第35話



「新村君昨日の子って?」


坂木と平井にそう尋ねられた。まぁ当たり前だわな。


「なんか昨日話しかけられて友達になったんだけど」


「そっかぁ、友達ねぇ…… それと昨日ね、柚ったら外で殴られてて大変だったのよ」


「私ら駆けつけなきゃどこまでやられてたか…… 柚らしくないよ最近」


「それでね、新村君柚に告白されて振ったんでしょう?」


「朝日奈から聞いた?」


「わかるわよ。 新村君絡みじゃないとあそこまでならないよ柚は」


「ねぇ、どうして振っちゃったの?」


「俺は結局朝日奈の事は重かったんだよ最低な返答だけど……」


「それでも柚はまだ新村君の事が好きなのよ?」


「じゃなきゃとっくに柚はブチ切れてるもん」


「ただね、私らも柚のためって思って新村君に柚を好きになってもらいたくてさ

、いろいろ余計な世話焼きすぎたけどさ。 でも少しでも気にかけてあげてほしいかなって」


「……ああ、あいつ前にも増して違う意味で危なくなったからな」



「あ、噂をすれば柚だ。 私ら柚についててあげるからさ」


朝日奈はそして坂木と平井たちと話していた。 時折朝日奈の視線と俺の視線が合うがどうにもしがたい気まずさしかない。


昼休みになり教室を出る。気分転換に違う場所で昼飯をとろうと思った。


「やっほ! 啓」


「なんだ香里か」


「なんだはないでしょ? 啓だってウロチョロしといて」


「もう香里は昼食べたのか?」


「ううん、学食いこうかと思って」


「1人でか?」


「えーとね、実は啓を誘おうと思ってね! 昨日友達になったばかりだし」


「うーん、まぁいいか。 俺は弁当持ってきてるし食堂で食べるか」


「じゃあ行こう!」



あんまりこの時間は学食に行かないが昼になったばかりだけあって混んでいた。


「うわぁ…… 買えそうにないや……」


香里はそう言い落ち込んでいた。


「何が欲しいんだ?」


「えと、メロンパンにサンドイッチ」


「ちょっと待ってな」


俺は混んでる中掻き分けメロンパンとサンドイッチを手に取り素早く買ってきた。


「ほらよ」


「す、凄いね。 啓って女の子みたいなんだけどやっぱ男子だね! 私だったらすぐ弾かれそうだし」


「まぁあの混みようじゃ仕方ないよ」


俺たちは隅のテーブルが空いていたのでがそこに座った。


「うん、美味しい」


ニコニコとメロンパンを頬張る香里を見つめていた。


「け、啓、そんなに見られると照れるんだけど……」


いつの間にかボソボソとメロンパンを食べている姿に変わっていた。


「ああ、ごめん。 美味しそうに食べるなぁって。 何も照れる事ないだろ?」


「啓はさ可愛い上に男子なんだからそりゃ私だってジーッと見られると恥ずかしいよ」


香里は可愛いんだなと思った。見た目も可愛いけど真っさらなんだな。 そこが朝日奈と違うところか。


って香里と朝日奈を比べるのは両方に対して失礼だ。

ただ俺にとって初めてあんなに仲良くしてくれたのが朝日奈だったから俺の女性観は朝日奈を基準になってしまったのかもしれない……


「うん? 啓考え事?」


「ああ、香里の事考えてた」


「ブハッ!」


香里が飲んでたミルクティーを零しそうになった。


「なんて事言うのよ、啓。びっくりするじゃん? ゲホッ」


あれ? 俺考え事してて変な事言っちゃったか?


「悪い悪い」


「もう心臓に悪いなぁ……」


「ごめん、もう考えないようにするよ」


「あ、ううん、そういう事じゃなくて…… でもいいなぁ朝日奈さんは」


「なんで?」


「なんだかんだ言って啓って朝日奈さん気に掛けてるでしょ? 見てればわかるよ?」


「え? そうかな?」


「そうだよ」



昼飯を食べ香里と教室に向かうと朝日奈たちがキョロキョロと何か探し物をしていた。


「どうした?」


「ああ、新村君、柚の教科書また隠されちゃってどこにあるのかなぁって」


平井は困ったように言った。


「じゃあ俺も探すよ」


自然とそんな言葉が出ていた。

朝日奈はそれを聞いてキョトンとしていた。


「新村君いいよ、見つからないと思うし……」


朝日奈はそう言ってくるが他人事に感じられず俺も探す事にした。


「私も探すよ、人手があった方がいいよね?」


隣にいた香里まで言い出した。


「えと、香里ちゃんだっけ? ありがとう」


坂木らは香里にお礼を言って探し始めたがやっぱり見つからない。もう捨てられたのかもしれない。すると……


「私の教科書貸すよ。 クラス違うからダブる事ないし!」


香里はそう言うと自分の教室に戻り教科書を朝日奈に渡した。


「あ、ありがとう。終わったらすぐ返すね」


「ううん、どういたしまして!」


朝日奈は席に戻った。


「香里ちゃんっていい子だね。 私の嫌な噂聞いてるはずなのに…… 新村君もやっぱりあんな子の方が………いい?」


「いや、別に俺はいいとかそういう事思ってないって」


「ごめん。 私なんだかんだで新村君を振り回してない」


「別にもう振り回されてるとか思ってないからな。 俺が勝手にやってるんだから朝日奈も気にすんなよ」


「新村君…… 私!」


何か言い掛けたが先生が来てしまって授業が始まった。 朝日奈も視線を落とし教科書に目をやった。



そして授業が終わり今日も帰ろうかという時香里が来た。


「啓! 帰ろう? 朝日奈さんも一緒に」


「え? 私も?」


「だって朝日奈さんも啓と一緒に帰りたいんでしょ? 本当は」


「あっ!」


そう言い俺たちの手を取り香里は教室を出た。


「へへーん! 」


「何がへへーん!だ。 まったく……」


「…………」


「朝日奈さん暗いよ! もっと笑おう?」


「ごめん、最近うまく笑えなくて……」


「じゃあさ! 私朝日奈さんに宣戦布告! 」


「え、何をだよ? 朝日奈をいじめるなよ?」


「啓にはわからなくていいの! ね? 朝日奈さん! 私堂々と朝日奈さんにして欲しいの。 だって今の朝日奈さんとっても寂しそうで…… だから勝負だよ!」


「…… うん。 なんかいろいろありがとう。 香里ちゃん」


俺はよくわからないまま一緒に3人で駅まで行った。 香里と朝日奈は思ってたより上手くやっていけそうなのか……?

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