第19話
「おじさーん、逃げないでよ? 逃げると酷い目にあうよ?」
「す、すすいません、金持ってないんだ」
中年の男はガラの悪い男に捕まり1人の女の子にそう言い訳した。
「へぇ? お金持ってないくせに私とやったの? 後藤さん、そうなんだって」
後藤というヤクザな男が男を締め上げる。
「お前が一刻も早く金欲しいのは分かるが見境なさすぎだ。 もっとありそうな奴からカモれよ」
「はーい、すみませーん。 ちぇ、やり損じゃん」
「都会はシノギが厳しいから敢えてこっちで稼いでたがお前がきてからこっちは儲からせてもらってるからいいがな、でそっちの子は新しい子か?」
「んー、見学みたいな? どういうのか興味あるみたい。 鈴菜可愛いから私がもし抜けたら絶対1番の稼ぎ頭だね!」
「確かに柚くらい可愛いのが入ってくれるのはいいけどよ、中坊じゃねぇか。こいつちゃんと連携取れんのか?」
「私も中学生なんですけどぉ?」
「ああ、柚はガキらしからぬとこあるからな。 お前は特別だ」
「特別ならもっと取り分私にくださいな」
「こっちも商売なんでな、 これでも多い方なんだぞ? お前は会長のお気に入りだし」
「全然足んないわよ、 ああ! なんか急に腹立ってきた、あんたのせいよ! このジジイ!」
柚はその中年男性の顔を蹴り飛ばした。
思った通り過激な世界なんだなぁ。
私は柚ほどの気合はないけど面白そうという理由だけで飛び込んだ。 最初は柚を見て憧れたんだ、 でも次第に柚に対して恐怖を抱くようになったんだ。
柚は何か目的があるみたいだけど私がそれを知るのはまだ先の事だ。
「とりあえずこの辺のウリを仕切ってるのがこの人たちの会長だから入るなら後で挨拶しようね、私も一緒に行ったげる」
「じゃあ私やる!」
「いいねぇ! 即断即決、話が早いの私大好き」
「柚、本当にこいつ大丈夫か? 」
「私の目に狂いはない! 」
「いや、だったら金なしオヤジとやらんだろ……」
「じゃあ会長に取り次ぎしててね! 私が連れて来たんだから特別扱いでよろしく!」
「全く会長は柚を甘やかすからどんどん生意気になりやがって」
_______________________________________
「おーい! 鈴菜?」
柚の声で今に帰る。 さっきの新村君と柚を見てて昔の柚を思い出していた。
さっきはちょっとした悪戯心で新村君の前で昔の事を引っ張り出したら柚は相当頭にきてたようだし新村君にやっぱり知られたくないんだろうな。 それに柚怒らせると本当に殺されそうだし……
「私さ、まだウリやってるはやってるんだけど柚がやめた後私もやめてさ、フリーでやってんのよ」
「え? 後ろ盾もなくやってると危ないよ? だからストーカーなんかついちゃうんだよ」
「そうだよね、 最初は料金省かれることなく気楽にお金稼げていいなぁって思ってたんだけどさ…… 私柚みたいにそっちの方は鋭くなかったね」
「そんな事ないって。 私だってまだまだお子様だよ」
「それでね、 柚にとっては嫌だろうけど……」
「新堂会長に頼りたいの?」
「柚が一声掛けてくれれば…… ほら、柚って会長の1番のお気に入りだったでしょ?」
「ごめん、鈴菜。 もう私その手の人たちとは手を切ったんだ」
「ううん、いいの! なんとなくそう言われるってわかってたから」
「素人には頼れないもんね。 返って危なくなりそうだし……」
あの柚が真剣に私の事を考えてくれている。 やっぱり優しくなってる……
新村君絡みだと容赦なくなるけど。
こんな事今の柚には相談すべきじゃなかったかな?
「あのさ、鈴菜って私と同じで1人で家住んでるでしょ? ストーカーが怖いんだったら私としばらく暮らさない? 」
「え? いいの?」
「もともと鈴菜をそっちの道に引っ張ったのは私だしね」
「やっぱ柚って変わったね、優しくなった」
「……そうなのかな?」
「新村君のお陰?」
「……確かに新村君は私にとって他の男子と違うかな」
それって好きって事なんじゃない?
私はそう言いかけたが何が柚の地雷になるかわからないので言うのをやめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます