一体俺が何をした。

『一体俺が何をしたって言うんだ!!!』


 くそ、言葉が通じないってのはもどかしい。

 全くコミニケーションが取れないと、こうも辛い物なのか。

 俺は何も悪くない!!

 俺は只、只強敵ともと死闘を繰り広げただけなのに。

 只それだけなのに………。


「油断するなよ!!」

「形はちっさいがくっそ魔力が高いぞ」

「鑑定未だか!急げよ!!」

「こいつ動くぞ!!」


 ふつふつと怒りが沸いてきた。

 これはノワールの死に対する冒涜だ。


 ジリジリと鎧を着込んだおっさん達が俺への包囲を縮めてくる。

 俺はゆっくりと目を閉じそして――――開ける!!!


『クワッ!!』

「うぉっ!」


 俺の視線から逃れようと鎧を着込んだおっさんその1が横へと転がる。

 なるほどコイツら、俺がジャ・ガーンを打ってる所を見たのか?

 さてはビビってるな。

 そら、ビビるよな。

 目から極太光線出されたら避けられないないもんな。

 俺はにじり寄ってくるおっさんズに身体を向ける。


『クワッ!!』

「うぉっ!」

『クワワッ!!』

「やべっ」


 ふふふ。

 ちょっと愉しい。

 何て言うか手押し相撲で行くぞ行くぞ行くぞってやってる感じ。

 だるまさんが転んだならぬおっさんが転んだだな。


 よし、じゃぁぼちぼち打つか…………必殺のジャ・ガーンを。


『邪眼スキル使用っと』


『邪眼スキルは現在使用出来ません。再使用まであと23時間5分2秒』


『ん?…………邪眼スキル使用っと』


『邪眼スキルは現在使用出来ません。再使用まであと23時間4分47秒』


 ……。


 …………。


 ……………。



『なーーーーーーーにーーーーーーーー!!!やっちまったなぁぁぁあああああ!!!!おとこは黙ってクワッ!!おとこは黙ってクワワワッ!!!!!』


 ゴロゴロとおっさんズが俺の視線を交すため地面を転がる。

 おっさんズは「ヤバい」とか「うぉっ!」とか「ぬふーー」とか叫びながら転がりまわってる。

 わりと泥んこだ。

 そんなんで良いのか王都の騎士団よ。


 それにしても、まさかリキャストタイムが設定されているとは。

 このニルバァーナ……………ぬかったわ!

 とりあえず……『くわっ!』っと。


「うぉいっ」


 おっさんズは何とか俺の『クワッ』でやり過ごしているがこのままではいずれバレてしまう。

 俺がジャ・ガーンを打てないのを。

 こうなったらパターン青だ、いや待て。

 パターン青だとその後「使徒です」しか続かないから違う、プランBだ。


『プランB、フライングスター作戦発動!!!』


 タァータタタァータタッタタラタラッタラァー♪


『ニルバァーナ――――――――――発進!!』


 ニルバァーナはスキル『高速浮遊移動』を使った。


 ふよよよよよよ~。


 ふよよよよよよよよよよ~~~~。


 45センチルの俺の身体が垂直に音も無く宙を駆る。

 どんどん高度が上がっていく。

 地上ではおっさんズ達がぽかんと口を開けて俺を眺めてる。

 まさか海洋生物が空を駆けるとは思わなかっただろう。


『一応これでも星なのでね』


 何て言ってみたりして。

 ふふふふ。

 空を飛ぶって初めての経験だけど気分がいいもんだね。

 地上で俺の方を指刺してるおっさんズを見てると『見ろ。人がゴミのようだ』とか鉄板の台詞を言いたくなってきた。

 おっさんズが頻りにこっち指刺して何か叫んでる。

 何なら後ろの方の奴逃げだし始めてるじゃ無いか。

 このニルバァーナの空を駆る姿に恐れを為したか。

 

 恐れ!戦け!!

 愚民共よ!!!

 ノワールの死を冒涜した罰だぁぁああ。


『フハハハハハハ、今頃この素材の王ニルバァーナ様の恐ろしさが分ったかぁぁあああああ』


 俺の方を見て遂におっさんズは悲鳴を挙げだしている。

 その様子は錯乱している様で、流石にそこまで恐れられると心優しいニルバァーナさんも傷ついちゃうよ。

 ってか俺空に浮いただけなんだけどな?

 ヒトデが空を浮いたらビビるのだろうか?

 うん?

 何だか違和感が………。

 どんよりとした影が突如上空を覆う。

 雨雲?

 何て思って振り返ったら、そこにあったのは大きな大きな口でした。


「ガルルルルルルルウルルルルウルル!!!!!」


『ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああ



 ――――――ぱく。 



 ――――――――――――――』



 しーーーーーーーーん。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る