第24話
「殺された……?」
「そう、殺されたの。 それから柚の叔父さん叔母さんの所に引っ越して来てね」
「柚はね、最初は凄く落ち込んでたんだけどしばらくしたら元気になって来たんだけどさ…… でも柚の両親を殺した犯人は捕らなかったの」
「柚はね、いつか犯人は捕まると思ってたんだけど実際は捕まらなかった。 それで柚は誰も裁いてくれなきゃ自分でそいつを見つけ出して殺すって決めたの」
「それで蛇の道は蛇と思ったのかな? その時の柚はひたすらそいつを殺す事だけを考えてていろいろ自分で調べてたみたい。中学生でだよ?」
「ヤクザに取り入ってそこから更に柚は変わったの。 汚い所ばかり見てたせいなのかな? 柚もその世界に染まっていってね。 ウリでお金を貯めてヤクザ専門の便利屋に高いお金を払ってついにそいつの居場所を突き止めたの……」
「新村君、それでどうなったと思う?」
「殺したのか?」
「ううん、そいつは既にもう死んでたのよ……」
「え?」
「目的を失った柚は憎しみをどこに何にぶつけていいかもわからなくなってめちゃくちゃだったんだと思う。 死んじゃうかもしんないって思う行動とか危険を顧みない事なんか平気になっちゃって……」
「だからか。 あいつの危なかっしい行動は」
「それでも落ち着いてきた方なの。 そんな時新村君に興味を持ったんだね」
「……………」
「どう? これが私らが知ってる柚の事。 それでも新村君は今までのように柚に接してあげられる? 」
答える事ができなかった。 俺は何も考える事ができなかった。
「だよね、 だから柚は言いたくなかったんだよ。 それを私が新村君に言っちゃったのはなんでだと思う?」
「なんで?」
「…… やっぱりいい。 後は新村君次第って事で。 でもこの事は柚には黙っておいてね? 勘付かれてもダメ。 柚が自分から言い出すまで自然を装って欲しいの」
「わかってる、 とりあえず朝日奈には今まで通り接するよ」
そしてそれから更に1週間後朝日奈はようやく登校してきた。
「おはよー!大分休んじゃった」
いつもの調子に戻ってる。
この前からしてみるととても変な感じだ。
「別に待ってないけど?」
「まったく! 素直じゃないんだから」
朝日奈は鼻歌を歌って1人ニコニコしていた。
「なんか良いことでもあったのか?」
「全然! むしろその逆」
「逆なのにそんな気分良いのか?」
「悲しんでたってしょうがないし! それとも新村君は傷心の私を口説こうとしてたのかな?甘いなぁ」
「甘いなぁ、お前のその考えが」
「あ! そうだ。 ごめんなさい!」
「何が?」
「私前に言ったよね? お弁当作ってきてあげるからって。 なのにこんなに私に休まれたら意味ないよね! だからもう出来るだけ休まないね」
「相変わらず一方的だな。 それで? 作ってきたのか?」
「うん! どうせ新村君は自分の持ってきてるでしょ? だから今日は取り替えっこしようか? はい! 決まり」
「はいはい、それで良いなら良いよ」
「ん?」
「なんだよ?」
「ううん、なんでもない」
「あっそ」
なんか爆弾処理班を担当している気分になりながらその日は過ごした。 まぁここまで言わない奴が俺に言う日なんて来るのだろうか?
言われたからなんなんだ? 俺はそれでどうしろと? なんて今思ってもしょうがない。
前の席の涼は相変わらず朝日奈って可愛いなとか言ってくる。 能天気な奴だな。
チラッと朝日奈を見ると先ほどとは打って変わって表情が死んでいた。
ほらな、無理してると不意に顔に出るんだよお前は。
俺の視線に気付いたのか朝日奈はすぐにニッコリ笑い俺に微笑むがもう遅いぞ?
授業も終わり部室に向かう。 朝日奈もついてくるが2人で行くのはなんだか久しぶりに感じだ。
「なんかここに来るの久しぶりだなぁ」
「だろうな」
部室を開けるといつもの如く先輩がいた。
「あら、ずいぶん久しぶりね。 朝日奈さん」
「ご無沙汰してます! めでたく今日から復帰でーす」
「別に待ってはなかったけどおめでとう」
「ところで前から思ってたんだけど貴方たちって付き合ってるの?」
「え?」
「はーい! 私たちラブラブです」
「あ、そういうことね。 新村君の反応でわかったわ」
「うひゃあ、合わせてよ! 新村君ったら!」
「新村君も大変ね。 どう? 私と付き合った方が楽なんじゃない?」
「はっ!?」
「先輩〜? あんまり私をからかわない方がいいですよ?」
「冗談だからそんな怖い顔しないで、それじゃせっかく可愛いのに新村君に嫌われるわよ?」
「あはは、そうですね。 気をつけます」
朝日奈は俺にクルッと向き直るとニッコリ笑いかけてきた。 先輩に怖い顔と言われ気にでもしたのだろうか?
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