第18話作戦の概要とその後
時間は戻り、5日前に遡る。俺達は全員で作戦を話し合っていた。
「いいか、作戦はこうだ。調べたところあいつのあの障壁は、魔法は通さないけど物理的なものは通すんだろ。なら、あの障壁の範囲の中で魔法を発動させればいいと思ってな。だから、お前らが時間を稼いでる間に、後から俺が侵入してあいつの隙をついてメディーのポーションで消し飛ばしてやる」
俺的にかなり自信があった作戦の概要を説明したのだが、妙に反応が薄い。
3人とも、軽く引きながらこっちを見てる。
「確かに、悪くはないのだが....かつてそんな方法で魔王軍の配下の者を倒そうと考えた奴はいたのだろうか....」
「それに関しては同意しますが....効果的とは思いますよ。私は」
「ふっふっふ、我の力がようやくわかってきたようですねぇ。....ですが、さすがに我でもそんな作戦は思いつきませんでしたよぉ....」
そこで、アリスが首をかしげて俺に尋ねてきた。
「でも、そんな作戦本当にうまくいくんですかね?」
「なんかさあ、あいつだいぶお前みたいなポンコツ臭がするんだよな」
そう本音を言っただけなのにアリスが驚愕の表情で固まってしまった。
いや、ほんとにそんな感じがするんだよ。
「まあ、やばそうだったら即撤退。街の防衛に手を貸そうぜ」
*
*
俺達は冒険者組合に呼び出されて受付の前にいた。
近くには野次馬らしき冒険者たちが物珍しそうに俺達を見ている。
そして、俺達の前にかなり年配の冒険者組合長らしき人物が前に出て、表彰状らしき物を読み始めた。
「モロホシダイキ殿とそのパーティー仲間殿。貴殿らは魔王軍に勇敢に立ち向かい、みごと討伐してくれた感謝をここに申し上げさせてもらう。本当にありがとう」
そういって、よぼよぼのおじいちゃんが頭を下げてきたんだが....
「俺、褒められるなら胸の大きなお姉さんがいい」
「「「!?」」」
おっと、本音が出てしまった。周りのみんながすごい目でこっちを見てるが俺正直言って、こんなの感じの雰囲気苦手なんだよ。
おじいさんがこめかみを引くつかせながら続きを読む。
「感謝の意として、貴殿らのパーティーに1000万スターを進呈させてもらう」
「「「1000万スター!?」」」
まじかよ!!これで、俺も大金持ちだ!!
よーし!!なんか気分がいいな!!そうだ!!一回はこれ言ってみたかったんだよ!!
「「今日は俺のおごりだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ちょっto!!」
アリスの声が聞こえたような気がしたが、周りの歓声でなんて言ったかまでは聞こえなかった。
まあいいか。
「今日は楽しむぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
*
*
宴会みたいになってしまって、一度外の空気を吸おうと冒険者組合を出るとアリスがついてきた。
「私も一緒に行っていいですか?」
「まあ、別にいいけど」
ちなみに、ラーシはもう家に帰っている。今は深夜2時くらいか。あっちの世界では当たり前のように起きていた時間だけど、ここに来て初めてこんなに長い時間起きてる気がするな。
アリスは俺の横に立つと、歩く歩幅を合わせながら俺の方をちらりと向き、俺に苦笑いをみせた。
「もう、なにもあんなことまでしなくても。また、お金が無くなっちゃいますよ」
今日のアリスは酒を飲んではない。
「お前も今日くらいは酒飲んでもよかったんだぞ」
「まあ、今日は飲まないって決めてたんです。(それに、だいきと話がしたくて....)」
最後なんて言ったんだ?
アリスが顔を前に向け、再び俺に聞いてきた。
「だいきはどうして、街を守ろうと思ってくれたんですか?」
なんだよ、とつぜん。
....まあ、いろんな理由があるんだが....
「ふん。馬車を借りようと思ったらどこも貸してくれなかったんだよ」
「ふふ、嘘が下手ですね」
そういって、ニコニコ笑ってる。
しかし、急にアリスが下を向いてもじもじしだした。
「あの、その、街を守ってくれようとしたのって、わ、わ....の..め......のも......ですか....」
「おい、最後の方なんて言ったんだよ。全然聞こえねえぞ」
そういうと、あからさまにため息をついてこっちを睨んできた。
なんだよ、聞こえなかったから聞いただけじゃねえか....
「どうせ、美人なお姉さんに頼まれたからじゃないんですかって言っただけすよ」
そう言ってベーっと舌を出してそのまま来た道を走っていた。
なんで、あいつ急に怒ってんだ?
走って行ったかと思ったら道の途中で止まってこっちを振り返ってきた。
「ありがとうございます。あの時勇気を振り絞ってくれて」
そういって、また走り出した。
あいつ、館の前で俺が震えていたの知ってやがったのか。
確かにあの時は死ぬほど怖かったがお前らが頑張るんだ。俺だけがびびっていられねえよ。
そうして、俺もなんとなく今来た道を歩き出した。
アリスの振り向きざまにみせた横顔が赤かったのはたぶん気のせいだろ。
☆★ ★☆
一章のストーリーはここで終了となります。
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