第5話 アマノエルの夢と堕天

アマノエルはその日の鍛錬を終え、疲れを取るため床に就く。意識が朦朧としながらこの前サンダルフォンが消滅させたガーガンダについて考えていた。あの悪魔はどうして一般天使が避難するのを待ってから攻撃してきたのか。あの日からずっと疑問に思っていたのだ。しかし今日の鍛錬もきつく、疲れていたため眠気に耐えきれず眠ってしまった。


・・・その日、アマノエルは夢を見た。起床後、眠気でボーッとしながら夢の内容を思い出していた。何故だかはっきりと覚えている。その内容は...


場所は天界と似ており一人の男がうつっている...黒髪のつんつん頭に目つきの悪い顔。背中には白い羽が二枚生えている。天使だ。その男は心無しかあのガーガンダに似ている気がする。自宅...であろう場所で忙しそうにしている。なにか喋っているようだ。


「はいばあちゃんここに座ってな。だーーも!お前

少しは落ち着け!母さん、ご飯作っといたよ。はいはい妹よ、あとで色々教えてやっから待ってろ。母さんこれ...働いた分のお金。いいって別に。父さんいない分ももっと頑張るから」


どうやら三世帯住宅のようだ。しかし祖父と父親らしき姿はみあたらない。楽しそうに生活しているように見えるが彼の目に下にはクマがすごい。

場面は切り替わり、ここは...訓練施設だろうか。そこで一人、ガーガンダに似ている男が訓練をしている。彼の顔には焦りの表情が見える。汗を全身からたらしながら、手がマメだらけになりながらもなお続けている。すると後ろから五人の天使が近づいてきた。真ん中にいた男が、頑張っている彼に喋りかける


「おいおいまだ特訓してんのか?やめとけ、お前は才能ないんだよ。それ以上やったって無意味なんだよ!それともなにか?お前の妹を連れ去ったやつを追いかけて連れ戻せねえ上に犬死するか?お前らもそう思うよな」


馬鹿にしている男が他の四人に言うと、全員が同意し、必死な彼を大笑いした。彼は堪え、自分をバカにする者たちを無視し自主訓練を続けている。

更に場面が切り替わる。次は...海岸だろうか。そこにガーガンダに似た男、それとその妹が悪魔のような姿をしている男に人質にされた状態で立っている。

彼は妹を返すように泣きついているが悪魔は彼を蹴飛ばした。妹を返して欲しくば金を持ってこいと脅している。でなければ目の前で殺す、と。

彼はお金がない。だが無理やり取り返すことも出来ない。妹の首にはナイフが突きつけられているからだ。悪魔はカウントダウンし始めた。どちらか決めろ、と。カウントダウンが終えても彼は答えを出せなかった。すると悪魔は彼の目の前で妹の首を切った。勢いよく首から血が吹き出し、彼の顔を血塗れにした。絶命だ。彼は怒り狂い、悪魔の顔を拳で殴った。

悪魔の顔は...剥がれた。なんと変装だったのだ。下の顔は、彼のことを最初にバカにしてきた者だ。

彼は怒り、悲しみ、恨み、絶望し...笑った。彼を大笑いしたように世界の惨さを、天使の醜さを、自分の哀れさを笑った。そして、彼は...黒に染った


アマノエルはようやく目が覚めて来て、何故知らない人の夢をみたのかと疑問に感じた。そして朝から胸くそ悪い気持ちでいっぱいになり、朝ごはんがあまり入らなかった。その日一日気分が乗らず、途中からミカエルに休むように言われ帰宅した。

アモンには会ってすぐ「どうした顔色悪いぞ」と言われたが変な夢みたとだけ言い、詳細は話さなかった。強欲なアモンは普段絶対しないのだが、それほど心配だったのかアマノエルが大好きな甘い物を奢ってあげた。

夢のことは未だに気になる。

ある日天気の良い昼時に外を歩いていると、急に突風が吹いた。きゃっ、と思わず女の子らしい声を出してしまう。気のせいだと思うが「苦しみから解放してくれてありがとう」と聞こえた気がした。

気晴らしの散歩がよかったのか気が楽になった。次の日からは元気よく朝をむかえることができそうだ。

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