第34話



「朝日奈さんと別れたって本当なの?」


夏休みも終わり俺はとある1人の女子にまた何度も聞かれた事を言われていた。


隣のクラスの「真下 香里(ました かおり)」という女の子だ。


「別に…… 付き合ってないよ」


もううんざりしている。 この応対……


「そっかそっか、私ずっと前から新村君と友達になりたいなぁって思ってて。 でもクラスも違うしいつも朝日奈さんといたからなんとなく声掛けづらくて」


「俺と? 友達に?」


「うん! 香里でいいよ」


「じゃあ俺も啓でいいわ」


「やった! じゃあ啓! 結構女子の間で人気だから嬉しいなぁ」


「あー、可愛いのなんだなってだろ? 別に可愛いからなんだよって思うけど」


「女子は可愛いの大好きだからマイナスに捉えなくていいんだよ? むしろプラスだよ」


「ふーん、俺小中ではこの外見でいじめられてたけど?」


「そんなの啓が可愛いからに決まってんじゃん! そんな奴らとは離れていいんだよ」


「へぇ、そんなもんか?」


「うん、そんなもんそんなもん! ねぇ、LINE交換しよう?」


「ん、ああ」


LINEを交換して香里は今日連絡しちゃおっかなぁ? とはしゃいでいた。

普通の女の子はこんな感じなんだよな。裏表がないわけではないがなんか無邪気というか……


そしてゴミ当番だったのでゴミを持って行く途中下の中庭の隅で女子3人に囲まれてる朝日奈を見掛けた。


あいつまたやられてるのか……

朝日奈は倒れてて女子たちに蹴られている。


いいから朝日奈も怒っちまえよ。

なんて俺は昔の朝日奈の事は少し軽蔑してたのに今はこんな事を言ってると思うとやっぱ俺って矛盾してるなと感じた。


「啓、何やってんの? こんな所で」


「あれ? 何でいるの?」


「廊下で見掛けたから私もゴミ持ってあげようかなと思ってたら止まって外ジーッと見てるんだもん」


「ああ、こっちに来れば見えるよ」


何が? と香里は不思議そうに俺の所にきていじめられている朝日奈を見た。


「あれって朝日奈さん? なんであんな事されてるの? もしかしてあの噂?」


「香里も知ってるのか?」


「うん、だって女子の間で結構広まってるよ? あれって本当なの?」


「いいや、嘘に決まってるだろ」


「じゃあそう言えばいいのに」


「俺もさ、最初はそんなのデタラメだって言ったんだよ。 だけど本当か嘘かなんてどうでもいいんだ。 朝日奈をいじめたかっただけなんだよ」


「酷いよ、そんなの! 啓、助けなくていいの?」


「あいつ、俺に助けてほしいなんて思ってるのかな……」


「あっ!」


香里が声を上げると朝日奈のもとに坂木たちが駆けつけてた。

そして朝日奈をいじめてた女子たちは行ってしまった。


「先越されちゃったね」


「俺は助けに行けたかどうかわかんない」


「啓、朝日奈さんとは付き合ってないって言ってたけど何かあったの?」


「まぁ話してるといろいろあるさ、あいつは俺に助けてなんて欲しくないんだ」


「そんな事ないと思うんだけどなぁ…… あ! そうだ。 ゴミ片方持つよ、その為に来たんだった」


「あ、うん。 サンキュー」


「ねぇ啓さえよかったらさ、今日一緒に帰らない?」


「別にいいけど? 俺電車通学だけど香里は?」


「私はこの辺だから駅まで一緒に行ってあげる」



どうしたもんか……

俺は朝日奈に悪いとか思っちゃダメなんだよな、そうだよなと自分に言い聞かせた。


「やっぱ私と帰るの嫌だった? 」


「いや、そんな事ないよ。 わかった」


「よし、決まり!」



教室に戻って帰る準備をしていると朝日奈も姿を現したが俺は朝日奈を見て固まってしまった。


服はボロボロで泥だらけ。 腕や脚には少し青アザがあった。


「朝日奈、それ先生に言えよ。 いじめられてんのもろバレだ……」


「外で転んだだけだから大丈夫だよ」


嘘つけよ。俺は見てたんだぞ? それでもまだ朝日奈は笑っていた。


「あ、啓! 遅いから迎えに来たよ!」


香里が来てしまった。 朝日奈をチラッと向くと表情が見えない……


「ああ、悪い」


さっさと行ってしまおう。 俺は香里と一緒に教室を出た。 俺たちを見ていた坂木らの視線も感じたが俺は気付かないふりをした。



駅に行く道のりは香里は俺に話しかけていた、チラッと後ろを向くと少し離れた所に朝日奈がいた。


俺の後ろを向いた事に香里が気付き後ろを向く。


「あ、朝日奈さんじゃん? 」


「そうだな」


「朝日奈さんとも一緒に帰ろうか? 私呼んでくるよ!」


いいってと言おうとしたが香里は朝日奈のもとへ行ってしまった。

そして朝日奈の手を握ってこちらに連れてきた。


「せっかく同じ道のりなんだから」


香里がそう言ったので朝日奈を見ると少し困ったように笑っていた。

そして香里と俺は話すが朝日奈は相槌くらいしなかった。


「じゃあ私はここでさよならするね! バイバイ!」


俺はホームに朝日奈と一緒に座っていた。


「あの子友達? 邪魔してごめんね……」


朝日奈からそんな言葉が出るなんて思わなかったので俺は少し驚いた。


「お前そんなんで楽しいか? いじめられる為に学校に来てるもんじゃねぇか、朝の噂まで流されて」


「新村君に…… 」


「ん?」


「本当の事は新村君にさえわかってもらえてれば私はいいから」


「それでもその制服もちょっと破れてんじゃん、どうすんだよそれ? それに教科書だって」


「買い直すから大丈夫だよ。 お金はあるから」


「何かある度に買い直すのか? いくら金あっても足りねぇじゃん」


「新村君、心配しなくていいって言ったじゃん。 私は私でなんとかするよ」


そんな事を言って笑う朝日奈は俺と出会った時の面影なんてもうないのかな? それが少し寂しく思えた。

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