格闘家の少女は自身のスキルを確認する

  そして、ティファ達が次に訪れたのはスキル書専門ショップ「ヒルダ」だ。前々から店主であるヒルダに、Bランクになって、スキル枠が10個になり、後5個スキルを習得出来るようになったので、ティファに渡したいスキル書が山程あると言っていた。

  更に、実はアヤは前回の実力試験のような依頼でランクをEまでランクアップしていた。実力には申し分なかったし、ホウオウ討伐時に獲得したポイントがかなりあったので、アヤは遠慮していたがティファは、自分がポイントを得られずランクが上がらなかった時期があったからか、ティファがどうしても上げたいと言って、アヤのランクをEへと上げたのである。

  本当は、エルーシャの話によると、アヤのランクはAランクに上げても申し分ない上に、ホウオウのポイントを利用すればDランクまで上げられるそうなのだが


「流石にまたティファちゃんのパーティーメンバーから2段階昇格させたって話が上がったら、監査ギルドに色々言われちゃうからねぇ〜。本当に申し訳ない」


と、エルーシャが言うので、まぁ、余ったポイントはアヤの装備品購入に使おうとも思ったので、アヤの冒険者ランクをEに上げるだけで終わった。



「アヤやティファのスキル書購入もだけど、アヤが最初から会得していたスキルも見てもらうんでしょ?」


「あぁ、そう言えばそうだったね!」


アヤのスキル『不屈の拳』と『不屈の修練』は特殊進化したスキルの可能性が高い。なので、ギルドで説明された以外の効果などが分かるかもしれないと、エルーシャからアドバイスを貰っていたのである。

  ヒルダはスキル好きが高じてスキル書専門店を開いただけでなく、スキル研究家でもあり、スキルであるならば鑑定出来る、ある意味恐ろしいまでのスキルへの執念による技術を会得している。なので、ヒルダならアヤの特殊なスキルについても色々分かるかもしれない。


「まぁ、とりあえずはヒルダさんに会って……」


「私ならもうここにいるわよ♡」


「うわあぁ!!?ヒルダさん!?いつの間に!!?」


「ティファちゃん達のスキルの気配を感じて、待ちきれないから迎えに来ちゃった♡」


誰もが見惚れるような微笑みを浮かべそんな末恐ろしい事を言うヒルダ。個人のスキルの気配が分かるとかどんだけだと、ティファとリッカは引きつった笑みを浮かべる。


「それで……あなたが新しくティファちゃんのパーティーに入った子ね」


「はい!アヤ・サクライと言います!よろしくお願いします!」


「うふふ♡聞いてるわ♡何でもスキルが特殊進化したかもしれないって。さぁ!店はすぐそこだから早速行きましょう!」


「えっ!?あっ!?はいぃ!?」


ヒルダはアヤの手を取り、あの細腕に何故そんな力があるのか分からないが、アヤを引っ張って店まで無理矢理連れて行く。ティファとリッカはお互いに顔を見合わせて溜息をつき、2人に続いて店の中に入った。




「はぁ〜ん♡素晴らしいわぁ〜♡やっぱりスキルの可能性は無限大よぉ〜!!」


アヤのスキルを鑑定したらヒルダは、身体を艶かしくくねらせ悦に入っていた。


「あのぉ〜……ヒルダさん。結局アヤのスキルはどういった物なんですかね?」


「あら、ごめんなさい。まぁ、鑑定した結果、アヤちゃんが習得していたスキルは、『修練』と『修練の拳』の特殊進化版よ。ちなみに、その二つの効果は……」


   ヒルダはそう言って、『修練』と、修練の拳』のスキル書を見せる。


『修練』……修練を積めば積む程ステータスが上がる

『修練の拳』……修練を積んだ後の拳による攻撃が2倍になる


  アヤが習得していたと思えない程パッとしない効果だった。まぁ、だからこそ、アヤのスキルは特殊進化したものと言えるかもしれない。


「効果もギルドで説明したのでほぼ間違いないわね。追加で私が言える事があるとしたら、もう『不屈の修練』の効果は得られない可能性が高いって事かしら。『不屈の拳』も一部は得られないけど、一部の効果は適用されるわね」


ティファ達もそうではないかと考えてはいた。恐らく、もうアヤのステータスはどれも最高値に近い。攻撃力に至っては規格外まで上がったので、これ以上上がる事は出来ないだろう。


「スキル研究家としては残してもらいたいけど、もっと他のスキルを使いたいなら、この二つを上書きして消して新たなスキルを習得するのも可能よ」


スキルは新たなスキルを上書きして、習得していたスキルを消して新たなスキルを習得する事が可能だ。しかし、消したスキルは再びスキル書で習得しない限り習得出来ない。まして、アヤのスキルは特殊進化したスキルなので、スキル書が存在しないので、2度と覚える事は出来ない。

  だが、ティファの『挑発』や『全状態異常無効』のような、ティファにとって絶対必須なスキルと違い、アヤのスキルは使い勝手が悪いと言える。唯一、『不屈の拳』だけは状態異常になった時に役立つが、ティファがいればそうなる可能性は皆無に等しい。なので、アヤにとって不要なスキルと言えるのだが


「いえ、私はこの習得したスキルを消したくないです」


  アヤはキッパリとスキルを消したくないと告げた。


「その……これがなければ……ティファ達と出会って、ティファ達のパーティーに入れなかったと思うので……その……大事にしたいです……」


顔を真っ赤にして俯きながらそう言ったアヤに、ティファは嬉しさのあまり涙目になってアヤに抱きついた。


「うひゃあぁ!?ティ!?ティファ!?」


「うん!うん!そうだよね!私達の絆のスキルだもんね!私も大事にするよ!」


管理するのはアヤなのだが、それでも、そんな風に言ってくれるティファに、アヤはどう返していいか分からなくて、ヒルダの方を見るが、ヒルダも何故か涙を流し


「うん!そうよね!大事な思い出のスキルはとっておきたいものよね!分かるわ!その気持ち!あんな事言った私がバカだったわ!?ごめんなさい!?」


と、終いには謝られてしまい、どうすればいいか分からずアヤはリッカを見る。リッカは深く溜息をつき、2人に落ち着くように言った。


  こうして、ちょっとした騒ぎはあったが、アヤはヒルダがオススメするスキルを一つ習得。ティファはヒルダが厳選した大量のスキル書の中から、リッカやアヤ共相談して5つ何とか選ぶ事が出来た。



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