第25話:余話〈マイナの見たモノ〉

時間は少し遡る。



ビービービービー


ビービービービー


通信石板がけたたましく鳴る。

何とか毛布から抜け出して、寝ぼけた眼で、通信石板の表面を見る。


表示された名前を見て目が覚める。鋼さんからだ。

石板に魔力を込め、急いで出る。2コールも待たせてしまった。


「おはようございます!鋼さん。マイナ・オーキッドです!」


「おはようマイナ!朝早く悪いんだけど、ちょっと協力して欲しいんだ!今から場所を言うから急いで来て貰えないですか!」


簡単に話しを聞くと、人探しを手伝ってほしいとの事だった。誰を探すかは直接会って話してくれるそうだ。


鋼さんは結構慌てていた感じだった。あの方は落ち着きのある人なので、余程の事があったのだろうか。


生け贄の対象を見つけたのだろうか、でも昨日の夕方別れた時には次のターゲットの目星もついていなかった。

夜の内に手がかりを掴んでいたなら、いつもならその時点で連絡をくれるので、多分違う。


ああ!考えても仕方ない。何にしろ鋼さんを待たせる訳にはいかない!


髪を結び服を着替える。

朝食も食べていないが、急いで家を飛び出した。顔くらい洗いたかったが仕方ない。


待ち合わせ場所は、街の北北西リービング通りのゲートだ。



10分くらい走っただろうか、最寄りのゲートまでやっと着く。



ゲートを潜る前に息を整える。親しくはなったけれども失礼があってはいけない。

一ヶ月前、ミリオン様の前で鋼さんにプロポーズしてしまった事を考えると恥ずかしくなる。

あの時は、あまりにもときめいてしまって、ハメを外し過ぎてしまった。


この一ヶ月で彼の事がますます好きになっているのが分かる。でも、ちゃんと段階を踏まないと。

しかも彼はミリオン様の物だ。監禁するわけにもいかない。ミリオン様にも認めて貰う為にちゃんと礼儀を弁えよう。

といっても、どうしても嬉しくなると自分自身を制御できなくなってしまうのだけど。自覚してるけれど治らない。


生きてきた中で、私と同じ様に考える人に会ったのはミリオン様と鋼さんの2人が始めてだった。


何故か街の皆は私と違って、獣の区別もつかないし、拷問も殺すのも好きではない。

私は誰とでも仲良くできる自信はあるけれど、誰とも趣味が合わなくて、深い友人関係になった人は一人もいない。

秘密部屋を獣以外に見せたのも彼ら2人だけだ。喜んではくれなかったけど、私を認めてくれた。

今ではミリオン様も鋼さんもとても尊敬する人であり大切な友人だ。


この大切な縁を、絶対に切りたくは無い。



息が整ったので、ゲートに入る。

そこには鋼さんが待っていた。作り物の姿形らしいけど、相変わらずかっこいい。ミリオン様はセンスがある。


「ああ、マイナ来てくれてありがとう」


「鋼さん!詳しい状況を教えてください!」


鋼さんから、呼び出された詳しい訳を聞く。


昨日、時空王トゥエルブ様が城に来て、私たちの探しているターゲットがジャンク・モーラン、通称口裂けジャンクだと教えてくれた事と、トゥエルブ様の孫であるフィアをミリオン様が預かる事になった事を聞いた。


時空王トゥエルブ様。新聞でよく聞く名前だ。トゥエルブ様の街は魔法都市の中で最も栄えており、世界で一番金を持つと言われる人物だ。

どんな縁かは分からないけど、そんな人の孫を預かるなんて、ミリオン様はやっぱり凄い人なのだと改めて思う。


そして、口避けジャンク。孤児院の子供を全て食べたと目される男。殺意が溢れ出てくるが、今はそれ所では無い様だ。


「で、そのフィアって子が好奇心旺盛でトゥエルブの話を聞いて、この辺りにジャンクを探しに来てしまったかもしれないんだ!」


「え!大変じゃないですか!ガードに連絡は」


「いや、預かってることは秘密にしろって念を押されてるんだ!僕たちと猫の傀儡で探すしかない。頼む手伝ってくれ」


私には教えてくれると言う事は、それほど私の事を信じてくれてるって事だ。

期待を裏切らないように頑張らないと。それに生け贄をやってる獣に、いたいけな子供を近づける訳にはいかない。


「任せてください!全力で探しますよ!」


見つかったら通信石板にと言おうと思ったが、ポケットに通信石板が無い事に気づいた。

急いで家を出た時に忘れてきてしまったようだ。


「あ、でもすみません。家を急いで出てきたので、通信石板を忘れてきてしまいました。すみませんが待ち合わせ場所を決めさせてくれませんか?」


待ち合わせの場所を決めると、そこに猫を配置してもらい、2時間後に落ち合う約束をして、二手に別れて探すことになった。



それから1時間は聞き込みをして回った。

こんな時ガードで良かったと思う、みんな怪しまず話してくれる。


段々と人通りが少ない道に入っていく。

ある路地の分かれ道に行き着いた時、どちらにいこうかと思案していると、足音が聞こえたので聞き込みしようかとそちらを見た。

ちらりと通りすぎる人影が見えた。



その時、つんと鼻につく臭いがした。薄汚れた獣の臭い。

それも、今まで嗅いだ事も無い様な、強く酷い臭い。グラス兄弟を見た時に感じた臭いより遥かに強烈な臭い。



私の直感が言う。奴が口裂けジャンクだと。


どうする。追うべきか。ああ、なんでこんな大事な時に通信石板を忘れてきてしまったのだろう。私のバカ!


そっと後ろからジャンクを見る。鋼さんから聞いたフィアと言う女の子は連れていない。

このまま後をつければ、仮にフィアが現れても接触する前に阻止することができる。


よし、このまま後を付けよう。

それにもし、ジャンクの家を見つける事ができればミリオン様も鋼さんも喜んでくれる。

昔からやっていたことだ。尾行は慣れている。そう簡単に見つからない自信がある。


それから10分ほど後をつけると。ボロボロの家の中に入っていくのが見えた。


あれが口避けジャンクの隠れ家だろうか。ここは大通りから離れて人通りが少ない。

確かに身を隠すなら最適だ。それにあんなボロ家には誰も近づかないだろう。


15分ほどすると、ジャンクが家から出てくるのが見えた。

髪の毛で、口が裂けているのかを伺い知ることは出来ない。まだこの段階では、確証が持てない。


どうする、ジャンクを追うか?

だけどジャンクがフィアに会う確率は限りなく低いように思える。誰もフィアを見ていないし、ここは人通りが極端に少ない。

こんな汚い所、子供が好んで入り込む場所とは思えないし、あの方向はさらに路地の細道だ。普通なら誰も近寄らない。


それに今、彼はあの家に居ない。調べるならチャンスだ。


ミリオン様、鋼さん、ごめんなさい。

勝手をして申し訳ないと思いながらも、私は一時的にジャンクの追跡をやめ、ジャンクの家を探ることにした。

彼が確かにジャンクだという証拠を見つければ、鋼さんがあいつを倒してくれる。そうすれば怯える事は何も無くなる。


ジャンクが見えなくなるのを確認して、家に潜入する。

家の中には沢山の人形が置いてあった。


「傀儡魔法使い……ミリオン様と同じ……」


人形を細かく見ていく。凄く精巧で人間と区別がつかない。まるでミリオン様が作る人形の様だ。

そして、どれもこれも見た事のある顔だ。だがどこで見たか思い出せない。思い出せ。思い出せ!


「……そうだ。行方不明者のリストだ」


並んでいる人形のモデルは行方不明者の似顔絵で見た顔だ。

必死に頭を回転させる。この人形は、確か大型馬車の運転手だ。この人形は、確かツアーガイドだ。この人形は、確か孤児院の学長だ。

思い出せたのは3つだけだったが、私は気づいた。


ここにいる人形は全て、人を移動させる、人を導く人間なのだと。

もしこの人形を精巧に動かせるのならば、人形を使って大量の人数を任意の場所に移動させることができる。

432人の子供がいなくなった孤児院はたしかこの学長がどれも管理していた。子供達と一緒にいなくなったと思われていたが違ったのだ。

先に学長が居なくなって、人形の学長と入れ換えられ、子供達を連れ去ったのだ。


「……許せない」


頭に血が上るのが分かる。彼をこの手でできる限りあらゆる手を使って苦しませ殺したい。

だが、今はそんな妄想をしている場合ではない。他にも何か手がかりがあるか探さないと。


手早く家捜しを進めていると、書類が山積みになっているのを発見した。

中身を見ていくと一つ興味深い書類を見つけた。


これは権利書……? シリング工業跡地と書いてある。


シリング工業跡地といえば、この都市の隅にあり、私が生まれる前にはもう廃れていた場所だ。何を作っていたかも知らない。

だが、何もない場所であり、土地は既に封鎖されているはずだ。権利書もとても古いものに見える。


しかしながら、隠れるにももってこいの場所だ。こことは別に隠れ家があるのかもしれない。

よく考えるとこんな精巧な人形はあるのに、人形を作っている形跡は見当たらない。きっとそこで作っているのだろう。


これだけ分かれば十分だ。戻ってミリオン様と鋼さんに知らせよう。証拠ならそこにもある筈だ。

それで確証が持てれば、ジャンクを殺せる。血祭りに上げられる。ふふ、いけないいけない、そう思うとついついにやけてしまう。



「お前、誰だ?」



私は咄嗟に振り向く、大きな鉈を振り上げた薄気味悪い巨大な人形がすぐ背後に立っていた。


ブオォン!


鉈が降り下ろされる、咄嗟に転がって避けるが少し背中を切ってしまった。


「オレの家で何してる」


先程まで棒立ちしていた人形が、今は意思のある人間の様に喋っている。

しまったな。入ってきた時から人形にもっと警戒をしなければいけなかった。この人形、遠隔操作で動かされている。


ドアは閉まったままだ。外から中の様子は確認できない。と、言うことは……


「……人形の目を通して、見てるんですか」


「お前ガードか?」


やっぱりそうだ。鋼さんが持ってる小さなミリオン様と同じで、人形の目を通して見て、話しているんだ。

そんな事できるのはミリオン様しか見た事が無い。

それにこんな大きくて強力な人形を遠隔で動かせるなんて、普通の人間じゃあり得ない。

いや、生け贄をやっていても、そうそうできる芸当ではない。もし、本体が近くに居ないとすれば、こいつは何十人以上も食べている。


「あなたがジャンク・モーランですね、あなたの本体は今、どこにいるんですか……?ガードの仲間がもうすぐ駆けつけますよ」


嘘をちりばめた適当な会話で気をそらそうとする。入り口を人形の巨体で塞がれてしまっている。

どうにか隙を見て逃げ出さないと、殺されるのは明白だ。


「フ、来てもオレは見つからん。それに通信石板を持っていない様に見えるが?」


名前を否定しない。人形を操作する奴がジャンクで間違いない。

それに口ぶりから見て、ジャンク本人は近くにいない。


人形が鉈を横に大振りで振る。とっさに飛び退いて交わすが腕を少し切ってしまった。大きな癖に素早い。


「どちらにせよ、お前は殺す。この隠れ家も残さない」


鉈を持った人形が、散らばっていた机の上にあった炎の指輪をとると、火をつけた。

人形越しに魔法道具が使えるなんて規格外だ。


人形は炎の指輪をぽいと投げる。散らばったゴミや人形に火が燃え移っていく。


すごく不味い状況だが、襲いかかってくる人形が1体だけなのは幸いだ。

奴の行動から考えると、どうやらジャンクは異常に慎重なようだ。察するに、もうかなり離れた所にいるのかもしれない。

人形を遠隔操作するだけでも常人では無理なのに、人を殺せるような強力な人形ならなおさら遠くから動かすのは難しい。

この1体の人形から逃げられれば、逃げ切れるかもしれない。


「これで証拠は残らない。お前が死ねば完璧にな」


炎がくすぶる中、再び鉈を振りかぶる。


私は剣を具現魔法で出す。


ガキィン!


相手は巨大な人形。攻撃を正面から受け止められるとは思っていない。受け流す為の剣だ。

剣で衝撃を緩和しながら、鉈が降り下ろされる方向をずらす。

鉈はそのまま勢いよく地面まで降り下ろされ、床に刺さる。


咄嗟に私は走り出す。人形の脇を潜り抜け、出口の方に。

一瞬遅れて人形は鉈を床から抜いて、振り向きながら横振りに大きく振る。

肩に痛みが走る。かすった。あと一瞬遅れていたら首を跳ねられていた。


閉まっていたドアを体当たりで壊す。脆い。ボロ家で助かった。


家から出る事には成功した。私はこれからとるべき行動に一瞬頭を巡らす。

私がでしゃばったせいで、証拠の家は隠滅されてしまった。ジャンクはもうここに近寄る事も無いだろう。


じゃあジャンクを探す?だけども再度追跡するにもジャンクが向かった先が分からない。

仮に見つけても、私じゃ勝てない。


違う、追うことを考えるな。今は逃げるしかない!生き延びて、ミリオン様と鋼さん、二人に情報を伝えるのが先決だ!

シリング工業跡地、あそこに私が目星をつけている事をジャンクは気づいていないかもしれない。



あれこれ考えている時間はない。とにかく逃げなければ殺される。

私は一目散に走り出す。幸いここは迷路のように入り組んだ路地だ。とにかく見つからない様に走るしかない!



ジグザグに通路を走り続ける。後ろを振り向くと付いて来ていない。足音も……聞こえない。


よし。逃げ切れる。



「見つけたよ。お嬢さん」



いくつか道を曲がって、細い十字路に差し掛かった時に不意に横から声をかけられる。ジャンクの声だ。

……待ち伏せされていた。


私は咄嗟に銃を抜いて撃った。


カァン!


分厚い人形の体に弾かれて、銃弾が跳ね返って私の頭のすぐ横を通り抜ける。

当然の事だったが、私は一瞬戸惑ってしまった。一瞬、体が固まってしまった。


目の前で鉈が降り下ろされた。銃を構えていた両腕に刃物の冷たい感触が一瞬だけ走る。

その刹那、腕が、腕が切断された。両腕とも。


「ああああああああああああああああああっ」


熱い、熱い、熱い、痛い、痛い、痛い!


「よく頑張ったよ。だがこの辺りはオレの庭だ。逃げ切れる訳が無いだろう」


涙が止めどなく溢れる、胃液が逆流する。両腕のあった所から蛇口の様に血が流れ出る。痛みで意識が鮮明になる。


死ぬ。殺される。怖い。怖い。怖い。死にたくない。まだ、まだ生きたい。

せっかくミリオン様と鋼さんに会えたのに、せっかく私を認めてくれる人に会えたのに。

こんなところで、こんなところで死ぬ? しかも獣に、私の最も憎むべき獣に殺される?

嫌だ。嫌だ!嫌だ嫌だ!!



「誰かそこにいるのかぁ?」



路地の裏から声がした。私の叫び声を聞いて誰かが来たのだ。



「来ちゃダメぇ!!!!!」



私は大声で叫ぶ。だが、声の主は愚かにも姿を表した。

ボロボロの服を着ている。浮浪者だ。


浮浪者は血を止めどなく流す私と、鉈を持った巨大な人形を見て声も出ずにその場で固まった。


「チッ」


人形は鉈を振りかぶって浮浪者に向けて投げつけた。


「う、うわあっ!」


浮浪者はようやく自分の置かれた状況に気づくが、遅かった。肩から心臓部にかけて深く鉈が刺さる。

浮浪者は仰向けに倒れて即死した。


私のせいだ。私が余計な事をしたから、彼は死んだ。くそ、くそ、くそ!



人形は、私がもうどうする事もできないと思ったのか、身を翻して浮浪者に刺さった鉈を取りに歩き始めた。



私から目を離した。朦朧とした頭で、これが最後のチャンスだと分かった。

死んだ彼にはお詫びのしようもないが、今はこの状況を利用するしかない。


私は咄嗟に量腕のあった場所を具現魔法で蓋をする。痛い、痛い、痛い!

だが、まだ失血死していない。もしかしたら、もしかしたら逃げられるかもしれない。


血溜まりから足を上げ、具現魔法で両足を覆う。血の足跡がつかないように。


走れ、奴が振り向く前に、走れ、気づかれない様に、走れ、二人に場所を伝えるために。

冷や汗と涙が止まらない。目の前がぐにゃりと歪む。血が足りない。

それに腕がないと、走り辛くて仕方がない。


ああ、痛さで今にもショック死しそうだ。だけどまだ、まだ死んじゃだめだ。死にたくない!


曲がり角をいくつか曲がりつつ、30メートルほど進んだ所で大きなダストボックスを見つけた。

頭で蓋をなんとかこじ開け、転がるように中に入り込む。


体の震えが収まらない。寒くなってきた。先程まで熱かった体が今は凍えるように寒い。

だがこの震えは恐怖と失血、どちらの震えか区別がつかない。


「どこにいった!女!」


外から声がする。私を見失った様だ。頼む、そのまま、見失っていてくれ。


「うぐ、ぐぇ……」


静かにしてなきゃいけないのに、あまりの痛さに胃液が込み上げてきて吐いてしまう。

嘔吐が続き、胃の中の液体が全部出る。朝食を食べなくて良かった。




しばらく経ったが、何も起きない。ジャンクは私を完全に見失った様だ。

今頃、あの人形も火事の中に身を投じているかも知れない。



私は外に出ようとしたが、力がでない。立てもしない。蓋を開ける腕も無い。声も出せない。

あ、そうか、もう外に出る事はできないんだ……。何も見えない真っ暗な中、ゆっくりと薄れていく意識の中で私はそう理解した。


そこで私は悟った、私はここで死ぬんだと。

このダストボックスが私の棺桶なんだ。



はは、私、そんなに悪い事したかなぁ、ゴミ箱で死ぬほど、悪い人間だったかなぁ……。



……いや、いや違うだろ、今はそんな下らない事を嘆いている場合じゃない。私のやるべき事を考えるんだ!

死ぬ前にできること、何か、何かある筈だ。


そうだ。最後に、私の知った情報だけでも二人に伝えないと!


私は右腕の止血を緩める、そして真っ暗な中、ダストボックスの蓋の裏に無い腕で血文字を書き始める。


頭が働かない。痛みも感じなくなってきた。


書ける文字は限られている。考えろ、考えろ、考えろ……



『ジャンク』 は


『傀儡使い』 だ


『シリング工業跡地』 が隠れ家


『早く』 行って下さい、証拠を消される前に



4つの単語を書き終わった時、私は体を動かすこともできなくなった。


ああ、もうダメだ。絶対に私はここで死ぬ。

ミリオン様と鋼さんは、私の死体を見つけてくれるだろうか。


いや、彼らならきっと見つけてくれる筈だ。彼らはとっても優しいから。探してくれる筈だ。


私の人生はいつもこうだ。

両親と姉が死んだのも私の誕生日の翌日だった。

いつだって、良い事があると悪い事が起こる。

ミリオン様と鋼さんに会えたと思ったら、このザマだ。



ミリオン様。貴方の事を誰よりも尊敬していました。あなたはきっと、私の代わりにジャンクも、他の獣達も全て惨たらしくブチ殺して下さる筈だ。

鋼さん。貴方の事が誰よりも好きでした。私が死んだら泣いてくれたり、しないよね。傀儡の体だもん。


はは、だめだ、やっぱり死にたくない。死にたくない。二人にもう一度会いたい。


でもその願いは叶いそうもない。


私の意識は、そこで途切れた。


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