レベルアップ

『テテテテッテッテーーーー♪―――――レベルが上がりました』


 ん?

 何処かで聞いた事ありそうなラッパの音色と女性の声が頭の中で突然鳴り響く。



『テテテテッテッテーーーー♪―――――レベルが上がりました』

『テテテテッテッテーーーー♪―――――レベルが上がりました』

『テテテテッテッテーーーー♪―――――レベルが上がりました』

『テテテテ…………』



 なかなか鳴り止まないラッパの音色に軽い頭痛を覚えた。

 だがレベルが上がることは良い事だ。

 MMOでは回避装備でトラッシュ巡りとかして取り敢えずレベルは即カンストにしてたな。


『ステータスオープン』


 名前 特殊合成用進化素材(虹)ニルヴァーナ

 種族 悪魔 LV48

 HP 999/999

 MP 999/999

 スキル 合体(LR)究極進化(LR)覚醒(LR)邪眼(UR)高速浮遊移動(SR)

 称号 転生者 

 SP 480


『ほっほぅー、レベルが上がると状態異常やHPは回復するのか』


 継続ダメージを日光から受けて削れていたHPは回復していた。

 ただ気になるのがHPとMP、レベルが48も上がってるにも拘わらず全く上がっていない事。

 それにしてもレベル上がりすぎだろう。

 あの黒猫ボーナスキャラだったのか、それとも実は強敵だったのか。


 強敵―――――



 強敵ライバルと書いて強敵ともと呼ぶ奴とはそんな関係だった。

 



 と言う事にしておこう。


 俺達は死闘を繰り広げた。

 そう、そして黒猫……ノワール、黒猫と言えばノワールだな。

 うん。

 俺とノワールは互角の攻防を三日三晩繰り広げ、体力は底を突き、最早二人ともこれ以上戦えない。

 お互い次が最後の一撃――――


「にゃにゃにゃにゃー(炎殺黒猫波~~~~)」


 炎殺黒猫波――――

 それは自らの命を地獄の黒竜に喰わし一時的にその力を借り受け現世に地獄の炎を顕現する禁断の技。


『――――まずい!!』


 ノワールの炎殺黒猫波が周辺全てを焼き付くさんとする。

 追い込まれた俺は遂に封印されし邪眼を開眼してしまう。


『邪眼の力を舐めるなよぉ~~~~!!』


 急激に高まる俺の小宇宙コスモ!!

 残る全てをこの一撃に賭ける!!!


『ジャ・ガーーーーーン!!!!』


 俺の瞳から放たれた金色の光にノワールは飲み込まれていった。


「にゃにゃにゃにゃーーー(あんたとはもっと違う形で出逢いたかったぜ……)ガクッ」


『ノワーーーーーーール!!!』


 お前の事は決して忘れない。

 黒猫ノワール俺の初めての強敵とも――――



 俺は手頃な長さの木板を十字に組上げると地面にブッ刺す。

 そして石でその木片に刻み込む。


『ノワールここに眠る』


 と。


 少しの間黙祷を捧げると、ぴゅーーーっと風が吹き抜ける。

 荒廃した大地には何も無く、あるのは瓦礫の山と一人のおとこが眠る墓一つ。



『今度会ったら一緒に酒でも酌み交わそう……ノワール』



 俺はノワールの墓を背にその場を後にする。

 じわりと瞳に滲む汗。


『ちっ………砂が目に入っちまったぜ…………ぐすっ』



 ノワール。

 お前の事は忘れない。



「おい!!居たぞ!!星形の化け物だ!アイツで良いんだな?」

「そんだ。おら見たんべさ、幼気な黒猫をあの星形の化け物が、んだいたぶり、挙げ句の果てに目からものごっつい光線を出していたんだべ。ほしたら光線がががががががーーーーーって全部この辺を更地に変えたんだぁ~~!おっらほんっとおっかなびっくりしたべさ~~!!」


 ん?

 人が感傷に浸ってたのに何だか周囲が煩いな。

 一体全体何なんだ?



「思ったより小さいな……」

「侮るなよ!王都の一角を更地に変えた化け物だ!!!」


 人間達が俺を指刺し何だか言っている。

 その後ろにはごっつい鎧を着込んだ集団ががっちゃがっちゃ金属音を立てながら走ってきている。


「第三騎士団到着しました」

「良し、一班二班は包囲しろ三班は逃亡を阻止しろ。瞳の正面には立つなよ!!」

「「「「「了解!」」」」」

「行け!!」


 瞬く間に俺はむっさいおっさん達に包囲されてしまった。


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