第22話 暗闇世界とアーリィの私怨

アマノエルはメタトロンに部屋を案内され、待機するように言われていた。和室の中心で緊張した様子でソワソワしていた。

一方、その部屋の外では何者かが近づいていた。それに気づいたメタトロンは何者かを呼び止める。


「あ?なんだてめぇ。...はっおもしれぇ!入れ。」


「・・・」


ソワソワしていたアマノエルは、これではいけないと思い、落ち着かせるために目を閉じる。そして膝を付き、祈りのポーズをとった。


「創造主よ、我らにご加護をお与えください...」


祈りを終えると、急にアマノエルが居る部屋の照明が全て消えた。


「え、なに?」


バタンっと扉を閉める音が聞こえた気がした。部屋は真っ暗になったため、アマノエルは手探りで壁を探すことにした。しかし、壁は一向に見つかる気配がない。どうしてと疑問に思っていると、自分自身は見えているということに気がついた。


「私は...見える...これってもう試練は始まっているってことなのかな」


アマノエルはそんな何も無い暗闇を暫く彷徨っていると、見知った人物が前から歩いてきた。


「えっあーちゃん?!何でここに...」

「アマノエル、そんなのはどうでもいいわ。決着をつけましょう」

「け、決着...?何を言っているの?」

「あーしの恨み、受けてもらうわ」

「恨み...?何を言っているか分からないよ。どうして戦わないといけないの?」

「分からないならいいわ。戦う気がないなら、死ぬだけよ」


「...メタトロン様。これが私の試練だと言うのね。姿形を真似たところで私は惑わされない!あーちゃんはこんな人じゃない!」

「何をブツブツと言っているの?構えなさい、アマノエル!」


短剣同士でぶつかり合う。その最中、アマノエルは目にする。前髪で隠れていた右目の白目部分が黒く、瞳孔は獣のように鋭くなっていた。

アマノエルは見た事ある。これは悪魔の目玉。メタトロンが何故親友のアーリィをこんな姿で出現させ、戦わせているのか疑問だが、戦うしかない。

何も無いこの空間に金属音が鳴り響く。何度も何度も。やがて二人は息を切らして立ち止まる。


「はぁ...はぁ。やるじゃないアマノエル。でもこれからが...」


何か言い切る前に、アーリィは頭がガクッと下がり、固まってしまった。


「なに?どうしたの?」


アマノエルが心配していると、ドクンっとアマノエルにも聞こえるような大きさで心臓の音のような音が聞こえた。するとアーリィが突然苦しみ出した。


「ぐ...ああああああああああああ」


アーリィは激しい頭痛に襲われ頭を抱えながら地面に頭を叩きつける姿はなんとも痛々しい。頭を叩きつける度に、アーリィの羽は少しずつ、黒に染っていく。

アマノエルは見てられないと思い手で顔を覆おうとするが、偽物とわかっていながらも助けたいと思った。

アマノエルはアーリィの元に駆け寄り、抱きしめようとした。


だが、アーリィは苦しみながらアマノエルの手をパシンと払った


「同情...されるくらいなら...死んだ...ほう...が、まし...よ。お前に...何がわかる!」

「あーちゃん...。例え偽物でも、私は助けたい。試練とか関係ない!」


アーリィは暴れるがそれでもアマノエルは抱きしめる。


「苦しいね。怖いね。私には貴女に何があったか分からないけど、苦しみは分かるよ。その苦しみから、今解放してあげる」

「何を...」


「私のせいで苦しんでいるのなら、苦しみから解放する事で償いましょう...浄化の力(パージ)」


アマノエルから凄まじい光が放たれる。暗闇の空間が全て、白に変わる。アーリィは眩しくて目を閉じてしまう。気がつくと頭痛は消えていた。


「あれ...あーし、何が憎かったんだっけ...。まぁいっか。なんか凄く...疲れた...」


朧気に呟いているアーリィだが、黒く染っていた部分はみるみる消えていく。そして白へ、戻る。


アマノエルはハッと目を覚ますと、和室の部屋に戻っていた。

一瞬さっきまでの出来事が夢だったのではないかと疑ったが、そうでは無いことが分かった。それは、目の前にメタトロンが立っていたからだ。


「予定していない試練だったがどうだ?ちと簡単すぎたか?」

「...?何のことかわかりませんが酷いですよ!親友の天使をあんな姿に!」

「あ?てめぇこそ何言ってんだ?まぁいっか、何にせよクリアだ。もしもの足りなければ次用意するがどうだ」

「いえ...遠慮しときます。なんか精神的に疲れました」

「そうか、んじゃ俺様の屋敷でしっかり休むんだな!」

「はい。ありがとうございます。あ、サンダルフォンさんやアモンはどうなりました?」

「サンダルフォンは無事合格だ。だが、アモンとやらは...」

「え、まさか...」

「かろうじて生きてはいるぞ」

「かろうじて...」


無事試練を終えたアマノエルだがかろうじて生きているというアモンが心配で安心して体を休めることができないでいた。

その後サンダルフォンと合流し、アモンの帰りを信じて待つことにした。


一方アーリィはぼーっとしながら自宅に帰り、自宅のベッドで転がりながら色々と思い出そうとしていた。


「いままで何してたっけ...。思い出せない。そうだ、母さんが牢獄に...。出世して、偉くなってそして母さんを...あれ、なんでミカエル様のところに配属されなかったんだっけ...。その予定だったはずなのに...なんで、なんでだっけ...」


堕天使化しつつあったアーリィはアマノエルの浄化の力によって消え去った。だが堕天使化した根本的解決はされておらず、アマノエルもアーリィのことを全く気づいていない。

考えすぎて疲れたアーリィはそのまま眠ることとなった。

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