大盾使いの少女のパーティーは王城に招かれる4

アルフレッドはチラッとマリーを見たあと、すぐにティファ達の方を向いて改めて語り始めた。


「色々問題が起きていると噂されてる場所に、マリーが向かったんだ。万が一マリーの身に何かあれば大変な事になるのは君達にも想像がつくよね?」


アルフレッドの言葉にティファは首を縦に振る。今は家から出て冒険者をしているとはいえ、マリーは公爵家の娘で、王太子と第二王子が妹のように可愛がってる存在である。そんな彼女に何かあったとなれば大変な事になるのは理解出来る。


「だから、私は君達をマリーの護衛に選んだ」


アルフレッドは真剣な瞳でティファ達を見つめてそう答えた。しかし、何故アルフレッドがそこまで自分達を期待しているのか分からず戸惑いの表情を浮かべるティファ。


「何故自分達が選ばれたのか分からない顔をしているが、ティファ君。君はハッキリ言ってこのギルドディア内で1番の防御力を持っている。間違いなく守りという点では君以外に適任者はいないんだよ」


アルフレッドにそんな事を言われ、ティファは思わず恐縮してしまう。が、何故かアルフレッドは急に困った表情を浮かべ


「ただ、マリーの性格上普通に護衛の依頼を出せば追い返すの明らかだ。だから……私は君の優しさを利用する事にした」


アルフレッドの言葉に、リッカの目が鋭くなる。王太子をあからさまに敵視して睨む姿に、ティファはアタフタするが、アルフレッドはそんなリッカを気にせずに話を進める。


「君の事だから、マリーがどれだけスライムを大事にしているか分かれば、マリーの為に動いてくれると思った。だから、あのような達成不可能な依頼を出して、マリーと会わせるようなマネをした。そして……あわよくば、ティファ君の見た目に惹かれてアスファルト領で事件を起こしてる主犯を釣れないかとも考えた」


アルフレッドの言葉に、リッカはますます目を鋭くさせる。それは、リッカだけでなくエルーシャやマリーも同じようにアルフレッドを睨んでいる。言われたティファはどしたらいいか分からずアタフタしている。


「もちろん。あくまであわよくばの考えで、基本はマリーを守ってもらいたかったという気持ちには変わらない。ただ、君の心を利用して、君を主犯を釣るエサと考えた事実で、しかも結果的に事件に巻き込んでしまった。本当に申し訳なかった」


アルフレッドは立ち上がり、ティファに深々と頭を下げて謝罪した。そんな王太子の対応に、ティファも立ち上がり


「頭を上げてください!?王太子殿下!?私は気にしてません!殿下も早くこの事件を解決したかった気持ちも分かりますし!私も解決に協力出来て良かったと思います!何より、最初から護衛依頼で出されてもマリーさんの事は放っておけなかったですし!?」


ティファは王太子に必死に頭を上げてくれるように訴える。王太子として、早く事件を解決する為に色々考えた結果であるのは今ので十分理解したし、マリーの事はどんな風に出会っても放っておけなかったのは間違いない。だから、ティファは王太子のした事を気にしていなかった。


「……それでも、私が非情な事をした事には変わらない。報酬は必ず払う。なんだったら君が望む額を払っても構わない」


「あっ、いえ、報酬は普通に提示された額で十分ですから……」


「それはダメよ」


  報酬の話に口を出したのは意外にもマリーだった。マリーは紅茶を一口飲み


「王太子が非を認め頭を下げて謝罪したのよ。もしここで貴方が慰謝料を受け取らなかったら、王太子がずっと貴方への罪悪感に苛まれる事になるわ。貴方はそれでもいいの?」


マリーの言葉にティファは言葉を詰まらせる。ティファは改めて慰謝料とは何のためにあるのかを実感した気分だった。しかし、ティファは今回の事をあまり気にしてないのに、慰謝料を貰うのも変な話だし、どうしたものかと悩んで、ふとある提案を閃く。


「あの……やっぱり報酬は提示された額でお願いします。その代わり、お願いが二つあるんですが聞いてくれますか?」


「あぁ、私で叶えられるのなら」


ティファの言葉にアルフレッドは承諾の返事をする。それを聞いたティファはニッコリと微笑みを浮かべ


「それじゃあ!一つは、王太子殿下は今後も何かあったら私達に依頼を!つまり!私達の上客になってください!それから!私達はパーティーホームを探しているので、もし良ければ私達の代わりにパーティーホームを探して、そこを私達が気に入れば、私達が購入するまでとっておいてもらえないでしょうか?」


ティファの提案に全員が目を見開いてポカンとする。そんな皆の様子を見てティファがやっぱり図々しいお願いだったかな?と慌て始める。


「あのぉ……?やっぱりダメでしたか……?」


「いや……ダメではないが……むしろそんなお願いで本当にいいのか……?」


  ティファの出した願いは、一つ目はむしろアルフレッドにとっては好条件と言えるお願いだ。なんせ、ティファ達のような優秀な冒険者パーティーを頼りに出来るのだから。二つ目に至っては、王太子側にはデメリットらしいデメリットがない。唯一言えるとしたら、忙しい合間をぬって探さなくてはいけないぐらいだが、別に本当にそれぐらいだ。むしろ


「パーティーホームを私が購入して君達に与えたって問題ないんだぞ?」


「いえいえ!?そこまでしていただけませんよ!?王太子殿下の依頼なら、他の国に行くようなワクワクする依頼がありそうですから!こっちからも望むところですし、なにより…………夢のパーティーホームですから!皆で頑張ってお金稼いで購入出来たって達成感を味わいたいじゃないですか!!」


ティファがギュッと握った拳を上げてそう宣言すると、再び周りがポカンとした表情になる。が、すぐにアルフレッドが吹き出して大爆笑し始めた。


「ぷっ!?くくくく……!?アッハハハハ〜!!?そうか!そうか!ワクワクする依頼と達成感が欲しいからか!なるほどなるほど!君は心底冒険者らしい!エルーシャが気にいる訳だよ!」


アルフレッドはひたすら涙を流して爆笑していた。他の皆も、やれやれと言わんばかりに苦笑しているので、ティファはどうしたらいいのか分からず困惑していると


「分かった。君の願い通りにしよう。まぁ、依頼に関してはエルーシャが査定して、君達が受けられるかの判断になるかの査定はあるが、私から依頼がある時は優先的に君達にお願いするとしよう。ホームパーティーの件も任せてくれ。私がとっておきの物件を紹介しよう」


ようやく復帰したアルフレッドが、ティファのお願いを聞き入れた。こうして、ティファは王太子アルフレッドをも上客にしたのだった。

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