に告白してくる」

それを聞いた途端私は香里ちゃんの前を両手を広げて塞いでいた……

「何それ？」

「何だろ……」

「あはははっ！ そうそう、その調子だよ。 その方が張り合いあるよ朝日奈さん。告白なんて嘘、まだしないよ」

啓ちゃんをダシにされて騙された。 香里ちゃんは私が啓ちゃんの事になるとそうなっちゃうってわかってるんだ。

「可愛い朝日奈さんから啓を私に振り向かせるんだから。 だから朝日奈さんがそんなんじゃ私弱った相手から横取りしたみたいで後味悪いもん」

「でも私啓ちゃんに振られたんだよ？」

「でも朝日奈さんは啓の事まだ好きでしょ？ はっきり言って！」

「……うん。 誰よりも…好きなつもり」

「ほらね！ でも言っとくけど私は啓にばんばんアタックしてくからね」

「どうしてそんな事わざわざ私に？」

「啓は朝日奈さんを気にしてるから。 だから私は真正面から朝日奈さんに挑みたいの」

啓ちゃんが私を？ なんかそれだけで救われる。 でもこの子は私から啓ちゃんを奪おうとしてるんだ。

でも啓ちゃんって私のものだった？

「ただ朝日奈さんは1度啓に振られてるんだから私が有利だもんね」

少し勝ち誇った感じで言ってくる香里ちゃんに正直イラっとした。

「バカみたい。 このまま何もしなきゃ私勝手に潰れてたかもしれないのに……」

「そんなんだから啓に振られるのよ？」

その時私はプツンと切れ香里ちゃんの襟を掴んで壁に押し付けた。

「あんたなんかに啓ちゃんの事でとやかく言われたくなんかない！」

「怖〜、そんな事出来るならさっきのだって切り抜けられそうなのにね」

「あっ……」

私はハッとして香里ちゃんを離した。

これ以上挑発に乗っちゃダメだ。

「ごめんなさい、ついカッとして」

「今の朝日奈さんだったら遠慮なく取りにいけたんだけどなぁ」

「私そろそろ戻るね……」

「はーい、私も一緒に付いてってあげる」

そして私たちは教室に戻った。 香里ちゃんここまで付いてこなくていいのに……

「柚、香里とどっか行ってたのか？」

「そうそう、ちょっと朝日奈さんのボディガードをね！ 」

「またバカな連中に何かされたのか？」

「ううん、香里ちゃんが逃がしてくれたから」

「そっか、香里って頼りになるな」

「ねぇ、偉いでしょ〜！ ？ご褒美に今度どっかで遊ばない？」

「ああ、考えとくよ」

え？ 啓ちゃん、私の時と反応が違う……

香里ちゃんの時は柔らかい物腰なんだね。

私がなんか誘う時はあれほど苦労したのに。って私1度振られた分際で何考えてんだろ？

啓ちゃんは今の私に少し同情してくれてるから優しいんであって何もなかったらどうなっていたか……

香里ちゃんに張り合ってそれで啓ちゃんは私を好きになるのか？ そんなのないないと思い気軽に啓ちゃんに触る香里ちゃんを見て苛立ちを隠せない私にニコッと香里ちゃんが笑いかけた。

「きゃっ！」

香里ちゃんがわざと足を滑らせた振りをして啓ちゃんに胸を当てた、 無駄だよ。 私が色仕掛けしても何も反応なかったんだからとタカをくくって啓ちゃんを見るとほのかに赤くなっていた……

え！？ なんで？ 私でもダメだったのに………

「ご、ごめん」

「ん、ああ。 大丈夫か？」

わざとだよ！ 啓ちゃんなんて心の中で叫んだが通じるわけもなく私は自信をまた少し失くした。