第7話作戦会議いいいいいいいい!?


 外でシェリーに怒られたが、まあ気を取り直してこっからが俺の盗賊生活の始まりだ。


 シェリーがまださっきのことを怒っているのかこっちを睨んでいた。


「全くあんちゃんはなにもわかってないなあ......じゃあ今から作戦会議を始めるよ」

「おお!!これが泥棒の作戦会議というやつか!!」


 俺がテンション高く思ったことを言ったら、シェリーが何か言いたげな目を....というか、ほんとに言ってきた。


「あのさあ、あんちゃん。別にあたし達盗賊は何でもかんでも盗むんじゃなくて、貴族や商人が不正に入手したものしか盗まないし、お宝の一部は貰っちゃうけど、残りは寄付したりする言うならば、義賊という物なんだけど......」

「そうだよ!!そういう陰ながら街を守るヒーロー的なものに俺はあこがれてたんだよ!!今の情報は俺的にプラスポイントだぞ!!」


 悪党的な盗賊もあこがれるけど、やっぱりヒーロー的な存在も捨てがたいよな。


 そんなどうでもいい話をしていると、シェリーがゴホンとわざとらしく咳き込み、机の上に紙を広げた。


「いい?今回侵入するのが、このアンデルセン公爵の別邸。アンデルセン公爵は裏ルートから入手した高価なものを保管しておくのにこの別邸をを使用しているらしいよ」


 やっぱり貴族というのはそんな裏ルートなんてものを使うほど汚い手段で事を行うのか。なんて非道な奴だ!!やっぱり俺みたいに正々堂々と事を成し遂げる男じゃないとな。


「ここの警備は深夜12時から30分の間だけ見回りがいない時間があるんだ。その時に裏からこっそり侵入するよ。中に入ってからは臨機応変に」

「分かった。任せとけ!!」


 そこで俺はふと気になったことを尋ねた。


「なあ?お前は一人で何回くらい忍び込んだんだ?」


 当たり前のことを聞いたつもりだったんだが....おい、なんで固まってんだよ。別におかしなことは聞いてないだろう?


「まあ、盗賊としては、2年目になるけど?」

「......じゃあ、今回一人で計画を立てたのは?」


 それを聞いた途端、シェリーは目線をそらし一歩また一歩と後ろに下がりだした。

 

 こいつ、なんか隠してるな。

 俺はシェリーの盗賊らしい軽装の服の裾を掴んで、


「おい、俺に正直に話せ。さもなくば、ロリっ子といえど容赦なくひどい目に遭わせるぞ....」

「わ、分かったから!!ちゃんと説明するよ!!だから、そんなガチな目をして近づいてこないだよ!!」


 まあ、俺もガチで襲う気はなかったからそんな心配してほしくないんだけど....


 ほんとだからな!!


 シェリーを椅子に座らせとりあえずこいつのことを根掘り葉掘り聞くことにした。


 シェリーは、『はあ』とため息をつきこっちにジト目を向けてきた。


「ここまで言うんだから、あんちゃんとあたしはもう立派な仲間だよ」

「分かってるよ。それよりも、嘘はつくんじゃねえぞ」


 そういうと、シェリーは昔のことを思い出すかのように語りだした。


「あたし達、盗賊の家系は12歳になると一人前の盗賊になるために、一人で生活するようになるんだ。それで、今まではパパやママの手伝いをしていたんだけど、12歳の誕生日にパパが、『お前ももう12だ。これからは一人で生きていけるようになりなさい』って言ってあたしを家から放り出したんだ。もちろん、かなりの大金を渡してね。何も渡されず放り出される人もいるらしいから、かなり恵まれてる方なんだけど」


 どうしよう。意外と重い理由がありそうで怖いんだけど。


 というか、12歳の子供を家から放り出すのが普通って、盗賊の世界はどうなってんだ。


「まあ、そんなこんなで、ここをこっそりアジトとして改造して、計画を立てていたんだけど....あんちゃんが急に侵入してきたからね。正直言って最初侵入してきたは、あたし、盗賊としての才能ないんじゃないかって結構落ち込んだんだからね。だから今回の最初の任務は失敗できないだ。もちろん、さっきも言ったとおりに、善良な人たちの家は荒らさないし、手に入った金額の半分以上を孤児院とかに寄付しようとあたしは思ってたから。だから、お願い。あたしの盗賊としての初仕事を手伝って......」


 そう言って、俺の方を見てきた。その目には不安そうな感情が混じっているような気がした。


 俺がもし盗賊なら、孤児院に寄付しようなんて思いもしなかっただろうな。そんな、盗賊らしからぬ、優しい心を持った年相応に幼いこの子を俺は無視できるのだろうか。


 昔は小さいこと泣いている姿を見ると、『鬱陶しいな』とか思っていたはずなのにな......これも、あいつらと出会ったからかもしれねえな。


「当たり前だろ。俺は盗賊には憧れてんだよ」


 そう、笑顔で返事をした。

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