第16話 アマノエルの夢と友達想いの天使
リョウを倒したアマノエル。その後気絶し、ミカエルによって病室に運ばれていた。未だに目覚めることは無い。完治とは言えないものの大分楽になったアモンが心配になり、病室に来ていた。アマノエルは、夢を見ている。
――真っ白だ。何も無い...。でも、何でだろう、懐かしい感じがする。こんなとこ、来たこともないのに。あぁそっか、夢を見ているのか。でも...意識的に動ける。明晰夢ってやつなのかな。あれ、でもなんで寝ているのだろう。
...そうだ、私は
「?!」
急に目の前が光り始めた。この真っ白な空間よりも眩しい。何が起こって...。え、誰だろう...いつの間にか人が。いや、天使だ。女の人...この顔...見たことは無い。誰だろう
「お前が俺を解放してくれたのか」
解放...?なんの事だろう。
「なんの事?」
「そうか、自覚ねぇならいいんだ。でも、あれだ...ありがとよ」
何かをしてあげた記憶もないのにお礼を言われるのは変な感じだな。でも悪い気はしない。
「またどっかで会おうぜ。そしたら、友達になってくれや」
また目の前が光って、気がついたら女の天使は消えていた。何だったんだろう。そろそろ私も目を...あれ、意識が...遠
...まだ冷めない。ここは...天界?女の子が二人...。あ、さっきの天使さんがいる。もう一人はさっきの天使さんの友達かな?ふふ、楽しそう。仲良いんだなぁ。私とあーちゃんみたい。何の話しているのだろうか。あー、恋話で盛り上がってるみたい。好きな人ねえ、私もあーちゃんから聞かれたことあったけど返答に困ったな。好きとかちょっとわからないな。ほら、さっきの天使さんも困ってる、ふふ。
あれ...急に何か険悪な雰囲気に...ちょっと、喧嘩はやめ...触れられない...。困ったな。あ...友達さんいっちゃった...。天使さん達、何があったんだろ。追いかけてみ...あぁ、また意識が遠く...
...さっきの続きだ。こきは教室かな?友達さん...泣いてる。いっぱい泣いてる。目も腫れちゃって...。見てられないな。男勝りな天使さんは...気まずそう。友達さん、独りだ。あれからずっと...。友達他にいないのかな...。独りで泣きながらご飯食べてる...。
えっ!水をかけられてる。ひどい...。教室のみんな笑ってる。なんでこんな酷いことを。天使さんは...噛み締めてる。あ、立ち上がった。よかった、みんなを止め...あ、友達さん飛び出しちゃった...。追いかけてみよう。あぁ、声をかけてやれないのが悔しいな。何処に行くのかな。ここは...天界と魔界の狭間...?まさか!魔界の門に近づいて...危ない!悪魔が...逃げて!ん...?天使さん!追いかけてきてくれたんだ!友達さんは...うっ、首を...跳ねられ...。間に合わなかった...。早く覚めて欲しい。どうしてこんな夢を...。
天使さん...怒ってる。すごく、泣きながら怒ってる...。悪魔を...殴って、殴って殴って、いっぱい殴ってる...。手から血が出ても。悪魔が死んでも、まだ殴ってる。友達を殺した悪魔を、そして自分に激怒している。友達の首を抱え...謝ってる。
「裏切り...者。あなたとなんか...友達に、ならなければ...よかった。私の人生...最、悪...ひどすぎる。ひどい...ひどい...ひど............全部あなたのせい...」
友達さんは最期にそう言った。
「...............うるせぇ」
もう、夢なら早く覚めて欲しい。これ以上見たくない。知りたくもない。早く
「俺のせいだ...?独りでいるお前に手を差し伸べたのは誰だ!イジメられてるてめぇを救ったのは俺だろ!感謝すべきだろうが!何自分の最悪な人生を俺に押し付けてんじゃねえ!俺様はお前の」
姿がみるみる変わっている...体が段々大きくなっている。鱗と棘が生えてきている...尻尾も...顔が...これはまるで、魔獣...
あぁ、意識が遠のく。やっと覚めるのかな。よかった。
...
「アマノエル、貴女という優しい天使に...私の...が...いで...よかった」
...
......
「ん〜...なんか凄い夢見てた気がするけど...なんだっけ。」
夕暮れ時、長い長い夢から覚めたアマノエル。夢の内容を思い出そうとしたが思い出せないが何故か既視感を感じた。前にも同じような事があったような。考えても仕方が無いので考えるのをやめようと思っていたその時、アモンがベッドに突っ伏して寝ているのに気がついた。ヨダレ垂らしながら寝ないでよ、と思ったが心配してきてくれてたのだと少し感謝した。夢の内容に気を取られていて忘れていたが、あの後どうなったのか気になった。アマノエルはリョウの猛毒にやられ、炎を吐かれたあとの記憶が無い。きっとミカエルが助けに来てくれたのだろうと思い、お礼と謝罪の言葉を言うため病室で待つことにした...
「私の...が...いで...よかった」
一瞬頭の中で途切れ途切れの声が過ぎった。これまた既視感を感じつつも、天井を眺めながら休むことにした。
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