第17話 力の正体と魔道総司令長

「...きろ...おきろ。アマノエル」


アマノエルは聞き慣れた声で起こされる。伸びをしながらあくびをし、目を擦る。するとベッドの横にミカエルが立っている。アマノエルは一気に目が覚めて寝癖を整えるように髪を手で撫でた。これでよし、と思った瞬間、アホ毛がぴょこんと立った。

ミカエルはそれに構わずアマノエルに話しかけた。


「アマノエル、体調はもういいか?」

「はい...ですが、あの後どうなったのですか?あの竜の悪魔...リョウに灼熱の炎で...私」

「そうか...やはり覚えていないか。お前、自分の力であいつを倒したんだぞ」

「う、うそ?!でもそんな記憶が...」

「しゃあねえ、ある人を呼んである。その人の話を聞いてみよう。もうそろそろ来ると思うが」

「ある人?」

「あぁ、それはな」


コンコンコン、と病室のドアが3回ノックされる音が聞こえた。ミカエルが入れ、というと、初老の大きな羽を生やした女天使が入ってきた。アマノエルはこの人を見たことは無い...無いが、何処かで会ったことがある気がした。


「ふぇふぇふぇ...これが話のお嬢さんかえ。初めましての。わしぁ魔道総司令長パラトエルだよ。」


魔道総司令長...聞いたことがある。魔道士隊を率いる最高権力者。そして魔道の研究で数々の実績を持ち、新たな魔法の開発をしている。噂では魔力量だけをみれば7大天使をも凌駕すると言われている。そんな人が何故こんな所へ...そうアマノエルが思っていると、ミカエルが説明を始めた。


「この人は私が呼んだのだ。それは、あの牢屋に残ったお前の魔力を元にお前の力の解析をしてもらったからだ。パラトエル、結果は出たか」

「ふぇふぇ...わし誰と心得る?解析できないものなんてないよ。勿論結果は出ましたとも。」

「そうか、さすがだな。なら早速結果を聞こうか」

「その前におぬし、回復魔法は使えるかの?」

「は、はい。治癒魔法と解毒呪文を...少し」

「ふむ、少しかの。では呪いや麻痺、猛毒...何でもいいが意図せず状態異常が治ったことは?」

「それは...」


アマノエルは、準々決勝前の出来事を思い出した。


「あります...1度だけ。」

「お主の力...おそらく”浄化”の力のじゃの」

「じょ、浄化...ですか?」

「そうじゃ。長年見てきたが浄化の力を持っている天使はお主を除いて...たった1人。」

「たった...1人...。それは」

「今は亡き女神様じゃて」


それを聞いた途端、ミカエルが眉をあげた。


「女神様は昔、下界を1人で見守ってくださっていた方での。わしが生まれるよりも前から長い間その役割を果たしてきたのじゃ。じゃがある日、下界の人間が滅ぼされたようじゃのぉ。女神様はそれはそれは悲しかったじゃろう。1人1人、我が子のように見守っていたようじゃったしの...。そして女神様は我らが創造主に事実と気持ちを伝えに行かれた。...じゃが、それ以来女神様が戻ってくることは無かった。一体女神様の身に何があったのか...わしにすら分からんのじゃ。」


「...創造主」


ミカエルは、魔王サタンとなったルシファーの言葉を思い出した。ルシファーを黒に染めた原因。まさか女神も...。

パラトエルは話を休まず続ける。


「そしておぬし...アマノエルから女神様と似たような魔力を解析できた。浄化の力はとても強力での、体の異常を治したり呪いを消し去ることができるのじゃ。」

「そういや、リョウっつー悪魔を消し去っていたが」

「ふぇふぇふぇ...それは面白い。おそらく悪魔をも浄化したのじゃろう」

「すげえなそれは...(もしかしたら、ルシファーも...)」

「まだ完全に目覚めてないようじゃが、少しずつ我がものとできるじゃろうて。ま、頑張ることじゃな」

「パラトエル、解析ご苦労だった。自宅まで私が送ろう」

「ふぇふぇふぇ。それはありがたいのぉ。ではまたの、アマノエルよ」


病室から出ていこうとするミカエルとパラトエル。アマノエルは知らされる真実に脳が追いついていなかった。だが不意にこんな言葉を発してしまった


「パラトエル...少し老けましたね。でも元気でよかった」

「ん?おぬし、何か言ったかの?」

「え?私今なにを...」

「...?」

「いえ、なんでもないです」


なんだったのか、と思いつつもパラトエルは病室を後にした。

アマノエルの力の正体、浄化の力を知ったアマノエル。何故その力を有しているのか、それはまだ不明である。パラトエルを送ったミカエルはアマノエルに挨拶だけし、溜まった仕事をため息を吐きながらすることになるのであった。

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