第31話
衣食住の最低限の基礎は確保できそうだ。
基礎的なレシピは失われていない上に、ガラックという優秀な職人も仲間に出来た。ガラックほどではないが、ダークエルフの里と忍びの隠れ里、ハナレの里にも〈裁縫〉〈木工〉〈調合〉を中心に職人がいる。ガラックが〈鍛冶〉と〈細工〉に傾倒している関係で、バランスが良い。
衣服と住宅にかんしては、質を考慮しなければ問題にならないだろう。
加えて、モンスターが増えた後で必要になる武器と防具も賄えそうである。
食にかんしても、森の知識があるダークエルフと、農耕の知識がある忍びの一族の協力があれば、どうにかなるだろう。
ただ、どちらも、量をじゅうぶんに確保できるかは怪しいところなので、一度に神を減らし過ぎるわけにはいかない。
問題は、すでに出回っている神器級のアイテムが多すぎる点なのだが、ユグドの話だと、ある程度は神の意志によって消失させることができるようである。
「さて。どの神から退場してもらおうかな」
忍びの隠れ里の一角に、部屋を用意してもらい、思案に耽る。
魔王の誕生というインパクトを出すためには、けっこうな数の神に退場してもらわなければならない。
しかし、減らし過ぎると、人族が自立する前に滅んでしまう可能性が高くなる。
「魔王を登場させるタイミングで、モンスターの脅威が周知されていないと、反応が悪くなるだろうから、モンスター狩りをしてる各大陸の守護神はマストだよな」
実際は、魔王と徘徊するモンスターに関係性がないので、魔王がモンスターを操っているように見せる工夫もしなければならない。
あー。そもそも魔王として表舞台に立つキャラが必要だな。
「大陸守護神にモンスター狩りを中断してもらってる間に、魔王候補を探す、って感じだな」
メニューの中にあるメモ機能を活用し、考えを整理していく。
ちゃんとソフトウェアキーボードが使えて良かった。
今後のロードマップとなる項目を列挙しつつ、考えをまとめていく。
「なあ? アマトには会えるのかな?」
この部屋には、俺の他にはユグドしかいない。
本当は、各自部屋を用意してもらっているのだが、ユグドは緑山さんに俺の補佐を言いつけられているので、指示がない限り一緒にいる。
大陸の守護神に話しをつけに行く前に、緑山さんの代行で最高神を任されているというアマトには会いに行くべきだろう。おそらく、現在の状況を創り出した最高責任者であるはずだからだ。
「アマト様にですか? どうでしょうか? わたしも、直にお会いしたことはございませんので、何とも……」
「え? そうなの?」
「はい。わたし、神の中でも下っ端の部類ですので、風の大陸の守護神、バアリール様にも、滅多にお会いできないくらいなのです」
「前々から思ってたんだけど、この世界に、神って、何柱くらいいるのさ?」
「ううう……。申し訳ございません。正確な数は、わたしも把握しておりません。それに、様々な神の眷属も、創造主は御父上なので、わたしよりも立場が上の方もおられるほどなので、どこまでを神として扱うのか、正確なところはわからないのです」
「いやいやいや。あの人、どんだけ右腕準備したんだよ」
うーむ。それでも、ユグドとバアリールに面識があるんだから、まずはバアリールからが妥当かな。
ユグドに会えた時も、祈れば来てくれたし、案外ちょろいかもしれない。
アマトには、バアリールを介して接触を図るとしよう。
さてさて。それじゃあ、本格的に、神の右腕を減らす作業に入るとしますかね。
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