第32話


全て自暴自棄になり私は厄介者。どこに行っても何をしても他人に迷惑をかける存在になっていた。



「おい! 柚やめるってどういうことだ!?」


「もう私には出来ません。 このままここにいたら会長にも迷惑をかけます」


「会長、どうします?」


「柚ちゃんには今までたくさん稼いでもらったしなぁ」


「そうは言ってもケジメがあるでしょう?」


「それなんだが柚ちゃんは確かにここで仕事をしていたがわしらの組には入っていない。最初に言っただろう?」


「会長……」


「それにわしもしばらく柚ちゃんと居て骨抜きにされちまった。柚ちゃんに酷い目はこれ以上合わせられんだろう? 柚ちゃん、これからしばらく休むといい。 しっかり休んで心を入れ替えな」


「ありがとうございます、会長。 それに今まで良くしてもらったのにこんな形でごめんなさい」



「柚!」


「鈴菜…… ごめんね、置いてくような感じにしちゃって。後はよろしくね」


「う、うん。 あのさ、また会える?」


「そうだね……」



そして私は何もする気が起きなかった。

ふと鏡で自分を見る。

………笑ってる。 なんで? 気持ち悪い!


私は鏡を投げ付けた。 鏡が割れ、割れた破片に私が無数に映る。


なんでこんなに悲しいのに私は笑っているんだろう?

これは罰なんだろうか? 復讐するためにその復讐に復讐されてるの?


どうでもいいか。 目的もなくなった私はただひたすらに日々を消化していった。私は急に整頓されてある部屋を見てひどく不快になった。


こんな家めちゃくちゃにしてやる。

家具を倒し皿を割り化粧品を乱雑にぶちまけ服も引き裂いた。


なんだかスッキリした。 今はこの方が落ち着く……

頭がおかしくなったのかな? 私。

いや、とっくの昔に壊れてるんだよね。



「柚、最近元気ないよ? 前まではニコニコしてたのに。」


私の事は放っておいて欲しいのに夏美と花梨は相変わらず私の心配をしていた。

もう2人もどうでもいい。


私は2人にしてきた事を話し軽蔑され嫌われようとした。 だけど2人は私を見捨てなかった。


「柚、私ら友達でしょ? 柚がみんなから嫌われたって私らは柚の味方だって!」


「 2人には悪いけど私は人を利用してばっかりだった。 でもあんたら2人には利用価値ないの。 だってあんたらから得る物なんて何もない。 安い友情ごっこなら他でやって」


これで嫌われたな、まぁいいや。 バイバイと心の中で思ったがそれでも2人は私を気に掛けていた。


こんな私に構うなんて時間の無駄なのに。 私の利用価値? せいぜい可愛いから他の男が食いつきやすいってくらいかな。

2人もどうせそうなんだ……



「で、あんたらなんで毎日私の家に来てんの?」


「私ら友達だって言ったでしょ? 元気ないなら出るまで付き合うよ」


「バカみたい……」


「柚、家の中相変わらずめちゃくちゃだねぇ。毎日暴れて疲れない?」


「2人の相手してる方が疲れるわ」


「そんな事言っても無駄だよぉ〜、ねぇ花梨」


「そうだよ、だから諦めなさいって! 柚」


「ふん……」



だけど私は弱い人間だから2人にずっと優しくされてだんだん決意が鈍ってきたんだ。


私は本当に心が弱いんだ…… だから甘えさせて欲しい。


それからは2人に対してまた以前のように接するようになっていた。

高校も私と同じ所へ行こうと言ってくれた。


少し前向きになれた気がした。 相変わらず心にぽっかり穴があいたままだけど。


高校に入りモテる方だから先輩や同級生に告白されたりもした。 でも今まで男臭いガツガツしているのはウリをやっていたせいか受け付けなくなってきた。



そんな時にとって女の子みたいな顔をして全く私が話をしても興味がなさそうな男の子がいた。 新村君だった。





「これが私がずっと新村君に言いたくなくて黙ってた事」



あの後数日経ちストーカーの事も少し落ち着いた頃、新村君が私の家を訪ねていた。 そして私は全部話した。



「うん、朝日奈の事はわかったよ。 辛い経験があったって事もあの朝日奈をみればなんとなく想像ついたし」



「私これ以上新村君に嫌われたくなくて言えなかった。 だって自分のドス黒い部分を好きな人に言いたくなかった……」



「……………」


「あのね新村君、私は本気で新村君の事が好き……」


「……ごめん、朝日奈」


「そうだよね、わかってるよ。 こんな私に告白されても気持ち悪いだけだよね。それに私新村君を刺そうとしたし」


わかってたけど……わかってたけど新村君にそう言われるのはやっぱり悲しい……


「もうこんな恋人ごっこはやめよう。 来てもらってごめん…… だけどもう1人にさせて。今恥ずかしくて泣きたくて新村君の顔見れないよ」


「わかった、ごめんな。朝日奈……」


そう言い新村君は帰っていった。

その日はずっと思い出し泣いてばかりだった。

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