第5話 girl's side
みなとみらいデートの数週間前━━。
『でも、俺なんかの意見が本当に参考になるのか?』
━━またか。
ゆうちゃんは、すっごいネガティブだ。
普段はめちゃくちゃな論理でポジティブに物事を捉えたり、ジョークで人を笑わせたりしているけど、根はどうしようもなくネガティブなのがバレバレ。
自分の発言に対してすぐに保険をかけようとしたり、今みたいに「俺なんか」という一見謙虚に構えているかのような台詞を乱発して、卑下する。
『……また言ったね』
だから私は、「俺なんか」は使わないでって注意した。ネガティブなものを見続けるのは私にとってもあまり良くはないし、何よりゆうちゃんの為になると思った。
彼はもっと自信を持つべきだと思う。
自分を卑下するあまり、魅力が伝わってこない。それが災いして、人に間違った印象を与える。
『ごめん。気を付ける。』
『でもさ、俺だってこうしたいわけじゃない。何回か言ってるかもしれないけど、信じられないんだ。信じられないから、保険をかける。それはわかって欲しい。』
━━そう、そしてこれもゆうちゃんの悪いとこ。
過去を言い訳にして、今から逃げる。
彼の辛い過去は知ってる。それを話すことをずっと躊躇っていて、話すこと自体も辛かったこともよくわかってる。
それでも私に話したのは、彼が私を少なからず信じていたからだと思う。そして覚悟を決めたからだと思う。
私は鈍感じゃない。かなり察しが良い方だと自負してる。ゆうちゃんの気持ちには、とっくに気付いていた。
だから、ゆうちゃんには変わって欲しかった。
『うん、わかってる。ごめんね。』
なんで私が謝るのか、全くわからない。
わからないけど、ここは謝るべきだということは何故かわかった。
それはきっと、似てるから。
私とゆうちゃんは全然違う。正直言って、真反対だと思う。
でも一部、本当に極一部似てるところがある。そこは認めるしかない。
だから私は、そんなゆうちゃんに変わって欲しい。変わる勇気を持って欲しい。
ゆうちゃんには何度も助けてもらった。
何も言わずに、いつも通り意味わからない冗談を言って和ませてくれる。いつも通りの空間を作ってくれる。
それは事実だし、とても感謝してる。
でもね、それでもやっぱり……だよ。
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