第43話
真由美が咲と知り合ったのは、小学生の時だった。
彼女はいつも成績は一番で、常に真面目で、周りと関わりあいを持とうとしない子だった。
勉強も運動も得意だったが、愛想はあまりなく、咲と同じクラスの女子たちは、『生意気』と思っていた。
真由美は逆だった。そんな咲を見て、仲良くしたいと思った。
それからずっと、二人の関係は続いている。
「……なんですか、その目は」
真由美はしばらく咲へと呆れた視線を送っていた。
まだ握手までしか出来ていないのだから、このような視線を送りたくなるのも無理はないだろう。
「いや、別に。全然関係進んでないなって思ってね!」
「……す、進みましたけど」
ぶす、っと咲は言った。咲にとっては大きな進歩であるのは間違いない。
真由美も否定ばかりで終わらせず、それについては認めることにした。
「まあ、それはいいんだけどね、私としては楽しませてもらっているし」
「……人の恋心で遊ぶのはやめてほしいのですが」
「ふふん、まあまあ、それは相談に乗ってもらっているお代だと思って。うん、こんなところかな?」
真由美は咲の体をふき終え、新しいパジャマを渡した。
咲はよろよろと着替えを再開し、真由美はタオルと着替えを片付けていった。
まとめて、洗濯機に入れようか、なんて考えながらそれらを持ちあげる。
「それじゃあ、咲っちはちょっと休んでていいからね? とりあえず、洗濯と島崎くんの相手は任せて!」
「し、島崎さんに何をするつもりですか?」
不安そうな表情で、咲は腕を伸ばしてきた。真由美はするりとそれをかわして、悪戯な笑顔を向けた。
「別に何もしないって。ただ、ちょっと調査をしておこうと思ってね」
「調査?」
「うん、咲っちのことどう思っているのかーとか、それとなーく聞こうと思ってね!」
「そ、それとなくそんなことって聞けるんですか!? 変な失敗しないでくださいね!」
真由美の調査を、咲は否定しなかった。真由美はそこについて指摘しようかどうか迷ったが、今は黙ることにした。
「咲っちじゃないんだから大丈夫だよー」
「……私だってそんなへまはしませんよ」
「いや、絶対するでしょ」
「……む」
咲が頬を膨らませる。何か言おうとした咲から逃げるように、真由美は部屋を出た。
リビングに向かうと、治と目があった。真由美がリビングに入ったところで、治はぴくりと顔をあげた。
髪は長く、目元まで隠れていたが、背は高く、顔たちは整っている。
すべて整えれば、さらにかっこよくなるだろう。
(なるほどね。咲っち、隠れた物件を探し出すのうまいなー。でも、咲っちが惚れたのはきっとそういうところじゃないんだろうなぁ)
真由美がそんなことを考えていると、治が首を傾げた。
「飛野は大丈夫か?」
「うん、大丈夫! とりあえず少し休んでいるみたいだから、島崎くんもちょっと休んでてね」
「……あ、ああ」
治はあげかけた腰をソファに戻した。真由美は速やかに洗濯機へと向かい、洗濯籠に溜まっていたものを含めて、すべてぶちこんだ。
これから治に質問攻めをするため、真由美はワクワクとしたテンションのまま、リビングへと帰還した。
リビングに戻った真由美は、それから治の前のソファに腰掛けた。
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