第4章 必敗
第32話
「じゃあ、とりあえず、ガラックの指示に従って、旧ヴェルクヴェルクの復興をお願いします。できれば、農作物も育てて欲しいけど、都市機能の充実を優先でお願いします」
ダークエルフ、忍びの一族、ドワーフによる最初の共同作業として、俺が依頼したのはこれだった。
技術的なことはガラックに、マンパワーにかんしてはエルフと忍びの一族に頼る。とはいえ、ダークエルフも忍びも数は多くない上に、肉体労働向きではない。当分は、素材集めなどの下準備がメインとなるだろう。
単純労働に向いている鬼人族か獣人族の協力も得たいところだ。
「かしこまりました。農耕地の開拓は折を見てということになりましょうが、地下でハナレの作物が育つのかの実験だけは先行して行っておきます」
「うん。その辺の管理は、マサユキ殿に頼むとしよう。ガラックは技術指導としての役割の方が大きいからな。相談役として、ソロリも頼ってくれ」
ハナレの作物は、魔力によって育つ。そのため、地下でも栽培が可能なのではないかと考えたのだ。ただ、さすがに、そんなことを知っている者はおらず、やってみないことにはわからないため、マサユキに依頼しておいたのだ。
旧ヴェルクヴェルクの領主はガラックである。彼を頂点に、ソロリとマサユキが実質的な指揮を執る手筈となっている。
ガラックも了承済みだ。そもそも、ドワーフの王は、鍛冶の腕で決められるシンボル的な存在なので、決定権こそあるものの、治世は信頼できる臣下に任せるものらしい。
俺が各地の神を説得して回る間に、世界の工場として機能する下準備を終わらせる腹積もりなのだが、どこまで出来るのかは未知数だ。
「それじゃあ、ユグド。バアリールの所まで案内してくれるか? それとも、ユグドと一緒で、祈れば来てくれるのか?」
「わたしは世界樹が本体ですので、各地に分身体を送れますが、バアリール様はそのようなことはできないかと……。それに、お忙しい方なので、お越しいただくのは難しいかもしれません。せめて、コウ様が特別な存在であると伝えられれば良いのですが、それもバアリール様次第ですからねえ。眷属様を見つけるのが手っ取り早いのですが、あの方々も魔物討伐で奔走されていますから、少々時間がかかってしまうかもしれません」
この辺は、予想通りだ。
大陸の守護神だけあって、人々からの祈りも多いのだろう。それに対処するのに、時間がいくらあっても足りない、といったところか。
ユグドにも祈りが捧げられているが、管轄があるらしく、対処できる範囲も限られているようである。
結局、権限の大きい者に、仕事が集中しているのだろう。
さしずめ、プロデューサー兼ディレクターがイネト。アシスタントディレクターがアマト。各部署のチーフが各大陸の守護神。
開発と運営にわかれているとしたら、運営チームが各大陸ごとの神々、開発チームが大陸に縛られない神々といったところか。この辺は、役割がまだ把握し切れていないので、判断が難しいところだろうか。
どちらにせよ、各大陸ごとの神々は活動を止めさせ、大陸に縛られない神々は残す方向性でいくのが妥当か。
今は、ざっくりとこの方針でやっていくとしよう。
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