幕間 とある兄妹


 このお話は、一章の幕間の続きですので、まずはそちらから読まれるのをお勧めします。ぜひ楽しんでいただけると幸いです。









 *

 *



「ただいま〜」


 俺は肩に担いでいた剣などの荷物を床に置き、大きな声で、親父に絶対守れと言われたお決まりの挨拶をする。


 俺たちの家は、決してそこまで大きくはなく、いたって普通の一軒家だ。


 近くにも、ポツンポツンとは、家があり、街から離れた、田舎って感じの場所だ。


 ....まあ、他の家とは違ってワフー建築って奴らしいが....


 俺は玄関の前で見渡したが誰もいる様子が感じない。


 まあ、家に帰るってことは伝えてなかったからな。


「お兄ちゃん、お父さんたち家に居た?」


 妹のエレミーが、ドアの横から顔を出しながら話しかけて来た。


「いいや、

「やっぱりねぇ....」


 そう、これはいつものことなのだ。


 前に、親父が俺たちに話してくれたことなんだが、


『いいか?母さんを絶対怒らせちゃダメだぞ。あれでも母さんはマジでキレた時、家の中でさえ魔法を行使してきたからな。....あれ以来持ち込むのには苦労したなぁ....』


 普段はちょっとだけアレなところはあるけど、優しい母さんが、そこまで怒るとは思わないんだけどな。


 すると、エレミーも何か思い出したのか、ウンウンと頷き、


「お父さんったら、何かあるとすぐ、逃げるんだから。今回もどうせお母さんから逃げてるんでしょ。たいして運動してないくせにねぇ。....まあ、怒られたら逃げたくなるって気持ちもわかるけど....」


 エレミーの考え方はほんと親父と被るからな....。


 親父は、何かやらかすと、すぐに外に逃げるところがある。もちろん、すぐに捕まって母さんに叱られるはずなんだが....。


 今思えば、俺は一度も母さんが親父をを怒る姿を見たことないな。


 毎回親父が泣いて帰ってきて、これが本当にあんな偉業を成し遂げたパーティーのリーダーなのかと、幻滅してたことは覚えてるんだが....。


 本当に、こんな親父の何処に惹かれたんだか....


 そんなことを一人ぼーっと考えていると、エレミーが俺の服の裾をくいくいと引っ張ってきた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんったら!!」

「....なんだ?」

「せっかく帰ってきたんだし、お父さんたちにサプライズを仕掛けない?」


 俺にはよくわからないが、エレミーは意外とお父さんっ子なところが昔からある。


 性格も似てるしな。


 ....俺は、逆に親父を反面教師にして生きてきたからな。親父の尊敬するところなんて全く浮かばない。


 どっちかっていうと、俺は母さんの方が好きかな。


 優しいし、まあ、母さんなりにだけど結構頑張ってくれているし。


 ....母さんのミスを気づかれないようにフォローするのは大変だけど。


 そんな、両親だけど、俺たちを大切に育ててくれたのは疑いようがないほど本当のことだしな。


 俺はエレミーの提案を聞き、渋々といった雰囲気を意識して振り向いた。


「ったく、しょうがないな。今回は手伝ってやるよ。まあ、親父はあんま酒は飲めなかったはずだけど、母さんは結構酒が好きだったしな。報酬もかなりの額だし、少しくらいは親父のために使ってやってもいいかな」


 すると、何がおかしいのか、エレミーがこっちを見てニヤニヤしている。


「そういうとこ、お母さんに似てる〜」


 いや、どんなところがだよ!!



 *

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