大盾使いの少女は狂気の領主の過去とその後を知る
その事件はニールセンはまだほんの10歳ばかりの頃だ。ニールセンの両親が家族である領地で商売兼旅行をしていた時だ。ニールセンの家族が泊まっている宿屋に山賊が押し入って来た。
「山賊達の目的はもちろん金と……自分達の性欲を吐き出す為の物を欲した。しかも、その山賊達の性欲のターゲットは……12歳以下の女の子ばっかりだったらしい……」
アルフレッドの言葉に、ティファ達は嫌悪感を露わにする。もちろん年齢問わず無理矢理女性を欲望の捌け口にするのは最低だが、それをまだ小さな女の子のぶつけるなんて気持ち悪いという感情しかティファ達には湧いてこない。
「それで……ニールセンは自分が囮になるから逃げろと妻とニールセンに言ったらしいが……その行動が良くなかった。まだそこに人がいると山賊達に教えるようなものだからね」
そのせいで、ニールセンの父親はもちろん呆気なく殺され、母親もすぐに見つかり、彼らの性欲の対象ではなかった為殺害された。ただ、ニールセンだけは
「今でこそあんな感じだが、ニールセンは昔は美少女に見間違えられるような容姿だったらしい。その為、山賊達の欲望の捌け口として選ばれ連れて行かれた」
山賊達はニールセンを女の子と勘違いして連れて行ったらしい。そして、連れて行かれたニールセンは、自分と同じ年代の女の子が、苦しそうに山賊達の欲望を受け止め絶望的な表情を浮かべているのを見て、自分も同じ事をされるという恐怖よりも、別の感情が芽生えたという。
「美しいと……まだ愛らしい顔立ちの女の子が、恐怖と絶望に歪む顔が美しかったと……奴は取調で嬉しそうに語っていたよ……」
まさか、被害者になった事が、彼の狂気の感情の元になってしまうなんて、誰が想像出来ただろうか?アルフレッドは軽く溜息をついて
「幸が不幸か……いや、そういう話ではないが、ニールセンは何もされる事なく、山賊を討伐する為に動いた騎士団と冒険者によって救出された。しかし、救出された後も、ニールセンはあの少女達の美しい姿が忘れられず、永遠に自分の物にしたいと考えた」
そして、ニールセンは両親の跡を継いで領主になり、必死で領主としての地位を確立させ、力をつける事で、あのような狂気の犯行に及んだという。
「最初は親を失って行き場を無くした女の子ばかりを狙ったが、それでは集まりが悪いと感じていた時に、闇ギルドの者と出会ったらしい」
闇ギルドの者はニールセンの犯行に協力した。あのキマイラも闇ギルドの者が提供したものだという。そんな事を平然とやる闇ギルドに、ティファは薄ら寒い恐怖感を覚える。
「これが、ニールセンが犯行に及んだ理由だ。どんな過去があって彼が歪んだにしても、あの男が行った事は重罪だ。闇ギルドの事でしばらく取調を行う事になるだろうが、数日後に斬首刑となるだろう」
アルフレッドは淡々とそう語った。ティファ達もそれに関しては特に反論はない。斬首という処刑が少し重たく感じるが、彼はそれだけの事をしたのだ。過去に何があったとしても、これはもう彼の自業自得でしかない。
こうして、ニールセンの過去やその後の措置も聞いたティファ達は、もう聞く事は無くなったので、アルフレッドに頭を下げてエルーシャと共に退室して、王城を後にした。
が、マリーだけは何故かレオン第二王子に残るように言われ、自分達と共に帰りたさそうにしていたが、逃げられないようレオン第二王子に首根っこを掴まれていたので、諦めたのか首と肩をガックリ落としていた。
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