第13話帰り道いいいいいいいい!?


 帰り道、誰もが寝静まった夜、俺達はそれでも警戒しながら、秘密の隠れ家に向かっていた。俺の背中には、大量のお宝の数々が風呂敷に入っている。


「まさか、侵入対象の屋敷の主にあんなことを頼むなんて......盗賊のやり方からは想像もできないことをやったね......」

「でも、理にかなってはいただろ。それに、向こうにとっては少しとはいえ、こっちからしたら、笑えねえ額なんだろ」


 そう、俺はあのおっさんの秘密を守ることを条件に、俺達の秘密の保持といくぶんかのお宝をもらうということで話をつけたのだった。


 でも、あのおっさんが、こんなものでいいのかみたいな表情が気になるな.....


 それよりも、俺が盗賊業のなかでも、一番気人ることを聞いておこうか。


「その手に入れたお宝はどうやって金にするんだ?」

「そんなことも知らないのあんちゃんは?ほんとにバカだなあ」


 何さも当然みたいに言ってんだよ!!そんなこと盗賊の奴しか知らねえに決まってんだろ!!


 俺はこみあげてくるつっこみたい気持ちをぐっとこらえた。


「......それで、どうするんだ?」

「盗賊ってのは結構いろんなつながりがあって、あたし達は盗むっていう一番危険な仕事をしているから一番分け前は多い役割で、それ以外にもお金に換えてくれる裏の機関があったり、それが流通してもよいものなのかを判断したりするグレーな機関、そういうものを取りしまうところに送る機関なんかもあったりとけっこういろんな場所にそういう人たちはいるんだよ」


 盗賊ってのは意外としっかりしてるもんなんだなあ。というより、この世界はそんなにも悪人みたいなやつがいるのか?


「ろくでもねえなこの世界は....」

「そんなこと言っても、貴族が一番悪いとは思うけどねえ。もちろんいい貴族もいるんだろうけど、たいていの貴族ってのはあたし達みたいな平民を見下しているようなやつも多いからねえ」


 この世界ではその認識が当たり前になっているのだろう。


 日本に住んでいた俺にはわかりにくい感情だった。



 *

 *



 隠れ家につき入り口を開く。もちろん人が誰もいないことを確認してからだが。


「ただいま~」


 そういって、シェリーは部屋に入るなり部屋の奥においてあった取っても寝床とは思えないボロボロになり、ところどころ破れているマットレスのようなものの上に布を一枚引いただけのものの上に寝転がった。


 それだけならまだいいが、よくよく見て見ると、椅子も机もところどころ、傷が入っていたり、ひびが入っていたりとボロボロのものが多かった。


 そういえば、こいつはここに入ったとき『ただいま』と言っていたもしかしたらこいつは、ここに住んでるんじゃないか?それなのに、ここにはさっきの三つ以外家具はほとんどない。荷物もほとんどが床に直置きだ。


 俺は横になってごろごろしているシェリーに近づいた。


「....おい、お前の分の金っていくらになるんだ?」

「きゅ、急にどうしたの?あ、あんちゃん....?」

「いいから答えろ」


 気づいたら俺はどすの利いたを出していた。


 なんで俺はこんなに興奮してんだ?その答えは俺にはわからなかった。


 俺がガチで言ってんのが伝わったのか、シェリーは自分の頬をかきながら苦笑いをした。


「いくらって言われたも....あたしが必要な分だけしかもらわないけど....」

「....本当にそれでいいのか?」


 気づいたらそう声に出していた。俺は自分の心にくすぶる気持ちを声に出そうとして、言葉にすることが出来なかった。


 それでも、俺は小さな女の子シェリーに、


「おい、明日出かけるぞ!!」


 そう、口にしていた。

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