第27話 悪魔の勧誘と圧倒的力

ルシファーは余裕の素振りをミカエルに見せている。そして、圧倒されるアマノエル。自分なんかがやれるのかと言う気持ちでいっぱいだ。そもそも自分を指名したミカエルに疑問さえ感じる。過信し過ぎではないかと。しかし期待されているからにはやるしかない。そうやって今までやってきた、乗り越えてきた。内なる力を今発揮するべきだ。そう意気込み覚悟を決める。

その様子をみたミカエルが、一言だけ声をかけた


「すまないな、こんなことに巻き込んで。だが私はお前を信じている。頼んだぞ。私が隙を作る、そしてお前は浄化の力をお見舞いしてやれ」

「はい...がんばってみます」


武器を構えるミカエルとアマノエル。まずはミカエルが先制する。赤色の剣で斬りかかりながら魔法の炎で攻撃する。だがルシファーは片手で受け止めるだけでなく、炎さえも軽く吹き飛ばした。


(なんだ...こいつのパワーは...)


何度も斬りかかるが傷一つ与えることもできない。ルシファーは涼しい顔で立っている...ミカエルが隙を作ることができずにいる。だが諦めず違う攻撃方法を試みる。そしてアマノエルも、見ているだけではなく氷魔法で援護する。だが全て弾かれてしまう。


「何度やっても無駄だ。見ろ、この圧倒的パワーを!これ神を殺すことも容易いだろう!」

「くっ...これほどまでとは...」


(だが、浄化の力であれば...そうだ)


何かを思いついたミカエル。そして、またルシファーに斬りかかりにいく。


「ふんっまたそれか、無駄だといいうのに」


ルシファーは鼻で笑い、身軽に避ける。だがミカエルは何度も斬り掛かる...何かを呟きながら。


「ほぅ剣を振りながら同時に詠唱か、やるではないか」


長い詠唱が終わる頃、ミカエルはルシファーに大振りに剣を振る。見え見えの攻撃で、ルシファーであれば簡単に避けることができるだろう。

そんな攻撃をルシファーはあえて素手で受け止めた。そして、無防備なミカエルに黒い波動を放った。ミカエルはその波動に飲み込まれ、姿が見えなくなる。


しかし、その瞬間ルシファーを囲む火柱が現れた。

ミカエルの魔法だろう。そによりアマノエルはミカエルが無事だということを確認し安堵する。


火柱は次第に大きくなりミカエルごとルシファーを囲った。ルシファーはこの程度の炎を消し去ることくらい簡単なことだが、アマノエルはその隙を逃さなかった。


(悪魔はだれしも苦しんでいた...貴方もそうなのなら、私の力で解放してあげたい!)


アマノエルはそう祈った。そして、ミカエルを巻き添えに力を放った。天使には浄化の力が効かないことはわかっていたからだ。


「パージ!」


アマノエルの放つパージは炎をも貫通し、ルシファーとミカエルに目掛けて当たる。


「なにっ」


慢心故に油断したルシファーは咄嗟に火柱をかき消し脱出を試みるが、遅かった。脱出はできたものの右腕に光を浴びた。


「うおおおおぉぉぉぉぉ...これは、女神の...」


光が当たった薄黒かった右腕は天使長時代のころの光り輝く腕に戻った。堕天使になったルシファーにとって光は天敵、毒である。光に戻った腕はやがて体中に侵食しようとしている。だがルシファーを必死に抵抗し、闇をめぐらせる。


「おおぉぉぉ...」


闇が勝り、光に戻った腕もまた黒く染まろうとしている...その時だった。


「魔食いの水晶よ、力を喰らえ!」


アモンが使った魔食いの水晶は光り輝き、ルシファーから力を奪う。ミカエル、アマノエルはアモンの登場に驚きを隠せない。上級悪魔相手にこの短時間で勝負をつけたのかと。


時は遡り、ルシファーとは少し離れた場所でヴァルナードと戦うことになったアモン。上級悪魔と戦うのは初めてで、緊張の汗を流すと同時に、メタトロンの特別コースを乗り越えた成果を出すチャンスだとポジティブな気持ちも持っているようだ。

ヴァルナードはアモンに丁寧に一礼し、一言挨拶をした。


「お初にお目にかかります。ワタクシは魔王サタン様の忠実なる下僕、ヴァルナードと申します。以後お見知りおきを」

「お、おう...悪魔にしては礼儀正しいのな。俺はアモンだ」


「アモン様でございますね。覚えておきましょう。早速ですが貴方にお願いがございまして...」

「悪魔にお願いされることなんかないぞ」


「こちら側に来る気はないですか?」

「は...?何を言ってやがる。そんな気微塵もあるわけがないだろ」


「そうですか...それは残念です。素質があると思ったのですが...それに貴方、少し染まってらっしゃいますね?」

「...どういうことだ」


「言い方が悪ぅございましたね。堕天使とまでは言いませんが、それに近い状態になってらっしゃいますね?」

「...それがどうした。それでも俺がやることは変わらねえ」


「そうですか、では...」


ついに戦うことになるであろう。そう思いアモンは武器を構える。が、一向に向かってこないヴァルナード。


「ではワタクシに協力していただきたい。貴方たちにとっても悪い話ではないはずです」

「協力だと?」


「ええ、サタン様...いえ、あのルシファーを倒す協力をしていただきたいのです」

「お前あいつの部下じゃないのかよ!...ていうか、あれがルシファーだって?!」


「くくくくく...」


顔を手でおさえて静かに笑うヴァルナード。笑い声は次第に大きくなっていく。そして、本性を表す...


「あーははははははははははは!」

「なんだこいつ...様子が...」


「そうデス。マジで、ガチで、アイツは遥か昔に天使の頂点として君臨していたが黒く染まり、今では悪魔の王だナンて...ナンて笑える話なの!ギャハハハハハハハハハハハハハハハ」


暫く笑い続け、笑い終えると指で涙を拭いてアモンに話を続ける。


「ワケあってあの方の絶望する顔を是非とも拝みたいと思っている所存ナンデス。アナタ、ワタクシと同じ様な道具持ってらっしゃいますね♪アナタのソレと、ワタクシのコレで、アイツの強力なパワーを弱体化し、ヘナヘナのヨワヨワにしたところを倒すぅ!何年も貯め続けた力が一瞬にしてパァ、計画も全てバイバイ〜ってことになったら、どんな顔してくれるンでしょうねェ!」


「歪んでやがる...」

「なんとでも、ワタクシはそれが果たされればいいんですから!どうです?アナタ達にメリットしかないハズです!悪い話でもないでしょう!」


「...まぁ、な」

「はぁい、成立〜♪デハデハ早速ですが取り掛かるとしましょう!」


ルンルン気分でルシファーにバレずに向かうヴァルナード。アモンも悪魔の協力を得るなど納得はいかないが、協力することになる。


そして、時は戻り、アモンが魔食いの水晶でルシファーの魔力を吸い取る。


「ぐぬぅ...小賢しい小バエが!そのような玩具で...」


とてつもない脱力感に襲われる。全身から魔力と、力まで失われているようだ。おそらく魔食いの水晶の能力と、アモンが唯一使える魔法、アブソープション...これも重ねて使っているのだろう。

更に、影からヴァルナードもルシファーの魔力を奪っているのだ。

光の侵食、そして奪われる力と魔力...魔力吸収くらいなら簡単に抑えれるだろうが、光の侵食が強く、それどころでは無いのだ。


まずいと思ったルシファーは強行手段に出ることにした。全魔力を使い、闇を全身から一時的に放ったのだ。闇は一瞬にして広がり、周囲のものを吹き飛ばし破壊した。無論、ミカエルやアマノエル、アモンもだ。闇に呑まれた天使達は少しずつ蝕まれていく。だがアモンは、それでもルシファーの魔力と力を吸い続けていた。

それに気づいたルシファーはアモンに近寄り、倒れているアモンの背中を踏みつけた。


「ぐあっ」


背骨が砕けたような鈍い音が響き口から血反吐を吐く。それでもなお力を奪い続ける。しつこさに苛立ちをおぼえたルシファーは、闇の波動を至近距離でぶつけた。アモンは吹き飛んだあと何度も転がる。

そしてアモンはとうとう気絶してしまった。

それにより光を抑えるのに専念でき、腕は元の薄黒い色に戻すことが出来た。


ルシファーが次に狙いを定めたのはアマノエルだ。

アマノエルは今、闇により身体中を蝕まれている。だがここでやられるわけにはいかない。アマノエルは力を振り絞り、立つ。今にも気を失いそうだ。浄化の力で抑えているが、闇が強力すぎるのだ。


「ほぉ、私の闇をくらって立てるか。だが満身創痍とはこのことだな。今楽にしてやる!」


闇で剣の形を作り、アマノエルに斬りかかる。アマノエルは思わず目を閉じてしまう。アマノエルの首に刃が届こうとしたその時、


「待ちなさい、ルシファー」


ルシファーはピタリと剣を止めた。声を発したのは

アマノエルだった。だが、雰囲気が違う。そしてアマノエルから光が発せられている。


「貴様...誰だ」


ルシファーを追い込んだが、一瞬にして逆転された天使達。そして雰囲気の違うアマノエルとは一体...




























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