第26話
「え〜、どうしたのその頭!?」
朝日奈を見て鮎川が驚いていた。 まぁ包帯巻いたきたらそうなるよな。
俺が事情を説明してやると……
「へぇ、柚がよく我慢したねぇ。 あっ! そうだ」
鮎川は悪戯な笑みを浮かべ俺に抱きついた。
「…… 嘘だ、柚めっちゃ怖い顔で睨んでんじゃん」
「鈴菜、 早く退いた方がいいと思うよ?」
「あ〜、 ごめん! やっぱ新村君となると話は別なのね」
俺は騒がしくなってきたから帰ることにした。
「俺はあと帰るわ、じゃあな」
「え? もう帰っちゃうの?」
「明日も学校だろ? そんなに長くいれるかよ」
俺がマンションから出ると人影が見えた。 もしかしてストーカーか?
人影が消えた所に行くともうそこには誰もいなかった。
一応朝日奈に電話して注意しとくか。
「朝日奈、気を付けろよ? さっきマンションの外に変な人影があったぞ」
「え? 新村君は大丈夫?」
「俺よりお前らが危ないだろが。 夜は一応出ない方がいいぞ? 鮎川にも言っとけよ」
「うん、わかった。 新村君こそ気を付けてね?」
電話を切り俺も一応用心して帰ったが何事もなく済んだ。
「ふぁ〜、おはよう。 眠い眠い」
朝日奈は眠そうな顔でギリギリに登校してきた。
「あれ? お前包帯取ってきたのか?」
「うん、あれくらいなんともないし血も止まってたからいいかなって」
「え?朝日奈怪我したの?」
そんな会話をしてると聞こえたのか涼も混じってきた。
「うん、転んじゃって頭ぶつけたの」
「ははッ、ドジだなぁ。 そういえば今日学校終わったらカラオケ行くんだけどお前らも来ない?」
あ、まともな友達と行くのは初めてだなと思いながら俺は朝日奈はさすがに鮎川の事もあるし行けないよな、だったら俺もと思った。
て、あれ? なんで俺が朝日奈のことそんなに気にしてるんだ?
俺今までこいつのことそんなに気にかけてたのか?
「ああ、悪い。 ちょっと都合悪いんだわ」
気付くとそんな事を言っていた。
「ごめんね、私も友達と約束あって」
朝日奈がそういうとやっぱ2人でイチャイチャしたいかぁと涼は残念がっていた。
そして昼休み……
「新村君、どうして断ったの? 新村君は断る理由なかったと思うけど」
「なんとなく……」
「もしかして私に気を遣ってくれた?」
「いや、そんな事はないけど」
「えへへ、ありがとう。 なんか新村君に悪いけど凄く嬉しい」
「そんな事ないって言ったけど?」
「うん、そうだね。 ごめんね」
俺が顔に出したのかどうかわからないが朝日奈にバレていた。 まぁどうでもいいか。
「新村君、最近私にも優しくなってくれて嬉しいな。 ううん、前から優しかったけど前よりわかりやすい」
「はぁ?」
「照れなくていいよ?」
「照れてないって」
俺の中で何か変わったのか? 坂木からこいつの話を聞いたから?
俺は朝日奈を心配しているのか?
よくわからないまま放課後になり昨日はズラした時間で帰っていたのをバレてしまったので今日は速攻で帰ることにした。
朝日奈はさも当たり前のように俺について来た。 そぉいや別にこいつと今までも一緒に帰ってたけどそんな義理もないんだよな……
なのに俺はこいつが隣にいるの当たり前に感じていた。
「ん? どうかした?」
「あ、いや。 なんかお前と帰ってるの当たり前みたくなってるんだけど……」
「嫌?」
「別に嫌とは言ってないだろ?」
そう聞いて朝日奈はクスクス笑っている。
「なんだよ?」
「少し前の新村君ならはっきり迷惑だ、ウザいとか言ってたよ? やっぱり優しくなってる」
「迷惑だしウザい」
俺は図星をつかれたのでそう言ってやった。
「もう遅いよ〜! 新村君。 やっと、やっと新村君に…… あれ?」
朝日奈が何か言いかけた時朝日奈は泣いていた。
「あれ? どうして私泣いてるんだろう? 嬉しいはずなのに……」
俺もよくわからないがとりあえず朝日奈の頭を撫でてやった。
「なんかごめん。 泣いちゃったりして」
「まぁいいよ……」
俺はこいつを好きになったとは言えないけど俺の中で確かにこいつに対する何かが変わったんだと自覚した。
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