第8話 対人戦と完璧な戦略
二対二の対人戦当日。一回戦まで時間があるため、控え室で待機している。アモンはというと...寝ている。
初戦の前というのは大半の人は作戦を立てたりするものだ。アマノエルは分かりやすく頭を抱えることはなしなかった。何故なら長い付き合いで諦めにはいっているのだ。いわゆる悟りを開いている。
仕方が無いのでアマノエルは緊張をほぐすため読書をしている。気ままに生きているアモンと違い、緊張するタイプなのだ。対人戦は天使学校で体験しているが、誰かとペアになり、作戦を立てて共闘するのは初めてのことだ。悪魔討伐は部隊で戦わねばならない。たった二人でさえ戦う事が出来なければ悪魔討伐など以ての外である。
さて、もうそろそろ一回戦が始まる。戦いの準備をお願いしますというアナウンスが流れ、アマノエルはアモンを叩き起した。駆け足で闘技場に向かい、準備をする。アマノエルの武器は両手杖。魔法を得意とする天使が使うもので、魔力増強効果がある。上等な杖であれば魔法を使えない者でも杖だけで魔法を放てるものもある。アマノエルはアモンのサポートとする作戦なので両手杖を選んだのであろう。
一方アモンの武器はというと、両手剣である。大剣とも言われている。大きい刃を持つ剣で両手で持ち振り回す。片手剣と違い、動きは遅いが威力とリーチが長い。
準備を終え、対戦相手と対面する。相手は同じミカエル部隊の男天使二名。
初めにアナウンサーがルール説明をする。ルールはまず、当たり前だが殺してはいけない。命を奪おうとした場合、七大天使が止めに入る。そして失格となりペナルティもあるため、リスクしかない。もう一つのルールは勝ち負けについてだ。勝ち負けは審判が判断する。その場合、審判がコールする。
審判がバトル開始の宣言をする。3、2、1バトル開始とともにゴングが闘技場中に響き渡る
瞬間、アモンが力任せに突撃する
「おっしゃあ!先ずはお前からだ!」
アマノエルは相手の様子を伺っていると、武器を構えていない。その様子を不審に思い、何か企んでいると考えた。なのでアマノエルはアモンを止めようとするが口では無理だということは確信している。
少し強引になるが魔法で止めに入る
「レストリツィオーネ!」
両手杖の先の部分にクリスタルのようなものが埋め込まれているのだが、そこから糸のようなものが勢いよく放出される。そしてアモンの首に巻き付き動きを止める
「うっ何すんだアマノエル!」
「考え無しに突撃し過ぎ!少しは様子を見て!」
するとアモンの目の前の地面が爆発した。対戦相手の一人が独り言をした気がした。やはりなにか企んでいた。アモンが縛られてもなお動こうとするので後ろに引っ張った。すると首が締まり地面に倒れてしまった。武器は手から離れてしまった。相手はチャンスだと思っただろう。倒れたアモンに向かって一人、もう一人はアマノエルに向かっていく。
アモンに向かった相手が
「ははっ!俺らの部隊の問題児が!やはり馬鹿だぜ!仲間割れしてるとこ残念だが勝たせてもらう!」
アマノエルに向かった相手は
「魔法使いか...間合いに入れば無力だ!」
誰もがアモンとアマノエルの負けを確信したことだろう...だが、
「アモン!今よ」
「おーけい!任せとけ」
アマノエルはわざと軽くしかしばっていなかった。アモンが倒れたのもわざとである。相手の隙を作るための戦略である。
アモンは素早く起き上がり、トドメを指すことに専念して無防備な相手の顎を殴りつけた。一発KO...地面に倒れ、意識を失った。
一方、魔法発動中ですきができたアマノエルは攻撃されようとしている。だが...
「残念、こっちはフェイクよ」
なんと短剣を取り出し敵の攻撃を受け流した。両手杖...魔法使いが使うものであるため物理攻撃が苦手であるため油断させる。さらに袖の大きいローブをまとうことで腰の短剣を隠す。アマノエルはアモンのように攻撃タイプではないが苦手と言う訳でもない。苦手な部分を補う鍛錬も対策もしている。
その点で相手より遥かに上回っている。
相手は攻撃を受け流されたのに加えて予想外であったため大きな隙ができた。それをアマノエルは見逃さなかった。そして魔法でトドメをさす
「アイスフリューゲル!」
上級の部類に入る氷魔法。詠唱無しで発動できるのはアークエンジェル(大天使)以上でなければ成せないだろう。
敵の周囲を翼のような氷で凍てつかせた。身動きが取れないところ、アマノエルが首に短剣を突き立てた。
その瞬間カンカンカンっとゴングがなる。アモンとアマノエルの勝利である。見事な戦略と逆転、完全勝利に歓声をあびる。最後に凍りついた対戦相手がアマノエルに話しかける
「完敗だ...だがアークエンジェルでもないのに何故上級魔法を...?」
アマノエルは得意げに笑って答えた
「一ヶ月前から鍛錬に支障出ないくらい少しずつ杖に魔力を込めていたのよ。そして始まる前に術式を完成させてたんだよ。でも私レベルじゃこれが限界だったわね。最初の束縛魔法は束縛魔法に見せかけてたけどあれは道具...上手くいってよかった。対戦お疲れ様でした」
両手を後ろで組んで微笑んだ。そしてアモンの元に戻り、手を合わせてハイタッチした。次の試合までまたしばらく時間があるため、控え室に戻っていく。
二人で初戦の勝利を祝い、疲れをとることだろう。
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