第36話
駅に着き俺たちは香里と別れた。
でもこの時間だとまた朝日奈絡まれそうだよな。
「なぁ朝日奈、電車の時間少しずらさないか?」
「え、どうして?」
「この時間に帰ったら朝日奈あいつらにまた嫌がらせされるかもしれないだろ?」
「新村君はそんなの関係ないからいいじゃん」
「嫌なんだよ、俺が」
「じゃあ電車の中で私見えないとこに行ってるから」
「俺さ、お前にあんまり優しくしない方が良いと思ってたんだ。 だけど考えたらそれは違うなって思ったんだ、そんな事したら俺は本当にクズになりそうだ、朝日奈をいじめる奴らと変わらないな」
「そんな…… 新村君はそんなんじゃないよ」
「だからさ、俺はしたいようにするよ。 それで朝日奈がどう思ってもさ」
「…………」
「少しこの辺歩かないか?」
朝日奈は黙って駅のベンチに座っているので俺は朝日奈の手を取った。
「新村君……」
「ほら、行こう」
俺たちは学校の方向とは反対方向の古い商店街の方へ歩いて行った。
「なんだか前と逆だね……」
「逆?」
「前は私が引っ張っていかないと新村君全然動いてくれなかった」
「ああ、あの時はな。 お前凄い強引で鬱陶しくて…… でもなんだかそれが懐かしいよ」
「だよね、鬱陶しかったよね私」
「思いっきりな。 でもさ、 その時はそうだったけどこうして思い返してみると悪い思い出じゃないんだ」
「どうして?」
「どこかで嬉しかったんだと思う。 小中まではそんな経験なかったしさ。 それに朝日奈みたいに俺の事好きでいてくれた女の子なんていなかったし」
そう言うと朝日奈は俺の手を強く握って止まった。
「どうして? どうしてそんな事言うの? そんな事言われたら私必死で新村君への気持ち押し殺してたのに……」
「だからさ、我慢しすぎなんだよ。 今の朝日奈は」
「新村君全然わかんないよ! 前は鬱陶しがって今は優しくしてくれて」
「俺も朝日奈に対して同じ気持ちだよ」
「え?」
「最初はあんなにテンション高くて周りに喧嘩振り撒いてたのに今はまったく逆だ」
「だって……」
「だからおあいこだろ?」
「新村君、私の事好きなの?」
「は?」
「だって私の事エロい目で見てるよ」
「何言ってんだよお前は!?」
「あははッ、引っかかってる。 新村君ってば本当エッチ〜!」
そんなこと言って朝日奈は泣いていた。
「……グスッ、うぅ。 なんか凄い久し振りな気がして」
「ああ、本当だな」
「新村君酷いよ、せっかく私は」
「だから我慢するなって言ったんだ」
「私香里ちゃんにも新村君取られたくないよ。 宣戦布告されちゃったし」
「その宣戦布告って?」
「もうバカ! でもそれが新村君だもんね。 あの時柚って呼んでくれたよね?私の事柚って呼んでくれる? それに香里ちゃんばっかりでズルい。 私も新村君を名前で呼びたい」
「わかったよ柚」
「ありがとう、啓ちゃん」
その瞬間俺は手を引っ張られ頬にキスをされた。唇をゆっくり柚が離す。
「これで…… これで私しばらく頑張れるから」
「もう頑張らなくていいのにな」
そして俺たちは駅に戻った。
次の日朝起きるとLINEが来ていた。
香里からだった。
『おはよう! 朝日奈さん少しは元気になった?』
『ああ、お前が気を遣ったお陰でな』
『私に感謝してね! 朝日奈さんとは対等でいたいから』
『ほどほどに感謝しとくよ』
学校に着ついて席で涼や徹と話していると隣のクラスから香里がやってきた。
「啓、おはよう!」
「おはよう香里」
「啓と最近仲良いな香里は」
「ああ、そうか。徹と同じクラスだったな香里は」
「そうそう、こいつ前から啓のこ…グフッ…… いてぇな!」
「はいはーい、徹は余計なこと言わない」
俺たちが喋っていると柚も来た。
「あ、朝日奈さんおはよう!」
「おはよう」
柚は静かに挨拶した。 多分周りに気を遣ってんだろう。 自分と仲良くしてたら香里もいじめられると思って。
坂木や平井は柚と仲良いから被害は受けてるけどどこ吹く風なんだがな。
授業が始まり柚をふと見る。新しい教科書…… こいつ一体何回買い直したんだ?
それだけじゃない、制服やジャージなども破かれたり隠されたり。
俺の知らないところで呼び出されて何かもっとされているんじゃないのか?
俺が真剣な眼差しで柚を見ていたら柚も気付きどうしたの?と言わんばかりにキョトンとしていたので目を逸らした。
昼休みになり俺の所に香里がやってきた。
「お弁当一緒に食べよ? ほら、朝日奈さんもその友達も!」
「は? 私らついでかよ!?」
「いいよ、啓ちゃんは香里と食べてなよ」
「は? 啓ちゃん?」
坂木らがいつの間に? と驚く。
「あ、新村君だった……」
「もう遅いっつの! ははーん、いいんじゃない? 啓ちゃんで!香里ちゃんのお陰で柚にも危機感出てきたのかなぁ?」
「……う、私は別に」
「あはは、朝日奈さんいいっていいって! その方が私もやりがいあるよ! でも恨みっこなしだからね」
「啓ちゃん……」
「香里もそう言ってるんだし一緒に食べようぜ? ここが嫌なら食堂でもいいからさ」
結局一緒に食べる事になり香里は明るく俺に話しかけていた。
そして昼飯を食べると香里が柚を離さんと言わんばかりに自分に引き寄せ俺との会話に混ぜた。
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