外伝2話 失楽園

神と対面から数年、その間ルシファーは悩まされていた。天使達に真実を公表すべきか、しかしそうすれば悪感情を抱き悪魔にさせてしまうかもしれない。そうすれば自分の手で殺さねばならない。自分が殺すようなものだ。知らないままではそうなることも無く、悪感情を抱き悪魔化する天使も少なくはないがこれまで通りである。悪魔と天使の均衡が崩れれば天界は崩壊してしまう。それは下界も魔界も同じことである。

天使長は悩んだ。天使長ということもあり同等の立場の仲間がいない。完璧な答えを求められ行動せねばならない。話し合える人などいないのだ。

...そうして悩みに悩み、答えを出した。それは...


「神を殺す...天使を、人間を神から解放する。私が、天使長の私が果たさなければならない。同胞達よ、待っていろ。必ず私が...」


ルシファーは湧き出る怒りを抑えながら決意した。

しかし最後に双子の兄弟であるミカエルと話すため、ミカエルを呼び出した。


「天使長、このミカエルただいま参りました。呼び出しとは珍しいですね」


ルシファーに呼び出されたミカエルが天使長室を訪問した。七大天使を集め会議をすることは多々あるが個人的に呼び出すことは珍しい。ミカエルが着くとルシファーが早速話を始める。


「その話し方はいいよ。私達は兄弟なのだから。早速だが頼みを聞いて欲しい。私はしばらくの間留守にする。勿論天使達には秘密だ。最悪戻ってくることもないかもしれない。勝手な頼みではあるが...君にしか頼めないことだ。私がいない間、天使達をまとめて欲しい。私の最初で最初の...頼みだ。私にもしものことがあったら頼んだぞ。」


ルシファーがミカエルに個人的な頼みごとは今までは一度もなかった。ルシファーは常にミカエルの上に立ち常にミカエルの憧れだった。こんなに弱々しく頼むのは柄でもない。

ミカエルはそんなルシファーを何かあったのかと疑問に思ったが、初めての個人的な頼みであったため嬉しい気持ちもあった。だから答えは一つ、ミカエルは顔を縦に振った。するとルシファーは微笑み、ありがとうとお礼をいうのであった。


それから約百年、ルシファーは再び神と会える機会が訪れた。ルシファーの決意は微塵も揺らがない。天使を神から解放する、そのために神を殺す。

神を待つためルシファーはカル・デ・メスで立っている。武器を構え、立っている。武器は天使界で珍しい刀...下界に行った際に天界に輸入したものを改良したもの。魔力にも耐えれるようになっており、軽い上に切れ味も抜群である。

しばらくすると百年前のようにカル・デ・メスに光が降り注ぐ。神が降臨した...その瞬間、ルシファーは攻撃を仕掛けた...

...

...はずだった。


気がつくとルシファーの十二枚もあった羽は...六枚になっていた。ルシファー自身も何が起こったかわからないでいる。しかしそんな場合ではない。六枚の羽では遥か上空を飛び続けることはできない。落ちていく、目の前には憎き創造主を目にしながらも落ちていく。

落ちていくルシファーを見下しながら、創造主が呆れた声で言う


「なんと嘆かわしいことか。天使は余の傑作であると思っていたが天使長がこのようなゴミであったか。であれば天使自体、失敗であるな。排除も検討しておくか。裏切りの天使長よ、貴様は楽園から追放だ。」


その言葉を言うと光は消えていく。

ルシファーは確信した。必ず神を、いつかきっと殺すと。

ルシファーは叫んだ。光が消える前に自分の創造主に怒りを叫んだ。


「我々は駒か、道具か!何のためにお前に従ってきたのか!巫山戯るな!貴様を絶対に許さない!いつか必ず貴様を殺す!そして私が代わりに...!」


ルシファーは落ちながらも、叫び続けた。しかし神はルシファーの言葉を受けることはないだろう。ゴミには興味無い。人間もそれは同じ。神からしたらそれと同じ。ゴミにはもう興味もなにもない。

ルシファーは叫ぶ事に体が変化していっている。

肌は薄暗く、羽が漆黒に染まり、爪や牙が鋭くなっていった。そしてルシファーは...


堕ちた

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