大盾使いの少女のパーティーは装備品を受け取る

  そして、アヤが待ちに待ったであろう3日後、コックルからの完成報告が届き、ティファ達は急いでコックルの店に向かった。


「おぉ!凄い!?これは!?チャイナドレスですか!?」


店に入って、ティファ達が見たのは、ティファやリッカがあまり見た事のない、少し露出があるオレンジ色の服だった。ただ、アヤはその服を知っているらしく、目をキラキラさせながら自身の装備品を眺めている。


「うん。東方国では冒険者の格闘家が一般的に使う衣装って聞いてるからね。アヤちゃんが東方国出身と聞いたからこの衣装にしたよ」


チャイナドレスとは、東方国のとある町の女性がよく着ている衣装である。最初こそは、露出があまりに激しく、よい生地を使っている為本当にドレスの名を冠する衣装でもあった為、娼婦か金持ちの愛人が着る衣装と言われ、その町以外で流行る事はなかった。

  だが、ある時東方国の女性冒険者の格闘家が、ふと、このチャイナドレスの衣装を装備品の防具として使った。最初こそはあまりいい目で見られなかったが、その女性


「このスリットが出てるおかげで足技が出しやすいし!何より!ズボンやハーフパンツもよりも女性らしい衣装だ!難点は足技使ったらパンツが見える事ぐらいだけど……それは最近出来たスパッツで解消されてるしね!」


と、言った事から女性冒険者達も興味を持ち始めた。女性冒険者達は近接戦闘の者達は皆、ズボンやハーフパンツを履いている。派手に動き回る近接戦闘では、スカートなどを履くとやはり見えてしまうのが気になり、ズボンやハーフパンツを履いている。

  しかし、やはりズボンやハーフパンツといった履き物は男性が着るイメージがこの世界では強い。なので、実は女性冒険者達はズボンやハーフパンツには抵抗はあったが仕方なく履いていただけだ。けれど、この女性冒険者の発言が確かなら、色々な問題点は解決されるし、何より蔑んではいたものの、冒険者とはいえ女性はオシャレがしたい。ドレスの名を冠するチャイナドレスは着たいと思わないでもなかった。

  こうした女性冒険者の働きがあり、チャイナドレスは女性冒険者の間で流行り出し、次第に安い素材でもチャイナドレスが作れるようになってから、東方国の一般市民の何人かもチャイナドレスを着るようになり、前に言われたチャイナドレスへの悪口は無くなっていた。ただ、スパッツによってスカートも履けるようになってからは、冒険者でチャイナドレスを着るのは、格闘家の女性だけになった。



  そんなチャイナドレスの説明を、コックルがティファとリッカにしている間に、アヤが装備品の装着が終わったらしく、試着室から出てきた。


「ど……どうでしょうか……?」


「うわあぁ〜……凄い!よく似合ってるよ!」


「そうね。本当にアヤの為に作られた装備品って感じがするわ」


アヤに尋ねられた2人は、それぞれの感想を口にする。オレンジ色のチャイナドレスは、アヤのイメージにピッタリで、ちょっと露出があるが、着てみると案外そういった感じが見えない。チャイナドレス意外の装備品は、普通のグローブにヒールのないロングブーツ。それから、頭には白いハチマキが巻かれていた。


「意外ね。てっきりメリケンサックとか、ティファの着けてるレガースとか着けるものだと思ったのだけど……」


格闘家の冒険者は、手や脚を使い攻撃する為、手脚を保護する意味合いも込め、メリケンサックやレガースといった装備品を着けるのが一般的である。


「アヤちゃんの場合それを着けたら色々厄介な事になりそうだからねぇ〜」


コックルの苦笑混じりの返答にリッカは納得した。あれだけの攻撃力を持つアヤが、攻撃を補助も兼ねてるメリケンサックやレガースを着けて攻撃したら大変な事になるだろう。


「ん?あれ?」


「?どうしたの?ティファ」


「いや、アヤが着けてるハチマキ……白いんだけどさっき一瞬だけで虹色に光ったような……」


「ご明察。実は、アヤちゃんのハチマキの素材には、ティファちゃんが取ってきてくれた「ホウオウの羽根」を使っているんだよ」


コックルの言葉に、ティファとリッカは目を見開いて驚く。アヤはとんでもない高級品が自分の頭に巻かれていると知って動揺している。

「ホウオウの羽根」という希少素材で装備品を作りたいとは言っていたが、まさかハチマキにそれを使ってくるとは、ティファとリッカも予想外である。


「あぁ、ハチマキは取らなくて大丈夫だよ。それは元々はティファちゃん達が獲得した物だしね。それを返しただけに過ぎないよ」


コックルはニッコリと笑い、ハチマキを取ろうとするアヤを手で制する。ちなみに、「ホウオウの羽根」を使ったハチマキの効果は、各種ステータスを上げるだけでなく、1日に一回だけでHPが0になってもHP全回復で復活出来るという代物だった。まぁ、ティファがいる限り名前のHPが0になる事態少ないだろうが。


「それで、装備品の着心地はどうかな?」


「はい!それはもう!前の装備品なんかより数100倍素晴らしいです!頭に高級品が巻かれてるのが若干気になりますが……とても動きやすく!蹴り技も出しやすいですし!何より!脱げますよ!ほら!?」


「いや!?気持ちは分からなくないけど!脱がなくていいから!?」


アヤが着ていた装備品を脱ぎ出したので、リッカは思わずツッコミをいれる。ティファは乾いた笑みを浮かべ、ふと、コックルが前に言った事を思い出してコックルの方を振り向く。


「そう言えば、コックルさんは私達に依頼があるんですよね?」


その依頼を引き受けるのを条件で、アヤの装備品を作ってもらう話になっている。なので、アヤはそれを思い出して真剣な表情でコックルの話に耳を傾ける。



「あぁ、実はレムナント岩場にいるロックトータスの甲羅を3つ程手に入れてきて欲しいんだよ」

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