第9話
方向性が定まったら、何だか楽しくなってきたぞ。
これから苦難にさらされる人族の皆さんには悪いが、これも創造神の意向なので、諦めてもらおう。そう思わなきゃ、やってられん。
とりあえず、問題は、神様が働き過ぎていることにある。
Greenhorn-onlineの中にも、神々が登場する。神話の中だけのものもいるが、多くはクエストの発注者として各地に配置されている。この世界のことを知ったら、色々と設定を変えた方が良さそうだな。
待てよ?
あの神々も、実際にこの世界にいるのだとしたら、八百万とまではいかないながらも、かなり多い。
大陸だけでも6つあり、それぞれの大陸に守護神と森の守り神がいたはずだ。それだけで12柱もいる。守護神には眷属も多数おり、神に近い扱いだったはずだ。
大陸に縛られない神も多い。季節ごとに女神がいたし、職人ごとにも神がいた。豊穣の女神、武神、水の神、火の神、風の神、土の神、光の女神、闇の女神、などなどなど。とにかく多い。その上、こちらにも眷属を持つ者が多かったように記憶している。
「神の右腕、多すぎるな」
当面の目標は、創造神イネトの右腕たる、この世界の神々を減らすことになりそうだ。減らす、といっても、消滅させるわけじゃない。
ちょっと仕事を休んでもらう程度だ。
しかし、どこまで数を減らすべきか。この辺は、アシスタントディレクターとしての嗅覚が試される。数値を入れてシミュレーションしながら、というわけにもいかないので、少しずつ進めなければならないだろう。
さてさて、何本までなら許されるだろうか。
「急に、神様が働かなくなったら、さすがに混乱するか」
少しずつ進めていくにしても、影響は大きい。何しろ、神の恵みを取り上げようと言うのだ。
神の恩恵が得られなくなった時、労働するということを知らない世界の住人は、何をするだろうか?
「働こう! とは、ならんよな」
たぶん。消えた神に祈りを捧げようとするだろう。消えた理由を考えるよりも、どうすれば再び神の恩恵を賜れるかに心血を注ごうとするだろう。おそらく、そこに生産性はない。あったとしても、人身御供だとか、変な祭事だとか、災いのタネになりそうなものに偏りそうである。
下手したら、すぐに神が戻ってきてくれると信じ、ただ祈り続けるだけで、他には何もせずに滅亡に向かってしまうかもしれない。
「神様が消える、わかりやすい理由が要るな」
困難を作り、乗り越える方法も伝える。
マッチポンプも甚だしいが、だいたいのゲームは、そういうものだ。
プレイヤーが強くなる方法を作り、成長に合わせて難敵を配置する。そこにストーリー性を持たせるも良し、自分達に任せるも良し。
今回は、ストーリー性を持たせる必要はないだろう。
しかし、神様が、簡単には戻ってこないことを大々的に知らしめないといけない。
うーん。
と、しばらく悩んでみたが、答えはすでに用意してある。してあるのだが、さすがに安直すぎないか? という気持ちも強い。
でも、やはり、王道でいくべきだろうと決断する。
バランス調整に意外性は要らないだろうという判断だ。
「うん。やっぱ、魔王を配置して、神様を封印してしまったことにしよう」
手頃な魔王が見つからなければ、自分でやらなければならなくなるが、致し方ない。その辺は、今度緑山さんに相談してみよう。
「魔王を登場させるとなると、人族の脅威は、モンスターってことにできるな。うん。まずは、守護神を説得して、モンスター駆除の対象を減らしてもらう。モンスターが増えた頃に、街の防衛方法も伝授しないとだな。この辺の人材も探さないとか……。一気に進めるのは俺の体が足らないから、1エリア毎かな?」
ゲームのシステムとしてメニューに用意してあるメモ機能に、思いつくままやることリストを書き連ねていく。
手が止まらない。
こういう時は、やっぱり、自分はゲームクリエイターなんだと実感してしまう。
「さーて、忙しくなるぞ」
大枠が固まったところで、両手を天に突き上げ伸びをすると、一声上げていた。
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