謎の美女はDランク冒険者者の「テイマー」

  マリーと名乗る美女について行くようにやって来た場所は、ごく普通の喫茶店だった。ちなみに、マリーが連れて来ていたスライム達は、アスファルト領の入り口の前でマリーが


「人に見つかるとマズいからいつものように上手く隠れてちょうだい。もしアレだったら情報収集もお願い出来るかしら?」


マリーの言葉に多分頷いた?スライム達は散り散りになって移動して姿を消した。で、その後は3人はマリーについて行き現在に至る。



(マリーさんって……もしかして貴族の人なのかな……?)


マリーの座り方や出された紅茶の飲み方。その全てに貴族特有の気品さがあるようにティファは感じた。紅茶なんか音を一切立てずに飲んでるので、逆に頼んだジュースを音を立てて飲んでしまう自分が恥ずかしく、ティファはあまりジュースを口につけていなかった。


「えっと……それじゃあ、私達も自己紹介をするね。私はティファ。このパーティーの一応リーダーです。そして、メンバーのリッカとアヤだよ」


ティファは自分と自分達のメンバーを紹介するが、リッカは自分がスライムにしてやられた事が悔しいのか、口を尖らせてそっぽを向いている。そんなリッカをアヤは宥めている。そんな2人に思わず乾いた笑みを浮かべる。


「……私も改めて自己紹介するわ。私は察してるとは思うけど、貴方達と同じで冒険者で、階級はDランク。職業は「テイマー」よ」


「はぁ!?テイマーですって!!?」


さっきまで口を尖らせていたリッカがマリーの言葉に驚いて立ち上がる。リッカ程の反応はしていないが、ティファもアヤも同様に驚いている。それはもちろん彼女が冒険者だからではない。


「何?どこからどう見ても「テイマー」でしょ?」


「あんたのどこが「テイマー」なのよ!?さっきかなりの攻撃魔法と剣を使ってきたじゃないの!?」


基本、「テイマー」は動物や昆虫、果ては魔物などをテイムして自分ではあまり戦わない職業である。故に、主に使用する武器はナイフなどの扱いやすい物を使用するし、魔法も攻撃魔法なんか全然使えず、支援や回復魔法ぐらいしか使えない。その回復魔法だって、回復専門職「治癒術師」に比べたらかなり劣る。


「別に変じゃないでしょ。攻撃魔法って言っても中級ぐらいのしか使えないわよ。それに、回復魔術は苦手で一個も使えないわ。まぁ、支援魔法に関してはそれなりに自信があるけど。剣術は……得意な人に教わったから出来るってだけ。どう?普通でしょ?」


「全然普通じゃないわよ!?」


先程言った通り、「テイマー」で攻撃魔術を使える事自体異例である。それに、いくら剣術を教わっているとはいえ、あそこまで扱えるなら、剣だけの勝負なら剣を扱う職だったガブリィに勝てるんじゃないかと、何度もマリーの剣を受け止めたティファは思った。


「いや、私は「テイマー」以外の何者でもないでしょ。現にあれだけのスライムちゃん達をテイムしてるのよ。まぁ、私的にはテイムしてるんじゃなく、家族にしてるつもりだけど」


「そもそもそこからおかしいのよ!?テイムって一度に2、3体が限界のはずでしょ!?」


「テイマー」のテイムは一度にテイム出来るのは2、3体だけが限度のはずだ。マリーのようにいくら低級のスライムとはいえ、あれだけ沢山のスライムをテイム出来るなんてリッカの言うようにおかしいとしか言えない。あまりに数が多くて数えなかったが、先程マリーについて来ていたスライムは100以上はいたようにティファは感じていた。


「そんなに私の職がおかしいと思うなら、王都に戻ったらエルーシャに聞いてみるといいわ。多分同じ答えが返ってくるだけよ」


マリーは淡々とそう返し優雅に紅茶を飲む。そんなマリーを見て、リッカは疲れたように溜息をつき不貞腐れた表情で椅子に座る。そんなリッカを見てティファは苦笑を浮かべる。

  マリーの職が謎なのは間違いない。魔法も剣も扱う「魔剣士」にも、動物や魔物をテイムする「テイマー」にも、2つの職どちらもマリーには当てはまる。本当に気になるならマリーの言う通りエルーシャに聞いた方が早いかもしれない。


「そんなに気になる「スライム研究家」でも構わないわよ。だいたいの人からそう呼ばれてるし、私も半分その自覚はあるし。少なくとも『迷宮』にいる以外のギルドディアにいるスライムちゃん達は全部私の家族だから色々詳しいわよ。どう?聞きたい?」


「『迷宮』以外のギルドディアのスライムをテイムって……いや、もういいわ……聞くだけ疲れそうだからさっさと本題を話し合いましょう」


もう正直ツッコミ疲れて溜息を吐くリッカは、早くしろと言わんばかりに手を振る。すごくスライムについて語りたくて目をキラキラされたマリーは、邪魔されて膨れっ面になったが、すぐにコホンと一つ咳払いをして


「そうね……それじゃあ……急に貴方達に仕掛けてきた私から事情を話しましょうか……」


マリーは自分がアスファルト領に来た理由を話し始めた。

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