第33話
「思うようにいかないもんだな」
「そうですねえ」
ユグドを連れ、風の大陸に戻った後、バアリールへの取次ぎを頼むために眷属を探しているのだが、一向に進展が見られなかった。
何度か遠くにモンスターの影を捉えたこともあったのが、こちらがたどり着く前に眷属が駆けつけ、退治まで終えて立ち去ってしまっていた。ユグドも神の端くれとはいえ、戦闘を目的にした存在ではない。ステータスが人族よりも上とはいえ、本質は森の守り神なので、豊穣や生態系のバランスを管理する立場であるため、敏捷性に優れているわけではない。
対して、守護神の眷属は、モンスター退治を目的に生み出された者達らしく、ステータスが高い上に技術も高い。人族に被害が出ないように対処するため、敏捷性も高いのだそうだ。
にしても、迅速な対応にも程がある。少しは手を抜けよ。
ユグドも、バアリールの眷属とは直接的なつながりがないため連絡も取れないらしく、偶然に頼るしかないそうだ。かといって、バアリールに直接祈りを捧げたところで、順番待ちの長蛇の列。いつ気づいてもらえるか定かではない。
俺の祈りに、ユグドが駆けつけてくれたのも、分身体を作れるからこそだったらしい。
「ところで、どうやってモンスターをあんなに素早く見つけることができるんだろうな?」
スキル〈発見〉にも、モンスターがポップする前に気配を先取りする能力があるが、エリア全体を捉えながら、気配を探っているのだろうか?
「どこの大陸も、精霊と守護神様とのつながりを利用して、情報収集されていると聞いたことがあります。バアリール様の場合は、風と木の精霊と関係が深いはずですので、水の中に潜む魔物を見つけるのは苦手みたいですが、そこは水神様が目を光らせていますので」
「ほー。じゃあ、精霊は、そこらじゅうにいるってことか?」
「そうですね。幼いものなら、そこいらの芽吹いたばかり草木にでもいるほどです。意思の疎通ができるほどの精霊でも、無数にいますね」
「じゃあ、その精霊に頼めば、バアリールに取り次いでくれるんじゃ?」
「あー。そういったことができる精霊は、大精霊にまで成長しなければなりませんので、そこまでのものとなると、数は極端に少なくなってしまいますね」
「ままならないもんだな」
この世界の精霊は、幽霊に近い。魂だけの存在とでも言えばいいのか。見えないし、感じることもできないので、俺にとっちゃ、ダークマターと大差ない存在だ。いるとわかってるだけでも、なんぼかマシ、ではあるが。
「でも、そうですね。闇雲に眷属様を探すよりは、可能性は高いかもしれません」
「ん? あてがあるのか?」
「はい。わたしも、根本は精霊ですから」
「なるほど。本来は世界樹の精霊だもんな」
御神木や御神体といった各地のシンボルチックなものがある場所なら、大精霊が宿っているだろう。このまま、モンスターがすぐ近くにポップするのを待つよりかは、建設的かもしれない。
それに、目的地に到着する前に眷属に遭遇できる可能性もあるので、現状と差異もない。目的地がある方が、こちらとしても区切りをつけやすい。
「じゃあ。大精霊が居そうな場所に、案内してくれるか?」
「かしこまりました」
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