第8話

 旧型だ。俺は木々の隙間を縫って走り、なんとか逃げようとする。

 奴らは目撃者をどこまでも追って殺す。もちろん会話は通じない。


 相手の武器は斧。こちらの武器は銃。だが。


「こんな豆鉄砲が効くかよ!」


 一般的な警察官に支給されるのは非常に殺傷力の低い銃だ。

 せいぜい人間の犯罪者を足止めするぐらいしか用途はない。


 しかし。


 エリートの警察官に支給されるのは非常に殺傷力の高い銃。

 その銃が火を吹いた。旧型の頑丈な頭部が粉々に飛散する。


「何やってんですか」

「悪い。市民からの通報でここに」

「その通報なら僕も傍受ぼうじゅしてます」


 ……?


「それ、違法だろ」

「あなた方にとっては違法です。僕たちにとっては合法です」

「ああ、そうかい。じゃあ主犯探そうや」

「主犯? もう目星つけましたよ」


 いくらなんでも早すぎないか。


「いくらなんでも早すぎないか」

「はあ…… どこまで馬鹿なんです? 通報の傍受と同時に通報なされた善良な市民の身辺を洗えば簡単に割り出せますよ」

「それが上司に対する言葉か?」

「事実ですから。来月には僕があなたの上司になります」


 こいつが違法スレスレの手段で犯人を割り出したことは間違いない。

 長年の、叩き上げの勘だ。俺は古い人間だが、それぐらいはわかる。


「さあ。主犯を捕まえに行きましょうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る