第25話



「ふんふんふーん」


朝日奈との帰り朝日奈は偉く気分が良さそうだ。


「やっぱ新村君と帰るのはいいねぇ」


「そうか? 俺と帰って朝日奈のどこが楽しいか謎だけどな」


「そうやって帰ってくれるとこかな!」


「それって朝日奈の思惑通り行ってるようで腹立つな」


「新村君は私の思惑通りなんて全然ならないよ、だから困ったなぁ」


「そうか?」


「そうだよ」


「俺朝日奈には結構辛辣なこと言ってるような気がするけどそれでも優しいの?」


「新村君ね、私と出掛けた時ジュース買ってたでしょ? 」


「それが何か?」


「捨てる時空き缶入れからはみ出てたゴミとかも拾ってちゃんと入れてたでしょ? 」


言われてみればそんな事あったような。


「そういう優しい所私好きだよ」


「別にそんなの普通だろ? てかよく見てたな」


「見てるよ、新村君のことなら……」


「え?」


「ほら、電車来ちゃうよ! さっさと行こう」


電車の中で朝日奈が久し振りにキツめのスキンシップを取っていると前に俺をボコったグループの女子の1人が入ってきた。


時間ズラしてる筈なのにタイミングが悪い。でもあっちも1人だから何もしてこないと思ったがこっちに近付いてきた。だが朝日奈も気付いてるのに無視して俺にくっついている。


「あらあら、柚ちゃん最近見かけないと思ったらこんな時間に帰ってたんだ?

相変わらず彼氏と仲良いようね」


バカにしたようにその女子たちは朝日奈に絡んでくる。


「隼人もこんなののどこが良かったんだか」


「……………」


「おい! 聞いてんのかよ!? このクソビッチ!」


「ひゃあっ」


なおもシカトを続けて俺にくっついてスキンシップを取る朝日奈に痺れを切らしたのか1人の女子が朝日奈の肩に手をかけ強引に引きはがした。


力が入っていたのか引きはがされた拍子に朝日奈は電車の壁ににガンッと頭をぶつけてしまった。


「おい、朝日奈大丈夫か!?」


朝日奈は頭を押さえて下を向いている。相当痛かったのか?


「彼氏君、柚ちゃんのお陰でこの前は大変だったね。 綺麗な顔に戻ってよかったじゃん」


「柚ちゃん、これからあんまり調子こくなよ? 汚いクソビッチ」


「おい! 」


さすがにあんまりだと思い俺は言い返そうとしたが朝日奈が俺の腕を掴んで止めた。


「あら、わかってきたじゃん。 あ〜、スッキリした」


そいつはそう言い終わると間もなく降りるようでドアの方に向かっていった。


「朝日奈…… 」


「えへへ、今日は我慢できた」


朝日奈がそう言い押さえていた頭から手を離すと血が滲んでいた。

窓の近くの角にぶつかったから頭を少し切ったみたいだ。


「お前……」


「私が怒ったらまた迷惑かけちゃうでしょ? それに私の事はいいの、原因は私だから。 新村君に何かあったら許せないけど」


朝日奈はそう言い大丈夫だよと言わんばかりに微笑みかける。



「…… とりあえず今日は送って行ってやるよ、あと一応病院行こうな」


「え?」


「なんだよ?」


朝日奈は少し驚いたような顔でこちらを見つめた。


「優しくしてくれて…… ありがとう」


「いくらなんでも放置できるかよ?」


「こういうのいいなぁ、こんなに新村君に優しくしてもらえるならもっとひどい怪我でも良かったかな」


「何バカな事言ってんだよ」


確かに朝日奈が大人しかったから心配だったけど俺がこいつの心配なんてな……


「まぁ少し偉かったよ……」


「へへ、褒められちゃった」

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