第23話


「柚、学校休んでいいの?」


「うん、行きたくない。 こんな状態じゃ……」


とても気分が落ちている……

この前まで上手く誤魔化せたんだけどな。


新村君…… 私の事なんて思ったろう? 確かな事は私にはいい印象なんかないってことはわかる。 こんな女だもんね。


私の行動1つ1つが全て新村君を困らせる。 新村君の事となると私は何かスイッチが入ったように手段を厭わなくなってしまっていた。



今まで付き合ってきた男になんてなんの感情も持たなかった。 だって私を好きなんじゃなくて私という表面だけの薄皮一枚だけが目的な奴らばっかりだった。


私が甘えれば甘やかしてくれた。 可能な範囲で。 じゃあ私が無理なお願いをしたら? 私と一緒に死んでくれる? なんてお願いしたらきっと頭がおかしいとかキチガイ扱いされてすぐに別れるだろう。


そんなもんだって思ってたしそこまで求めるなんて間違ってるしそもそも私に言い寄ってくる連中なんかどうでもよかった。


新村君に興味を持ったのは皮肉にも女の子みたいな外見で私が所詮薄皮一枚とかバカにしてた私がそんな奴らと同じ理由で興味持っちゃうなんてね。


私もそいつらと同じなんだ。 バカにしてた連中と同じ私もバカな人間の1人。


でも最初は新村君だって他の人たちと同じだろうと思った。 だから可愛い新村君で私は楽しもうと思った。


だけど新村君は何度私が迷惑かけたりボコボコにされたりしても鬱陶しがってはいたけど見捨てたりはしなかった。


新村君への意識が変わったのがはっきりわかったのは2度目に新村君がボコられた時。


なんでもいいから何かしてあげたくなった。 困っていたら助けたい。 悲しんでいるなら癒してあげたい。


そんな風に思った。 だけど実際困らせていたのは私。

新村君がいじめられていたと知ってなんとかも出来ないくせに慰めてあげたいなんて思った。


あれ? 私ってやっぱり新村君のことを好きになってたんだ。 と悟って私は逃げてしまった。



私は今まで男の人なんて好きになったことなんかなかった。

これが私の初恋なんだろうか? 私はまた

新村君の前で笑えるだろうか?


「柚、ずっと深刻な顔してるよ?」


「え?」


「でも女の子みたいで可愛い」


「失礼な、私だって一応女だよ?」


「あはは、そうだね!」


「あんたこそ学校行ってないけどいいの? まぁストーカーいたらおちおち学校も行けないか」


「じゃあ気分転換に少し外行こう? 柚と買い物したい」


「いいね、行こうか」



私と鈴菜は街に出掛けた。

デパートに行き映画観たりカフェに行ったりした。


たくさん遊んで疲れたのでそろそろ帰ろうと思ったらある人に声を掛けられた。


「よう柚、鈴菜元気そうだな?」


「後藤さん?」


「大分前よりマシになったようだな? お前が抜けてから会長も偉く悲しんでたぞ」


「あの時はいきなり辞めてご迷惑をお掛けしました。 会長にも凄くお世話になったのに……」


「ハハハッ、変われば変わるもんだな、あんだけ生意気だったお前がそんな潮らしい態度取るとはな」


「はい、あの時の私はバカでした…… 今もそうかもしれないですけど」


「普通だったらえらい目に合わせられるとこだが会長がそんな事柚にはできないってな。 娘のように思ってたんだろう」


「新堂会長はお元気ですか?」


「いや、 亡くなられたよ。先月にな」


「え? そんな……」


私は途端に泣いてしまった。 こんな事なら一目会いに行けばよかった、そして謝っておけばよかった。


私の人生こんなんばかりだ……


「だから今は少しゴタゴタしててな。 柚、会長のために泣いてくれてありがとな」


「……ぅあッ、うぅッ、みんな大切な人がいなくなっていって………」


「すまんな、もう行かなきゃならないから…… 元気でやれよ柚、鈴菜」


そうして後藤さんは街の中へ消えていった。



「柚、大丈夫? …… じゃないよね、ごめん」


「ふふ、見苦しいよね? こんな私が悲劇のヒロイン気取りなんて」


「柚……」


「…… でも、でもッ! 悲しいよ、ぅあ、うわぁぁん」


私は人目を気にする事なく泣いてしまった、鈴菜は焦って私をトイレに連れて行き泣き止むまで待ってくれていた。



「鈴菜、もう大丈夫。 帰ろう」


帰る頃には天気だった空も曇り空になり雨が降っていた。

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