第04話:ガード本部
馬車から見る町並みは、どこも綺麗な町並みだった。
人と共に掃除用の傀儡が掃除しているのが見える。
また、民間人の他にそこらかしこに銃の様な筒を構えた人形が歩いている。
この人形たちは警備用の人形なのだろう。
しかし、銃か……地球の物にそっくりだ。
昔地球人が来たと言っていたが彼らが持ち込んだものなのだろうか。
しばらくして、白色の大きな建物が目についた。
見た事の無い文字だがガード本部と読むことが出来た。これも魔法の力なのか。
「ミリオン、起きてください。着きましたよ」
「んん……ああ、着いたのか、くそう、寝足りん。貴様のせいだぞぉ、鋼……」
眠そうな目を擦りながら、ミリオンは身を起こした。
馬車が止まり、御者が降りてきてドアを開く。
「つりは要らん。帰りも乗るから待っていてくれ」
「へい。かしこまりまして」
ミリオンは数枚の貨幣を御者に渡すと僕に降りるように促した。
本部の建物は周りと比べて立派で、ガードを示すようなエンブレムが付いていた。
入り口には1体の警備用人形と1人の警備の男性が立っており、どちらもこのエンブレムと同じもバッジを付けていた。
中に入ると、窓口が所があり、人もそれなりに混雑している。
「財布を落としたんだけど、とどけられていないかねぇ……」
「問い合わせてみますので、色や形などを覚えていらっしゃいますか?」
日本で聞いたのと同じような会話が聞こえる。思ったより警察っぽい。
ミリオンは緊急の窓口らしき所に躊躇無く入ると呼び鈴を叩いた。
チリンと高い音が鳴る。
「はい、何でございましょう?」
「リオが人形を連れてきたと所長に言え」
受付の女性はなれた手つきで、手元の黒い石板に手をかざすと、黒い石板が光だした。
リオというのは偽名で、受付の人の反応から見て何度も使っているものだろう。
「リオさんが新たな人形を連れてきたそうです。……はい。すぐに上にお通しします」
女性が石板から手を離して言う。
「案内が来ますのでお掛けになって少々お待ちください」
「いらん。いくぞ鋼」
「あ、ちょっと……」
ミリオンは僕の袖を引っ張ると、階段をずんずんと進んでいき、4階の曲がってすぐの扉を勢いよく開けた。
髭を蓄えた恰幅の良い男が出迎える。
食べかけと思われるお菓子が、机の上に置いてある。
「ど、どーも、お世話になっています!リオさん。傀儡王様の新作人形をお持ちにいらっしゃったとか。傀儡王様の人形には、いつも感謝しております。お陰さまでこの街の安全は保たれています」
少しふて腐れた顔でミリオンは答える。
「中心街は、だろう。生け贄魔法を駆使するやからには単純な傀儡では対処できん。そこでコイツをミリオン様は寄越してくださった」
僕の横腹が肘でつつかれる。なんか言わなければいけないと思い、とっさに考える。
僕は襟を引っ張り首元のマークを見せた。
「僕がそうです。ロボットです。手からバルカン砲とか撃てます。えーと、好きな映画はスターシップトゥルーパーズです」
ガンっ!
思いっきり僕の後頭部がひっぱたかれた。が、すごい、びくともしないぞ。
赤くなった手のひらを擦りながらミリオンが言う。
「コイツはまだ試作機だそうでな、本調子ではないんだ。たまに意味不明なことを言う。自分でものを考えて動く仕掛けを入れたそうだ。名前は鋼だ」
所長は驚いた顔をした。
「自分で考える人形……ですか?それを使って一体何を……」
「さあな、とにかくだ」
ミリオンは僕の胸をばんと叩いた。
「コイツに情報を渡し、自由に捜査させてやって欲しいとの事だ。コイツはミリオン様の所有物だ。あとこの傀儡の事に関しては口外しないよう徹底して欲しいと仰せだ。何が起こってもな」
どうやら当の傀儡王様はやろうとしている事を話すつもりは無い様だ。確かに、この世界の警察組織相手に『勝手に悪党を見つけて殺して回る』とは言えないだろう。面子も何も立たなくなってしまう。
所長は困惑しながらも頷いた。
「分かりました。傀儡王様の勅命とあれば、なんなりと」
しかしチョロいなこの所長。こんな権力持つのは初めてだ。正確にはその権力者の道具な訳だけど。テンションが上がってきた。
「これで僕は、晴れて法に縛られぬ保安官ってわけだ。ダーティーハリーって呼んでくんな、所長」
「それ以上口を開くな。忘れてくれ所長」
「は、はぁ……大丈夫、なんですよね……」
所長は困惑し、言葉に詰まった。
◆
「ちょっとテンション上がってしまって、口走っちゃっただけじゃないですか」
ガードの建物を出てからミリオンは少しご立腹だ。
「いいか!貴様が変なヤツだと、この私が変なヤツに思われるんだぞ!さてはすぐ調子に乗るタイプだな!ダーティハリーってなんなんだ!」
「それは法にさばかれぬ悪をやっつける正義の……」
ビービービー!
先程帰り際に貰った、ガード同士の会話を聞くことが出来るという石板が鳴り出す。
ミリオンは話を切り上げ、黒い石板を指差す。
「ハッ、早速事件のようだな、貴様の手並み、拝見させてもらうとしよう」
黒い石板に手をかざすと光り出し、音声が流れてくる。
『グランスト通りの3ブロックで立てこもり事件が発生!犯人は3人組!人質は居ないようですが生け贄魔法で身体能力を強化している犯人もいる様子!人形じゃ歯が立たない。至急応援求む』
「わあ、やばいじゃん、こわ……」
「呑気な感想だな。だが、お前が行くんだよ」
「えっと、僕この世界初めてで、どこ向かったらいいか」
ミリオンは自らの左のこめかみをトントンと叩く。
「私の真似をして、目的地を言ってみろ」
言われた通りにこめかみをトントンと叩き喋る
「グランスト通り3ブロック」
すると左目の視界が緑色になり、目的地と思われる場所から光の柱が立っているのが見えた。
「なにこれ、すご……ロボコップかよ」
感動しているとミリオンが彼女そっくりの人形を手渡してきた
「なんとかわいい。僕へのお守りですか?」
「バカか。これはお前を作った余りの金属で作った通信人形だ。こいつを通して貴様の活躍を観させてもらう。それにどこでも私と会話もできる。聞きたいことがあれば聞いてくれ」
僕はミリオンの人形……ミニミリオンを胸ポケットにしまう
「貴様なら現場まで走れば5分程でつくだろう。いいか?何があっても怖じ気づくなよ。貴様は無敵なんだからな。私は馬車で帰るが、問題あるか?」
直接ついて来ないと言うことは、それほど僕の機能に自信があると言う事だろう。
ならば僕もそれを信じるだけだ。
「ノープロブレムですよ。ボス。僕に任せてくださいよ」
「誰がボスだ」
ミリオンに見送られて僕は脇目も振らずに走り出す。
おお、全く疲れない。これなら確かに5分で現場につきそうだ。
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