第9話 準々決勝準備と突然の腹痛

対人戦の第一回戦を完勝したアマノエルとアモン。その後次々に勝利していき、ついに決勝。三回戦以降の勝者はわからないようになっており、次の相手が知れないようになっているシステムである。そのため対戦前に相手の情報を入手し、対策する事ができない。だからあらゆる準備をする必要がある。

流石のアモンもウォーミングアップをしている。気は抜けない。

そういえば三回戦目を勝利したあと、アマノエルはアーリィと会っていた。なんでもアーリィがドリンクの差し入れをしてくれていたのだ。本番前に飲むと落ち着く効果があるらしい。そして味も美味しい。

アマノエルはとても緊張していたため、言われたとおり頂いたドリンクを口にする。口の中でいくつものフルーツの味が広がり甘さがとける


「美味し...うん?」


確かに美味しいのだが、後味が少し変な味がする。言葉で表しにくいが強いて言うなら薬のような独特な味がする。まあ、落ち着かせる効果があると言っていたので栄養ドリンクのようにクセのある味がするのだろう。そう思いドリンクを飲み干した。

決勝戦までは時間がある。アモンと最低限の作戦を立てる。その後は武器の手入れとリラックスする時間にした。


準々決勝開始の五分前、アモンがアマノエルと気合い入れをしていた。


「よーし、準々決勝も楽々と勝って優勝してやろうぜ!俺は...優勝したい!そうすればミカエル様に認めてもらいそして...」


これは少し長くなりそうだ。相変わらずの強欲っぷりでアマノエルは、はいはいと軽くあしらう

しかしアモンの言う通りここまできたら優勝はしたい。アマノエルも気合いを入れるため、声を発する。


「アモン、足を引っ張ったら許さないんだからね!ここまで来たら全然でやるわよ!」


「お前...そういうキャラじゃないだろ」


たまに、アマノエルは柄でもないセリフを吐く。彼女なりの最大限のボケなのだろうか。アモンは思わずツッコミをいれた。しかしボケだとしても分かりにくい上にツッコミにくい。仲のいいアーリィかアモンくらいだろう。大体の人はツッコめばいいのかわからず苦笑いをするのだ。

さて間もなく準々決勝が開始される。アマノエルとアモンは闘技場の入口へと向かおうとする...が、アマノエルが急にお腹を抑え地面に座り込んだ


「アマノエル?!どうした!」


アモンがアマノエルに駆け寄り声をかける。お腹が苦しそうで腹痛だろうか。とりあえず自分が常備している水を飲ませた。背中をさすってあげているとアマノエルは少しだけ落ち着いたのかフラフラと立ち上がり、もう大丈夫と言った。明らかに大丈夫ではない。準々決勝を辞退する訳にはいかないのだろう...。アマノエルは迷惑をかけたくない、せっかくここまで来たのに、そう言う気持ちでいっぱいだろう。

しかし原因が分からない。これ程の腹痛は経験したことがない。

試合開始までもう時間が無い。間に合わなければ棄権とみなされ脱落である。もうダメかもしれない

アマノエルはアモンにお腹を抑えながら謝った


「ごめんねアモン...私のせいで...ごめんなさい」


お腹の痛みと罪悪感で体を震わせた。顔を地面に向け服をぎゅっと握っている。そして一粒の涙がこぼれ落ちた。

アモンはため息を吐き、頭をかいたあとアマノエルに手を差し伸べて言った。


「ほら、立て。ミカエル様の期待に応えなくていいのか?こんな小石に躓いてる場合かよ。お前はどんな苦難でもお前自身の力で乗り越えて来ただろ!俺だって...お前の力、認めてるんだからな」


アモンのお言葉でアマノエルがアモンとミカエル、アーリィから言われたことを思い出した。


(...後ろにいるお前なら何となくわかるんじゃないか?)

(...はい、なんとなくですけど)

(...自分で気づくことも大切だ)

(...アマちゃんならやっていけるって〜今までもそうだったでしょ?)


やっぱり自分では分からない。アモンは気づいている様だったがいくら考えても分からない。でも


「でも...アモンの言う通り...諦めてなんかられない...」


アモンの手をつかみ、立ち上がろうとする。痛い。力を入れると激痛が走るようだ。痛みに耐えながら、震えながら言った


「私は...私は...」


ふとミカエル様の言葉が脳裏に過ぎった


(...期待しているぞ)


そうだ、アモンの言う通り期待に応えなくては。腹痛くらいで諦めてたまるものか。日々鍛錬を頑張ってきた、ここで成果をあげなくてどうする。最後に力を思いっきり入れながら叫んだ


「私は、諦めない!!」


突如、アマノエルの身体から黄色の光が放たれる。誰しも見とれてしまいそうな光。暫くすると消えてなくなった。さっきのはなんだったのか...アマノエル自身もわかっていない。そして気づいた。驚きのあまり思わず声が出てしまった


「あれ、お腹...痛くない!」


アモンはその様子を見ても驚かなかったむしろ、そうこなくっちゃと言う顔をしている。アモンは今度はアマノエルの腕を掴み、引っ張りながら走りだした


「もう時間がねえ!急ぐぞアマノエル!」

「あぁ、ちょっと!」


闘技場の入口に駆け込み、なんとか間に合った。

息を整えている間に闘技場の門が開かれる。

準々決勝が開始される。相手は...

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