外伝

外伝1話 天使長ルシファー

時代は遡り、ルシファーが天使長であった頃。六枚の漆黒の羽、そして鋭い爪や牙、頭には角が生えかけている。肌の色も薄黒く...はなく、十二枚の純白の羽、頭の上には浮遊する薄透明の金色の輪っか、肌は白く優しい目つきである。

ルシファーは独り、遥か上空にある神の塔「カル・デ・メス」の頂上にいる。神の塔には天使長と許可を得た数名のみが行くことができる。そもそも並の天使が遥か上空まで飛ぶことはできないのだ。

ルシファーは目をつぶり、手を広げている。暫くして目を開けると、独り言をこぼす。


「嗚呼、遂にこの時が来たのですね。我々の創造主との対面。どれ程待ちに待ったことか。創造主は我々のことをどう思っているのだろうか...おっと私としたことが緊張してしまっていたとは...もう少しの時間、落ち着かせるとしよう」


そうしてルシファーは再びを目閉じ落ち着かせ、待つことにした。

暫く経つとルシファーよりも更に天から光が降り注ぐ。すると、声だけが聞こえてくる。


「御苦労、お前が天使の長か。名は何であったか?」


恐らく声の主が創造主なのだろう。ルシファーはすぐに察しがついた。ルシファーはすぐに返事をした。


「お待ちしておりました創造主様。私の名はルシファーでございます。」


この時ルシファーは疑問に思った。何故姿を表さない?何故全知全能である神なのに天使長の名前すらも知らない?と。名乗ったルシファーに対し創造主は話を続ける。


「ふむ。ルシファーであったか。して、余の代わりに天使の統率、悪魔の...天使の不用品の排除は順調のようであるな。」


ルシファーは耳を疑った。今なんと言った?天使を物扱いしただけでなく悪魔が...天使の不用品?

分からないことだらけのルシファーは創造主に疑問を口にする


「恐れながら創造主様、天使の不用品とはどういう意味でございましょうか」


創造主は何が疑問なのかという雰囲気でルシファーにこたえる


「不用品は不用品。余に逆らおうとする愚か者や悪感情を抱く天使、それを不用品と言わずしてなんを言おうか。不用品は悪感情になるよう設定してあるのだよ。天使の使命に悪魔の討伐があるであろう?そういうことだ」


ルシファーは動揺を隠せない。普段であれば怒りも悲しみも隠し冷静な判断をしていただろう。そう天使の前であれば。しかし親同然の創造主から思いもよらぬことを聞いてしまい、さらに自分達がやって来たことは攻撃的になっているとは言え簡潔に言えば同胞殺し。ルシファーは仲間想いのため、より動揺したのだ。

動揺を隠せないルシファーを無視し思い出したかのように創造主が続けてよびかける


「あぁそうだ。下界の人間達も失敗だ。だから心が清い者を残し、滅ぼそうと思う。清い者に言伝し、方舟を造らせ、数ヵ月後世界に大洪水を起こすとしよう。またやがて人類が増えるであろう。そうすれば天使が急増するだろうが、その時には天使長、頼んだぞ。ではまた会おう」


一方的に言葉を告げ、光はおさまった。そこに残ったのは絶望した天使長ただ一人...。

自分勝手だ。創造主はとんでもないやつだ。許せない。少なくともそう思ったであろう。怒りよりも悲しみが大きかった。せっかく会えた創造主が想像とかけはなれており、知りたくない事実を知ってしまった。これからどうすればいい。どう天使達にさせればいい。そんなことばかり考えてしまう。

とりあえず冷静になろうと再び目をとじるのであった。

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