第23話 幼馴染に愚痴る
フマムュの教育が上手くいかない事を、ここ最近ずっと相談相手になって貰いっ放しの優陽へと、放課後に甘味を与えつつ詳細をぼかしながら伝えてみた。
「はぁ~……なんていうか、クールな家政婦さんだね、その人」
何処をどう受け取れば、今の話からそういう感想が出てくるのかと、少し悩んでしまう。
「クール、とはちょっと違うような。本当は乱暴な感じだし、ちょっと抜けているし」
ここに居ないことをいい事に、正面切っては言えない事を言ってみると、ストレスが溜まっていたのか少しだけ気分がすっとした。
「それでさ、結局如何したいの?」
「如何したいって、何が?」
「だから何に困って、相談しているのかって話。そのフマちゃんにちゃんと勉強してもらいたいのか、それともメイドさんとフマちゃんが仲良くなって欲しいのか。どっち?」
「それは勿論……」
勇者へのかませ犬にさせない為に、フマムュのステータス上げは必須条件。
それには身体能力が高いチッテッキュの協力が必要不可欠。
何せ運動能力は現段階でフマムュの方が、現代高校生平均値の紡玖より上回りつつあり、遊びでも紡玖の方が振り回されっぱなしで、情けない事に当て馬にもなっていない。
つまりはどっちも大切なために、断言しようとした言葉に言い淀む結果になってしまったのである。
「じゃあ今からその二つをいっぺんに解決する方法を教えて進ぜよう」
紡玖が悩んでいる様子を見たからか、優陽は顔に突きつけるようにして一本の指を伸ばす。
「喧嘩させなさい」
「……俺の耳が壊れたのかな。何か喧嘩って言葉が聞こえたような?」
冗談かと思ったら優陽の目が本気なので、思わず二人の喧嘩の様子を思い描いてみると、チッテッキュがアームロックでフマムュを泣かせている光景が。
「いやいやいや。それは無い、いや無しだろ!」
「何を想像したか知らないけど、何も殴り合いをしろって言っているわけじゃないの。何かしらで、フマちゃんとメイドさんが本気になる状況を作り出して欲しいって事。雨降って地固まるって言うでしょ?」
「いや、それでも大人と子供だと……」
言いながらふと手で触れたのはスマホ。思い出すのは二人のステータス値の開き。
仮にチッテッキュが本気になったら、文字通りの赤子の手を捻る以前の、巨象の前の蟻に等しいとしか言い様が無い。
「何も身体的なものに限ったことじゃなくて。ゲームでも何でもいいけど、フマちゃんが一番得意な事で勝負するのが良いわね。そうすれば勝っても負けても後腐れないと思うし」
「……それも経験談ってやつだったり?」
「そうだよ。いやー、ウチの兄弟ってヤンチャばっかりだから、喧嘩が絶えなくて~」
特に一番下の弟が生意気過ぎてと、何故かシャドーボクシングをし始めた。
以外に鋭い拳の軌跡に喧嘩慣れしてそうだと思うと同時に、こんな風にフマムュがなって欲しくは無いなと願わずには居られない。
「もうちょっと穏便な方法は無い?」
「穏便かどうかは分からないけど、共通の敵を作り出すってのもありだけど。その場合だと……」
あの屋敷内の人物的に、その役目を負うのは紡玖だけ。
無論、そんなのは真っ平御免なので――
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