第10話
『なるほどね。さすがコウさん。根っからのクリエイターだ』
大まかな道筋を考え、助言を求めようと創造神に連絡を入れた。最初こそ、そんなゲームじゃあるまいしと、見えもしないジト目を向けられている感覚があったが、話を進めていくうちに、緑山さんも食いついてきた。
というか、途中からすっかり乗り気になっていた。
「それで、行動に移る前に、あちこち見て回ろうと思うんですけど、ひとつ問題がありまして」
『ん?』
「Greenhorn-onlineの場合だと、大陸を区切るエリア毎に、ボスを配置してるじゃないですか。こっちの世界って、その辺どうなんです?」
『あー。大丈夫大丈夫。そんなのいないから。むしろ、エリアボスのモデルって、守護神の眷属達だから、倒すべき相手っていうより、コウさんの計画だと仲間に引き入れる相手だね。守護神とその眷属は、そもそも、人族じゃ倒せないモンスターが生まれた時に対処させるのを目的に創ったから』
「良かったー。モンスターの発生理由を考えたら、そういった自我を持ったモンスターはいないんじゃないかな? とは思ってたんですけど、だいぶ気が楽になりましたよ」
『ああ! でも、ボスって言って良いのかな? 自我を持つモンスターはいるよ?』
「へ?」
『モンスターの核になるものが何かによるんだけど、魔力が大量にこもった秘石だとか、神の霊力が宿ったアーティファクトみたいなものを取り込んでる場合は、ボスって雰囲気のモンスターが生まれちゃうんだよね。Greenhorn-onlineでも、中級クエスト以上のボスクラスってイメージしてもらうといいと思う』
「マジっすか……」
『それとは別に、そっちの世界の生き物が瘴気に侵された場合も、似たような感じになるかな。元の生き物の生命力によって強さも変わるけど、それも基本的に中堅クラス以上のモンスターだと思ってもらうといいかも。一番厄介なのは、神話級の生き物がモンスター化すると、神に匹敵する強さになっちゃうパターン』
「そういえば、Greenhorn-onlineにも邪竜とか堕落王とかいましたね」
『そうそう。それ! 古いやつらは封印してるから、瘴気が抜けるのを待てば元に戻るとは思うけど、新しい邪竜や魔精霊が誕生してないとも限らないからね。その辺は注意した方がいいかも』
「了解っす。あと、一応聞いておこうと思うんですけど」
『うん。何です?』
「協力してもらえそうな、人族に心当たりありませんかね? 神の恩恵に頼り切ってる人ばかりじゃないと思うんですよ」
『なるほど……。あんまり期待できそうにないけど、どの世界にも奇特な輩はいるものだもんね』
「それ、創造神が言っちゃうんだ」
『いやいや。僕、未熟者の神だよ? むしろ、そういう
「……なんか、妙に納得しちゃいましたよ」
『でしょ?』
「それで? 心当たりあるんですか?」
『うーん。どうだろう? 好奇心がありそうなのはドワーフだけど、あの子達は見栄っ張りな反面、厳格さも併せ持ってるからな。いたとしても、数は少ないと思う。好奇心という面からすると正反対の保守的な種族だけど、エルフは自立心も高いから、もしかしたら神の恩恵に頼ってばかりじゃないかもしれない。それに、そういうエルフだったら、集団で生活してると思うよ。どっちも長命種だから、協力者にするには向いてるんじゃないかな』
「他にいるのって、魚人種、鬼人種、有翼種、獣人種、って感じで合ってます?」
『そうだね。Greenhorn-onlineにいる人族と同じだから、見たらすぐにわかると思うよ。でも、僕が言うのもなんだけど、陰謀には向かないと思うよ?』
魚人種は、上半身は人間で下半身が魚のマーメイド族と、人型ではあるものの、全身に魚の特徴が色濃く残っているサハギン族がいる。これに加えて、水の精霊に近いウンディーネ族もこの世界では魚人種に数えられる。
鬼人族は、ゴブリン族とオーガ族。ただ、どちらもモンスターとしても存在する。見た目も似ているのだが、知性は雲泥の差であり、人間とゾンビが違うのと同じように、見ただけで判別可能だ。
有翼種は、少々特殊な存在だったはずだ。カラス天狗、天使の2種族がいるが、まったく異なる生態系を持ち、文化も異なる。仲間に引き込めれば頼もしいのだが、どっちも扱いづらい種族だった記憶がある。
最後の獣人種は、種族も多い。オーク、コボルト、リザードマンといった獣の特徴が強い種族もいれば、猫耳族、兎人族のような人間の特徴が強い種族もいる。彼らは各種族ごとに生活しており、互いに争うこともない。こちらも、オークやコボルト、リザードマンといったモンスターが存在するが、ゴブリンやオーガなどと同じく、言葉が通じるためすぐにわかる。
「やっぱり、ドワーフかエルフが無難ですかね」
『だね。あとは、やっぱり、人族の最大派閥である人間族からも、誰か見つけた方がいいんじゃない?』
「そこなんですよねえ。最終的に、魔王を討伐してもらわないといけないけど、その辺器用にやれそうなのって、人間なんですよねえ」
『一番短命で非力なぶん、バランス良いからね』
「でもなあ。この世界で、勇者になれそうな人間、見つかるかなあ?」
神の恩恵にどっぷり浸かっている街の住民を見て回った結果、人口は多いのだが、それだけという印象は拭えない。これから起こす悲劇の数々を乗り越えてくれるのかも、かなり不安なのだ。
『それな……』
緑山さんも、あまり期待していないらしい。
それでも、勇者とするのに相応しい種族となると、人間になってしまうのだ。これは、別に自分が人間だからではない。
世界が戦いに包まれる。モンスターで溢れかえる。神の消えた世界で、生活を守るために立ち上がる者が出るだろう。出てもらわないと困る。
そうなった時、横のつながりは重要になる。大陸間の物資のやり取り、情報のやり取り、などなど。
世界規模で戦える種族が主力になってくれないと困るのだ。
そして、全ての大陸で生活しているのは、人間だけなのである。他の種族も、各大陸に散らばっているが、それは多くが個人である。種族単位で生活圏を築いているのは、人間だけなのだ。
短命であるが故に、数を増やさなければならないという単純な理由によって。
……にしても、自堕落な人間ばかり増えてる世界だぞ?
一抹の不安? 不安しかねーな。
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