第6話

「この機械野郎、とんでもない犯罪者ですね」


 携帯型端末をいじりながら部下が言う。


「ま。このクズを殺した連中は無罪放免でしょう」

「……しかしだな」

「何か? 法の番人がまさか法律を無視するとでも?」

「ただな、前科者とはいえ、集団リンチは」

「法律は人間の味方ですよ。そんなことも知らないんですか?」


 眼前には粉々になったアンドロイドの死骸。

 俺が。俺がおかしいのかもしれない。


「すまん。俺も刑事の端くれだ。さっきの妄言は忘れてくれ」

「わかっていただきなにより。もう一度言います。法律は人間の味方であり、よほど人間側に瑕疵かしがない限り人間が裁かれることはありません」

「知ってるよ。ただ…… 心情的にはな……」

「心情的? ふざけるのもいい加減にしてください。何よりこのクズは人間を殺してるんですよ」


 ぐうの音も出ない正論に聞こえる。

 俺はわだかまりを抱えつつその場を立ち去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る