王太子アルフレッドsideストーリー2

ティファ達がアルフレッド達との会談を終え王城を去った後、現在、レオン第二王子とマリーは、マリーを床に正座させてレオンがマリーを説教をしていた。昔よく見た光景に、アルフレッドは思わず苦笑してしまう。


「全く……お前は何故いつもそう軽はずみな行動をするんだ?」


もうこのセリフはかれこれ4、5回目ぐらいだろうか?マリーももう聞きたくないと言わんばかりにそっぽを向いて不貞腐れている。が、その態度が余計にレオンの説教を加熱させてるだけなのだが、まだまだそこは子供だなと、アルフレッドは密かに溜息をつく。


「お前は自分の立場が分かっているのか!?お前はこの国の第一王女なんだぞ!?」


「分かってるわよ!?だから!王女として国に出るスライムちゃん達を何とかしてるんじゃないの!?」


  とうとう同じ説教を繰り返すレオンにキレたマリーが怒鳴って反論する。実は、ティファ達には先程冗談とは言ったが、マリーは本当に自分達の実の妹で、この国に唯一の第一王女のマリーアンヌ・ギルドディアである。

  と言っても、ティファ達に説明した事のほとんどは真実である。マリーが多数のスライムを引き連れ王城にやって来て大騒動になった事実は確かだし、その後、アルフレッドがエルーシャを頼ってマリーを調べさせたのも事実だ。

  唯一違うとしたら、家を追い出されたところだろう。アルフレッドは血の繋がる兄弟にレオンとマリー。それ以外にも側妃が産んだ血の繋がらぬ弟達が沢山いるが、1人を除いて皆仲良く兄弟としてやっているが、それでも何人かの貴族達は義弟達を利用して甘い汁を吸おうとする輩はいる。だから、レオンとマリーはそんな泥沼な争いでアルフレッドを蹴落とすつもりがない為、さっさと王位継承権を捨て、マリーに至ってはこの国で冒険者をやってる事がバレるのがマズいので、他国に嫁に出したと宣言している。この事実を知ってるのは王族と、王城に長年仕える者と、一部信頼出来る貴族だけだ。


  そんな弟と妹の喧嘩を微笑ましく眺めていたアルフレッドだったが、流石にそろそろ止めてやろうと思って2人の間に入る。


「その辺にしておけ。レオン。マリーがスライム種に何かあったら止められない事は分かっていた話だ。それに、実際私達が人を襲うスライム種をどうにかするように頼んだのも事実だ」


「それも……まぁ……そうですが……」


アルフレッドに諭されて、レオンは無表情ながらバツが悪そうに下を向く。次に、アルフレッドはマリーの方を向く。


「お前だぞ。マリー。いくら王位継承権を捨てたとは言え、お前がこの国の第一王女である事実は変わらない。このレオンが未だに第二王子扱いされてるようにな。せめて、情報が入ったなら私達に相談ぐらいして欲しかったぞ」


「うぐっ……!?」


アルフレッドの言葉にマリーは言葉を詰まらせる。別に報告義務は存在してないし、アルフレッドなら王族特有のスキルで、マリーの居場所はすぐに分かるのだが、エルーシャにも報告せずに行ったのは自分の立場上マズかったとはマリーも思っている。


「それにしても……よくお前はイエロースライム達を捕獲したのがニールセンだと分かったな?」


アルフレッドはふと浮かんだ疑問を口にした。すると、マリーはしばしバツの悪い顔してそっぽを向いていたが、やがて軽く溜息を一つついて


「レオン兄様が偽名使ってティファ達に依頼をしたと知って、もしかしたらアスファルト領で起きてる事件とイエロースライムちゃん達の件は繋がってるんじゃないかって思ったわ。で、ここまで事件が起きていながら兄様達が対処出来ない程の相手となったら、自ずと犯人は絞られてくるわ」


マリーの言葉を聞いて、アルフレッドは渋い表情になる。自分が余計な事をしてしまった為、余計にマリーは事件に首を突っ込みティファ達に迷惑をかけるはめになった。次期国王で色々な王族特有のスキルを得ているとは言え、まだまだ自分は未熟者だと反省せざるを得ない。


「……もういいかしら。そろそろ帰らないとスライムちゃん達が待ってるし」


まだ若干拗ねた表情を浮かべているマリーに苦笑を浮かべるアルフレッド。レオンは溜息を一つつく。そんな2人の態度でもういいと判断したマリーはアルフレッドの自室を出ようとする。


「ところで、マリーは今後どうするつもりだ?」


  アルフレッドは最後にマリーに問いかける。マリーは声をかけられて立ち止まり、アルフレッドの方を振り向く。


「お兄ちゃんとして彼女達と一緒にいてくれると色々安心出来るんだけとなぁ〜」


アルフレッドはそれはニンマリと笑ってそう言うと、マリーはキッとアルフレッドを睨んだ後、「失礼しました!!」と叫んで、扉を音を立てて閉めて去って行った。


  そんな可愛い大事な1人の妹の新たな旅路を、アルフレッドは優しく微笑みながら見つめていた。

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