幕間 とある冒険者パーティー

 

 俺は今、ドラゴン狩りのクエストのためアーシュクリット山という名の山の頂上にに来ている。


神々の輝きの剣ホーリーライトセイバー!!」


 そう言って俺はドラゴンに向かって剣をふるう。


 ふつうは魔法で攻撃するのがセオリーなのだが、俺に魔法の才能はなかったためこうして、剣で闘っている。


 俺の一撃でドラゴンがひるんでいるところに、後ろから魔法が飛んでくる。


灼熱の豪雨フレイムヘビーフレイン!!」


 ドラゴンの頭上に黒雲を発生させ、溶岩のような赤黒い物体が降ってくる。


 さすがのドラゴンもこの魔法には耐えきれず、大きなうなり声をあげそのまま地に倒れ伏した。


 俺の後ろからこっちに向かって走ってくる足音が聞こえる。


「やったわね。これでクエストは完了よ。さあて、報酬で何を買おうかしら?」

「やめておけ。お前はすぐ金を使いきる。親父みたいになるぞ」


 そう。俺達は兄妹で冒険者をやっている。


 妹のエレミーは、見た目こそ母さんに似てるが性格は丸っきり親父にそっくりだ。


 俺はドラゴンから手際よく皮などを剥ぎ取りカバンに詰めた。


「おい、エレミーも早く手伝えよ。ドラゴンの皮は硬くて剥ぎ取りにくいんだ」

「はいはい。今行きますよ~だ」


 そう言って、エレミーはスキップしながらこっちに向かってくる。


 エレミーは俺の隣まで来ると、俺が持っている剣に触れうらやましそうにこっちを見てくる。


「いいな~。私もこんな武器ほしい~」

「いいだろ。お前は魔法がたくさん使えるんだし。俺はこれがないとまともに戦うことすらできないんだから」


 この剣は元々俺の親父がもらったものだったんだが....俺の親父は本当にバカでこれが欲しいと言ってもらったのにもかかわらず、自分の筋力がなさすぎてまともに使えなかったからという理由があり、今は俺が持っている。


 素材も集め終わったしそろそろ帰るか。


「エレミー、テレポートで山のふもとまで飛ばしてくれ」

「オッケー」


 親父に教えてもらった「エイゴ」という言葉で返事をしたエレミーが、

 テレポートの詠唱を始める。


「テレポート」


 体が宙に浮いた感覚があり、目を開けると山の入り口付近まで戻ってきていた。

 隣にはエレミーが伸びをしている。


「それじゃあ、帰るか」


 そう言って俺達は歩き出す。途中で他愛のない話をしながら。


「でも、未だに信じられないよね~。あのお父さんがお母さんを落とすなんて」

「それは俺も同感だ。あの親父のどこに惹かれたのか」


 俺達の母さんは、見た目こそ本当にきれいなのだが、たまに....そうたまに....まあ、あれなのだ。


 エレミーが俺の方にキラキラした目を向けてくる。


「ところで、今日の晩御飯は何にする?」

「まあ、今日はクエストの報酬もすごいだろうし、好きな物を食っていいぞ。....ただし、値段だけはちゃんと見てから頼めよ」

「分かってるって。見るだけは見るようにしますよ~だ」


 ほんと、困った妹だ。まあでも、クエストの時にはほんとに頼りになるからな。


 しばらく歩いているとエレミーが、顔を上げ急にどこか懐かしむような顔をした。


「そういえば、お父さんたちは元気にしてるかな」

「そりゃあ、してるだろ。でも、最近会ってないからな」


 前会ったのは3年前だ。そろそろ家に顔を出してもいいかもしれない。


 俺はエレミーに笑いかけ、天に向かってこぶしを突き上げ、


「よし。次の目的地は我が家だ。親父たちに成長した姿を見せに行こうぜ」

「うん!!」


 そういうと、エレミーの背中に生えている小さな白い羽がぴょこぴょこと嬉しそうに動いた。



 *

 *


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る