大盾使いの少女のパーティーは王城に招かれる3

「さて、では他に聞きたい事はあるかな?」


もうこの話題で話す事はないだろうと思い、王太子アルフレッドは笑顔でティファに問いかける。ティファもこの話題で深掘りして聞く事もなかったので、今度は順序通り質問していく事にした。


「あの……では……最初に私達にあんな依頼を出したのは何ででしょうか……?」


色々周りから聞かされてはいるが、改めて王太子の口から真意を聞くべきだとティファは思った。王太子はチラッとマリーの方を見た。


「そうだね。まずその説明をするにはマリーと私達の関係を説明する必要があるだろうね」


ティファはチラッとマリーを見る。態度や雰囲気から王侯貴族の関係者だとは思っていたけれど、アルフレッドの言葉でそれは確信に変わる。


「マリーは…………私達の妹だよ」


王太子アルフレッドの言葉にティファ達は驚き固まる。確かに、王侯貴族の関係者だとは思っていたが、王太子の妹……つまりは王女様とは思わず、ティファ達3人は硬直する。

  しかし、1番驚いたのは言われたマリー本人らしく、飲んでいた紅茶が気管支に入ったのか、かなりむせている。ただ、エルーシャとレオン第二王子だけがアルフレッドを非難めいたジト目で睨んでいた。


「あはは……!なんてね!冗談さ。冗談」


アルフレッドは爽やかな笑みを浮かべてそう言った。マリー思わずキッと殺意を込めてアルフレッドを睨むが、アルフレッドは涼しい顔でそれを受け流している。


「まぁ、でも妹のように思っているというのは間違いないかな。マリーはこの国の宰相である公爵の娘の1人でね。だから、幼い頃よく王城に遊びに来ては私達とよく一緒に剣術を学んだもんさ。彼女が剣術を扱えるのはそこに由来しているよ」


アルフレッドの言葉に、ティファはマリーが剣を扱えた事に得心するも、幼い頃王太子達と混じって剣術学ぶというマリーの貴族令嬢らしからぬ行動に乾いた笑みを浮かべる。


「公爵からは令嬢が剣術をなんて何度も注意されたが聞かない上に、最終的に私達を教えていた剣術の師よりも強くなった事に笑いが止まらなかったよ!」


当時の事を思い返してか、本当に楽しそうに笑うアルフレッドだが、マリーの武勇伝を聞かされたティファ達3人は乾いた笑みを浮かべるしか出来ない。


「まぁ、私が次期国王である王太子に14歳で任命されてからは、マリーを相手にする暇がなくなったんだが……そうやって私達が構わなくなった結果なのか、マリーはスライムの魅力に取り憑かれてしまったのさ」


アルフレッドは苦笑しながらそう口にする。隣でアルフレッドの側に控えて立っているレオンも、無表情ながら軽く溜息をついている。


「いつの間にやら大量のスライムと友達のような間柄になったマリーは、そのスライム達を家に持って来てしまった為にそれはもう大騒動になったのさ」


それはなんとなく理解出来る。屋敷に弱いとされるスライム種とはいえ魔物が沢山来たら、それは大騒動になるだろう。


「結果、マリーはもう公爵家ではどうする事も出来ないとされた。が、私はこれだけスライムを従えられる事や、先の剣術の事といい、マリーにはもしかしてと思い、エルーシャに頼みマリーの事を調べてもらったら……」


「驚いたよ。まだその当時は10歳なのに、彼女は冒険者に適応出来る力を有していた。おまけに、職業の「テイマー」との相性は最高値のSランクだ。これは、ティファ君達と同じだね」


「えっ!?私達もですか!!?」


「あぁ、後にティファ君達も調べたら、ティファ君は「大盾使い」が、リッカ君は「魔術師」が、アヤ君は「格闘家」が、相性Sランクである事が分かったよ。どうりで君達はその職業でかなりの成長を遂げるはずだよ」


エルーシャは苦笑を浮かべてそう答える。職業の相性ランクがSである者は滅多にいないという。本当に良くてもAぐらいで、ティファ達はその辺でも規格外だったのだ。


「まぁ、それならばと。私は提案したのさ。公爵家を出て冒険者として生きないか?と、マリーのスライム種を異常なまでに従えられる力があれば、我が国ではスライムへの対応は一つ減る訳だし、マリーは家族に思うスライムを増やし保護出来る。まさに利害の一致からマリーは冒険者になったという訳さ」


アルフレッドの言葉に、ティファは再びマリーの方を見る。マリーは自分の事を話されているのに、特に気にした様子もなく、膝の上に乗せているグリーンスライムと戯れている。そんな姿にティファは思わず苦笑を浮かべる。


「と、まぁ……そうは言っても彼女は公爵の娘で、私達にとっても妹分のようなものなので心配は尽きない。だから、色々見えない所で監視はつける事はしている。で、そんな監視からマリーがアスファルト領に行ったとの報告がきた」


どうやら、ここからがティファ達が聞きたかった事の本番らしいと、ティファはアルフレッドの言葉に耳を傾ける。


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