第13話
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咲が羞恥をこらえながら発言すると、真由美は首を傾げた。
「え? お金を払えなかったって……そんなに食べたの?」
「ち、違います………………財布を忘れてしまったのです」
「さ、さすがポンコツっちだね」
真由美の言葉に、咲はかちんときた。
「だ、誰がポンコツっちですか! 基本完璧で、たまにミスをするだけですっ。人間というものはどうやっても100パーセントミスしないなんてことはありません! どこかしらに欠陥が生まれるような生き物なんです……っ!」
「かもしれないけど、咲っちの場合は普段ポンコツ、たまに完璧だと私は思うんだよね。まあ、生徒たちはなんとか誤魔化せているようだけどねっ」
「誤魔化せているのではありません、あれが平常運転です。真由美が私のあらを見つけ出そうとしているから私がポンコツに見えるだけですっ! 誰だって、不得手な部分を指摘され続ければ、ポンコツに見えるものですっ!」
「へぇ、そうかいそうかい。……それで? その男の人とはどうだったの?」
話を戻され、咲はさっと視線をうつむかせた。
「別に、なんでもないですよ」
「えー、もったいない。連絡先くらいは交換しておけばよかったのに。わざわざそんなふうに話すってことは、嫌な人じゃなかったんだよね?」
「……連絡先くらいは、交換しましたよ。そ、それに関しても色々と事情があったからですけどね」
「へー、それで? どのくらい連絡とったの?」
「……え? 連絡、ですか?」
咲はきょとんと真由美を見る。連絡を取るなんてことは咲の思考にはなかった。
「そうそう。向こうだって咲っちくらいの美少女なら連絡くらいしてくるんじゃない? 見ず知らずの人にお金を払ってまで助けたってことは多少気になってるんじゃないかな?」
「……」
連絡など来ていなかったため、咲は唇をぐっと噛んだ。
「あれ、どうしたの咲っち?」
「……連絡、特にはとっていませんよ」
「え? 向こうから何か変なこと言われたとか?」
「向こうは……島崎さんは特に連絡してきていませんよ? それに、そもそもそういう不純な理由で島崎さんも助けてくれたわけではありませんし、連絡先を交換したわけでもありませんから。あくまで、その、少し相談に乗ってもらって、それに対して返事ができるように連絡先を交換しただけですから」
小説家、ということを伝えるのは治の許可をもらってからのほうが良いと思った咲は、あくまで言葉を濁しながらそういった。
そんな咲の言葉に、真由美は考えるように顎へと手をやった。
「なるほどねー。でも咲っちは、気になるんだよね?」
「……別に気になるということではありませんよ。優しい人ではありましたけど」
「気になってるじゃん。そうやっていいなって思える男性に今まであってこなかった咲っちが、連絡先を交換するくらいに好印象だったのなら、仲良くなれるように頑張ってみたほうがいいんじゃないの? 最終的に合わなければ、どこかで縁を切ればいいだけなんだしさ」
真由美の言葉に、咲も多少思うところはあり小さく頷く。
「……そう、ですね」
「あっ、やっぱり気にはなっていたんだ?」
「ち、違います……っ!」
咲は、照れ隠しでぶんぶんと首を横に振った。そんな咲を見て、真由美がからかうように目を細めた。
「まあまあ、気晴らしにメッセージ送ってみたらどう?」
「……そうですね。どちらにせよ、一度送る約束はしていますからね」
咲はスマホを取り出し、じっと見つめる。その時間二十秒。
固まっていた咲はちらと真由美を見た。
そして小さく息を吐いてから、泣きすがる。
「……ま、真由美。い、一体どんな書き出しにすればよいのでしょうか?」
「そ、その段階!?」
「と、とりあえず……春の季節ですから、春に関する挨拶による書き出しにするべきなのはわかっていますが……」
「いらないよ! そんなただの友人同士のメッセージに畏まった表現とかは必要ないよ! ただただ、純粋にすればいいんだよ!」
真由美が声を荒らげる。
そんな声を聞きながらも、咲はスマホを握る手の震えが止まらなかった。
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