第16話クズ冒険者だけど....
冒険者組合の中はたくさんの人で賑わっていた。
「街防衛用の資材集めのクエストにご協力下さい!!」
「対アンデット用の魔法が使える方々はこちらにお集まりください!!」
魔のエンギルの宣言があった後、俺はみんな逃げ出すのではないかと思っていたのだが、みんなやる気みたいだな。
「ダイキ、それで私達はどうするのだ?」
ラーシが唐突に俺に聞いてきた。ちなみに、アリスとメディーは他の冒険者とともに集まっている。
「どうするって言っても俺はもちろん逃げるぞ。別にここに残る理由なんて無いからな」
「....私にはここに残って守らなければならないものがある。お前とアリスはこの街に残る理由はない。だからここから逃げても私は止めない」
それだけを言い残してラーシも冒険者の集まりの方へ向かっていた。
「なんだよあいつ....」
自分のことを一番に考えて何が悪い....。
一人離れて待っているとアリスが戻ってきた。アリスは下を向いている。
「今回の魔王軍の件は私達が原因かも知れましん。それで、ダイキはどうするのですか?」
さっきと同じ質問かよ....
「ふん。俺達はここにいる理由はないだろ。さっさとこの街を去るぞ」
「....そうですよね。まずは自分の命が大切ですもんね。とくにだいきは、一度死んでますもんね」
なんだよ、そうな悲しそうな顔すんなよ。そこで少しだけ顔を上げたアリスが俺に聞いてきた。
「でもだいき....いえ、何でもありません....」
なんだよ、最後まで言えよ....。
「俺は馬車かなんか乗れそうなもんがないか探してくるからな。お前も荷物の準備しとけよ」
俺はそう言い残して冒険者組合を出ていった。
クソ。なんだよこの気持ちは....。
*
*
俺は馬車を探しに行くとは言ったものの何をするでもなくただ適当に街をぶらついていた。
街の雰囲気はあまりいいとは言えず、外に出歩いている人がほとんどいないほどだった。
「クソ」
小石を蹴りながら道を歩いていると、俺の横を小さな女の子とそのお母さんらしき二人が歩いてきた。
「ねえ、おかあさん?どうして、ひとがだれもいないの?なんだかこわいよ」
「大丈夫よ。ユミ。冒険者の方々が守ってくれるわ」
その名前を聞いた時、俺の脳裏にふと自分の死の間際に聞こえた声が蘇ってきた。
「ゆみー!!」
あの女の子は助かったのだろうか。
もし、あのアンデット達がこの街に攻め込んできたのを冒険者が守りきれなかったら、あの子やあのお母さんも殺されてしまうのだろうか。
自分に守るものなどここにはない。
まあ、向こうの世界でもなかったけど。
それでもあの女神にあった時、約束したじゃないか。
(あなたには、異世界でその地に行きその世界の住人とともに魔王を打ち取って頂きたいのです。お願いできませんか?)
今思えば、無理だなと自分でも思うけど、自分はみんなが憧れる勇者のようにはなれないのだろうけど、もう一回くらい命かけてみても大丈夫だろ。
自分はこれでも神に選ばれた人間なのだから。
俺は今歩いて来た道を再び歩き出した。
*
*
俺は冒険者組合を再び訪れた。
そして、席に座っている3人の前に立った。
3人は俺を見ると一瞬目を丸くしたがすぐに笑顔になった。
今の俺はどんな表情をしているのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいい。もう言うべきことは決まってる。
俺は3人に向けてまるで散歩に行くかのように言った。
「あのクソアンデット使いを倒しに行こうぜ」
*
*
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